1-10 タレミシア魔術大国②
喫茶店を出た後、オレとリーナは王都にある商店街に行くことにした。
「リーナちゃん、今日は彼氏とデートかい?」
「そうなんですよ」
「すごくイケメンじゃない! どう? これいるかい?」
「あ、今日は遠慮しときます」
「そう? でもまた来てね。うちは大歓迎だから!」
「ありがとうございます!」
相変わらずリーナは人当たりが良いな。
商店街にはたくさんの人がリーナに声をかけてくる。
「リーナちゃん!! 今日も安いよ! うちに寄ってかない!!」
「リーナちゃん!! うちの名物、食ってくれよ!!」
「リーナちゃん!! これ絶対似合うからうちに来て」
「リーナちゃん!」
「リーナちゃん!!」
すごい人気だ。でも、リーナは次々に断りを入れていく。
「ごめんなさい。ちょっと用事があるんで……。また今度行きますね」
リーナのこの円満の笑みに誰もがささっと諦めていく。
「というか用事ってなんだよ。デートじゃねえの」
「デートだよ。でもいいじゃない? 人のプレゼント買うぐらい」
まあ、全然いいけどな。
「で、どこにい――――」
「ここだ!」
商店街の中にあるアクセサリーショップに着いた。
「ここかよ」
「何か不満?」
「いいえ。なんでも」
早速、店に入る。
「いらっしゃい。あ、リーナちゃん! 今日はどうしたの?」
「ちょっとプレゼントを買いに来ました」
「そうなんだ……。うちはいい商品いっぱい揃ってるから見てってよ」
「そうさせてもらいます」
「ところで――――」
店員の目線がこっちに向いた。
そして、店員はリーナに手で誘導させて耳元に手を覆い囁く。
リーナも店員の声を聴いた後にすぐ店員の耳元で同じようにする。
それが交互に続き、オレはいつの間にか待たされていた。
暇だったので並んである商品に目を向ける。
えっと、このネックレスの値段は幾らだ?
一、十、百、千、万、十万……。
は? 二千万ゼニスってマジで言ってんのか。
「高すぎだろ」
「それは当店の目玉商品となっておりまして、このネックレス全体が金属型の魔晶石で作られているんですよ」
そう店員がニヤニヤと頬を吊り上げながら答えてくれた。
「買えないんだけど」
「学生の方は余程じゃない限り厳しいと思いますよ。でも、彼女さんに似合うと思いますけどね」
「買えないんですって」
「冗談ですよ。それにしても、まさかリーナちゃんに彼氏ができるなんてね」
「義理だけどな」
「知ってる。……でも、あなたを連れてくるのって何かあるんじゃない?」
そうか……?
「ごゆっくりぃぃ」と囁いた店員を置いてオレは商品を見て迷ってるリーナのもとに向かう。
「何探してんだよ」
「わ。びっくりした」
「……贈り物か?」
「そう。贈りたい人がいるの。あんたはどれがいい?」
唐突だな。
「相手は誰なんだ?」
「友達」
「友達って……オレが選んでもいいのかよ」
「寧ろあんたに選んでほしい」
なんだそれ。
「ちなみに、相手は男の子と女の子の二人だよ」
「は……? 男かよ」
余計に自分で選べよ。
「大丈夫。浮気はしてないから」
「その心配はしてない」
「そ。だったらあんたのセンスで選んでよ」
選んでよって丸投げかよ。
なんでデート中に人の贈り物を選ばなきゃいけないんだよ。
と思ってるうちに一つ良いのが見つかる。
「これとかいいんじゃないか」
それは無色透明で全身がダイヤモンドのブレスレッドだ。
しかし――――
「でも、二万ゼニスは大丈夫か?」
「すみませーん。これ買いまーす」
オレの忠告を無視して即購入しやがった。
「金は大丈夫なのかよ」
「いいよ。私の財布はこれでもたくさんあるから」
「そうか」
こいつの財布事情、どうなってんだよ。
と思いつつもオレは店を出ようとした。
「ちょっとどうして出ようとするの!」
「男の分は言ったから良いだろ。店の前で待つわ」
リーナは文句をずっと言っていたけど、完全に無視してオレは店を出た。
※※※※※
雨が降ってきた。
「お待たせ」
「遅っ」
結局、三十分待っていた。
「なーに? 文句ある?」
「別にいいけど」
商店街の人たちは急いで店を畳む様子がわかる。
オレ達はとりあえずこの店で雨宿りすることにした。
「今日はどうだった?」
「何が?」
「楽しかった?」
「……まあな」
さすがに雨が降っているこの状況は気まずいな。
「店の人に言ってしばらく雨が止むまで居させてもらうか」
「……うん」
オレは店の扉を開けようとする。
すると、王都全体に聞こえるほどの爆発音が聞こえた。
悲鳴が上がる。
オレはすぐに聞こえた方向に振り返った。
三本の首に四本足で立つ犬のようで悍ましい魔物が商店街の商人の下半身まで咥えられ、商人が助けを斯う。
魔獣ケルベロス。
奴は商人の下半身を完全に食いちぎった。
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