1-11 タレミシア魔術大国③
「ガルララララララララララ……!!!」
ここは王都だぞ?
王都には地中までに張り巡らされている結界魔術が全体に覆っているはずだ。
なんで突然現れた。
「いやあああああああああああああああああ!!!」
リーナが頭を抱えて何かを思い出したかのようにうずくまる。
「おい、大丈夫か」
「嫌だ! 来ないで! 来ないで!!」
リーナの実力ならケルベロスは倒せると思っている。
が、ここまで狂うほどにリーナは怯えている。昔に何かあったのか?
そんなことはどうでもいい。
「うっ……」
これ以上叫ぶとリーナの心が壊れると思い、首の根を手刀で叩き気絶させる。
「何今の音……? え、なんで魔物がここにいるの!?」
アクセサリーショップの店員が扉から出て驚いた様子でケルベロスを見る。
オレはすぐに彼女にリーナをおんぶして頼みに行く。
「……!!」
「……リーナを連れて逃げてください」
「……わかった。でも、あなたはどうするの?」
そんなもの決まっている。
「ケルベロスはオレが討伐する」
オレは店員にリーナを預けてケルベロスのもとに向かった。
「ちょ、ちょっと!!」
店員が止めようと呼ぶが気にしない。
「お前の相手はオレだ。かかってこい」
手招きで奴を煽る。
すると、奴の三つの首から同時に炎が放たれた。
高位魔術《豪炎の咆哮》。
奴は周囲の建物ごと掻き回すように高位魔術最高温度の砲撃を撒き散らした。
そして、その砲撃はオレにも飛んでくる。
「黙れ」
光の剣術“【秘剣】魔術返し”で奴の魔術を弾き返し、命中。
「ガラララララ……!!」
奴は当たった衝撃で魔術を止めた。
「すごい……」
店員がオレの戦闘を見て口に出る。
「早く行け。さっきの奴の魔術を見ただろ。死ぬぞ」
「……そ、そうだね。ノア君、どうか気を付けてね」
そう言って急いで店員がリーナを連れて走り出した。
「さてと、お前をどう退治しよう――――」
最低位魔術《炎の千槍》の大量の火の粉がオレのもとに来る。
オレの剣術を見て学んだのか単数で攻める魔術よりも複数で攻める魔術を選択したか。
最低限弾いて避けるのも良い。だが、それだと周囲の炎でオレの足場が狭まり、戦闘が制限される。
ならこうするか。
「光の剣術“【帯刀】閃光斬”」
お前が思慮した攻撃なんぞ痛くも痒くもない。
光の剣術“【帯刀】閃光斬”は網を巻き取るかのように複数に細かく切り刻む剣術。
奴の魔術の火の粉は一寸たりとも見逃すことなく切り、破壊した。
オレは奴に近づく。
それに奴は少しだけ後ずさる。
「どうした? もっと魔術あるだろ? ……!!」
オレは手刀で視界では捉えられない魔術を次々と弾いた。
っと危ねえ……。
まさかこんな練度の高い中位魔術《鷲の旋風》を使ってくるとは。
風系の魔術は基本大気中の魔力流れの影響で薄っすらと透明色が見えてくる。
言うなればガラスが飛んでくるイメージが一番近い。
だが練度の高い風系の魔術は本当に見えない。ただ当たれば痛いだけ。
こいつは炎だけじゃなく風の魔術も巧みに使いこなすのか。
と言いつつも、《鷲の旋風》を弾きながらも奴との距離はだんだん近くなる。
オレは奴に近づく。
確かに奴の風系魔術は練度が高い。だが、速射性がないから。弾くにも余裕がある。
「……!!」
ここで奴の本当の狙いに気づく。
高位魔術《隠蔽の陽光》。
オレの背後から突如現れた光線。これは不味い。
まさか二つの魔術を同時に使用する《二重魔術》を使ってくるとは……。
オレはまんまと奴の術中に嵌っていたわけだ。
……で?
「自爆しろ」
奴は自信が仕掛けた魔術を受けた。
それもそのはず。
オレは《鷲の旋風》が来るタイミングと《隠蔽の陽光》のタイミングで見計らって奴の死角になるように同時に来る奴の魔術が当たる寸前で半身になり、避けた。
それによって《鷲の旋風》と《隠蔽の陽光》がかすりもせず通ったことで奴に自身の魔術が当たった。
オレは奴に近づく。
「ガルラララララ……」
奴は自身の魔術がそのまま当たり奴は悶絶する。
奴は炎、風の他に光系魔術を使った。
魔物でここまで多彩な奴は初めてだな。
魔物は最高位魔術を使うことはあれど魔術は炎、水、風、地、光、闇の属性魔術の内、せいぜい二つの属性しか使わないと思っていた。
こいつは何か特別な魔物なのか?
ここで奴に訃報が訪れる。
オレとお前にある距離はゼロ。
お前が悶絶している間にオレは完全にオレの間合いに入った。
さあ、狩りの始まりだ。
「地の格闘術“【剛拳】貫き”」
奴の腹を思いっきり殴り、奴は宙に浮いた。
星★★★★★、レビュー、感想、ブックマークのほど、よろしくお願いします!!
1つでも多くの評価ポイントがあるだけで作者は泣いて大喜びします!!




