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1-8 ダイア・ライトマン


 『星極の術魔祭』。

 それは中央のタレミア魔術学園、東の大聖魔術高専、西のファバリン魔術学園、南のサルバトール魔術学院の四つの学園が主催する世界一の高等学校生を決める大会。


 この大会は各国の有名な魔術師が注目し、ここで行われた戦いは全世界に発信され、優勝した高等学校生はもれなく国や貴族関係なしに全世界からスカウトが絶えなくなる。さらに世界最強の魔術師『五大魔術師(クインテット)』に戦いを申し込み、勝てば五大魔術師(クインテット)になれる資格『五大魔術師(クインテット)候補』になれる可能性を秘めている。


 この大会のため、多くの生徒は日々精進している。


 ※※※※※


 新星歴二九九八年五月一日――――放課後。


「それで、あんたはこの大会に出るの?」


 リーナから『星極の術魔祭』について急に来た。


「出ねえよ」

「えっ――――」


 えっ――――、と言われても。


「オレがここに来たのは称号が欲しいわけじゃないからな。出たってオレが強くなれるわけじゃないからな」

「そんなわけないでしょ」


 リーナがやたら突っかかる。


「そういうお前は出るんだよな?」

「もちろん、私は出るよ」

「応援しとくわ」

「何言ってんの? あんたも出なよ」

「なんで、オレを誘うんだよ」


 リーナは本来の目的を話す。


「さっき聞いてなかった? 『星極の術魔祭』に出るには各学年で予選が行われるの。そこで私は優勝する」

「おう、頑張れ」

「でも、あんたが居ないと優勝したってしょうがないじゃない。私は本当の意味で学年首位になりたいの」

「そうか。それは無理な話だろ」


 オレは咄嗟にリュックを持つ。


「オレが出たらオレが優勝してしまうだろ?」

「いーや、今度こそ私が勝つよ」


 どこからその自信が出るんだが。


「はああぁぁ」

「何溜息してんの」

「とにかくオレは出ないから」


 オレは彼女を振って寮に戻ることにした。


 ※※※※※


 オレは校舎少し散歩していた。

 寮に帰ってもリーナに待ち伏せされてるかもしれないからな。


 ふいに歩いていると、裏庭から誰かの悲鳴が聞こえた。


「やめてください!!」

「なにがやめてくださいだああぁぁぁ?? 俺を誰と思って口聞いてるんだ!! 一年棒!!」

「うーわ」

「だっさ」


 こりゃ、よくあるいじめってやつか。


「まあ、いいや。俺が直々に制裁を下してやる。それで許してやるよ!」

「ひっ!!」


 明らかに単なる殴りじゃないのはわかった。


「「「「……!!」」」」

「……っと、危ねえ」


 間一髪でガードして男子生徒を助けた。


「大丈夫か……?」

「はい、ありがとうございます」

「お前が何したか知らないけど後は任せろ」

「はい!!」


 男子生徒はすぐにそこから離れていった。


「それで、あいつが何したっていう……んだ……」


 オレは振り返り、そして蘇る。

 毎日飽きることなく殴られ、飯を投げつけられ、あわよくば殺されそうになったことを……。


「誰だ、お前……?」


 こいつはオレのことを知らないようだ。

 それもそう、約六年もの年月が経っているのだから。

 だが、オレはこいつのことよく知っている。


 身長もオレより十五センチメートル高く、その堂々とした立ち姿はまるで()()()公爵を思い出す。


 ダイア・ライトマン。


 オレの実の兄貴だ。


 オレは自分の名前を話す。


「ノア・ライトマン……」


 大丈夫だ。落ち着け。

 今のオレは、あの頃のオレじゃない。


「くくくっ……っあははははははははは!!」


 ダイアは盛大に高笑いする。


「お前が、魔術学園に、何の冗談だ……」

「ねえ」

「この子誰……?」


 腹が抱えていた腕をほどき、ダイアは両隣で腕を組んでいた二人、化粧の濃い女に答える。


「えっ……あああ、こいつは落ちこぼれ。一応、弟だけど魔術使えなくて追放されたどうしようもねえ奴だよ。なんか知らねえけど、魔術学園に来てっからそれが意味が分からないぐらい面白くてさ」


 ダイアはオレに問いかける。


「お前、何しに来たんだ?」

「オレはこの学園の生徒だ」

「なんだ? その恰好、コスプレじゃないってか。面白すぎるだろ。入ったとしてもどうせコネで入ったんだろ?」

「試験を受けた上で、オレは首席合格した」

「首席? ああ、首席にしてもらったのか。そういやお前の追放先の家は確か五大魔術師(クインテット)だったけな? 名前は確か、何だったっけ?」

「……フレイ・ハズラーク」

「そうそう、そんな名前だった!! お前、そいつから首席で合格して欲しいって頼んだんだろ?」

「違う。オレが入ることを決心した頃にはあいつはいなかった」


 そう言うとダイアはぴくっと反応して大声で叫んだ。


「そうか!! フレイ・ハズラークは死んでいたな!! しっかし、あの魔術師はダセえよな!! 『魔術師殺し』とかいう五大魔術師(クインテット)でも無い奴ごときに殉職すらなんて本当にダセえ!! 俺が五大魔術師(クインテット)なら死んでも死にきれねえよなあ!! 全く、お前の関わる奴は皆、弱くなるのかあ?? いいや、フレイ・ハズラークが元々よ――――」

「おい」


 オレは脳に全ての血液が上がるほどの怒りを覚えた。


「お前の脳みそはノミ以下か」

「は……? 誰に口きい――――」

「『魔術師殺し』がそれほど強いとは思わなかったのか」

「ぜーんぜん!! 思わないなあぁ??」

「だったら、こうしよう」


 オレの口から宣言する。


「『星極の術魔祭』に出てやる。大観衆の中、オレは『フレイの弟子』を名乗り、お前を完膚なきまでに叩き潰す、これでいいな」


 ダイアはにやりと笑い、答える。


「いいだろう。それでも、俺の()()は変わらない」


 「行こうぜ」と言ってあのくそ野郎は女を連れてここから離れた。


 オレのことは別にどう言われようが構わない。

 でも、フレイを、オレの師匠を馬鹿にするなら覚悟しろ。

 

 お前は必ず潰す。


 オレはダイアが離れた後、寮に戻るためそこから離れた。



 だが、オレはこの時知らなかった。

 奴が如何に強者であるということを。


 『星極の術魔祭』前回大会 優勝。

 ダイア・ライトマン。

星★★★★★、レビュー、感想、ブックマークのほど、よろしくお願いします!!


1つでも多くの評価ポイントがあるだけで作者は泣いて大喜びします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] んー、強いって言ったって、「魔術師殺し」程では無いでしょ。 たかが学生の大会でしょ?って思うけど、油断さえしなきゃ、「ダイア」には勝てるでしょ。 ズルでもしない限りは。
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