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1-5 臭い


「お、おう……」


 エミリーは六年前とは驚くぐらい印象が変わっていた。

 なんというかすっかりお姉さんになっていて、でもどこか昔みたいな子供な雰囲気がある感じ。


 六年も会っていなかったんだ。変わっていて当然だと思う。

 でも、何より驚いたのが――――


「何……? 私、なんか変?」


 でかすぎやしませんか?


 オレの身長が一七〇センチメートルで他の同学年の男よりかは少し小柄だけど、こいつはオレとだいたい同じ目線で話しかけてくるんだけど。


「いや、全然変じゃないよ。ただ、結構変わったなって思って」

「そりゃそうだよ! 六年も会ってないんだから」


 遺伝とは残酷だな。

 ライトマン家は大柄な家系だ。

 ダイアは知らないけど、ゲノア公爵は一九〇ぐらい身長がある。母親も一六五はあったと聞く。

 つまりオレは魔術だけでなく身長も遺伝を受け継がれなかったわけだ。


 エミリーが近くにあるベンチを見つけて颯爽に座る。

 ベンチを二回程、手に触れてエミリーがオレに座るように誘導する。


 時間あるし、座るか。

 オレは素直にベンチに腰を掛けた。



「でも、すごいね」

「何が……?」

「だって、ノアは首席なんだよ」

「まあ、簡単だったからな」

「私、一七三点だったよ」


 入学試験の最低点は一六〇である。


「なんかごめん」

「いいよいいよ。でも、うれしい。まさか魔術学園で再会できるなんて思って無かったもん」

「そりゃ、そうだよな」


 ライトマン家に居たころは落ちこぼれ中の落ちこぼれ、人間では無かったからな。そう思われても仕方ない。


「なんか私、悪いこと言った?」

「いいや、別に。お前はなんも悪いことなんか言ってねえよ。ただ、相変わらずお前は昔と変わらないなあって思って」

「ん……! それ、どういう意味……!」


 ありゃま、怒っちゃった。

 エミリーは頬を膨らませた。


「でも良かったよ。お前と会えて。最後は喧嘩別れみたい感じでオレ、出て行ったから」

「……うん」


 そう、オレたちはまたあの頃に戻れる。いや、戻りたい。

 オレを最後まで気にかけてくれた家族なんだ。またここからオレはやり直したい。


 そう、思っていた。


「あのさ、ノア」

「……なんだ?」

「ずっと、言おうと思ってたことなんだけど……」


 ……ん? 改まって何を言うんだ?


「なんだよ?」


 エミリーは両手で鼻をふさいでこう言った。


「臭い」


 ※※※※※


 新星歴二九九八年四月二十一日


 オレは学生寮を探すことにした。

 さすがにずっと野宿は不味いなっと思ったので、放課後に頼れる奴に案内してもらおうと思う。

 決して「臭い」と言われたからではない。


 と言っても普通は入学する前に寮を確保するのだけど、オレはそんなんにお金掛けるぐらいなら野宿しようと思ったんだが、それが裏目に出た。

 学園は基本集団行動で人が多いから身だしなみの配慮が十分にできていなかった。

 決して「臭い」と言われたわけではない。


 でも、どうしよう。

 頼れる奴がいない。

 もちろん、オレ一人で探せるっちゃ探せるんだけど、全く魔術学園の地図がわからないんだよな。


 私立タレミア魔術学園は南西にザノア帝国、南東にレミリス王国を隣国に置き、北は海が一面に広がる、魔術が常に最先端な国、タレミシア魔術大国の最南端の山、タレミア山に位置している。

 ほぼ全寮制で学生寮は大きく三つ存在し、そのほとんどが魔術学園から徒歩十分で行ける距離だが、その学生寮自体の配置は均等な距離で離れているため結構迷う。基本一つに決めた学生寮にしか行かないからだ。


 迷って探すぐらいなら人に案内してもらうほうが早い。

 とりあえず、聞いてみるか。


「アリア……!!」

「…………」


 無視された。


「ちょっと、話でも聞いてくれないか」

「…………」


 呼び止めようとしても、無視するどころか早足で逃げていく。オレも追いかけてみる。


「オレ今、学生寮を探してんだけど……!!」

「…………!!」


 やっと、アリアが振り向いてくれた。


「知らない……!!」


 そう言って涙目でアリアは走り去っていった。


「ええぇぇぇ……」


 この先もこの調子なのとても辛いんだけど。


 いや、今は気にしない気にしない。

 早く学生寮を見つけないと。


 他に頼れる奴か……。

 あとはエミリーだけど、「学生寮に入ってないから一緒に探してくれ」って言ったら嫌悪されるだろうしな……。


 あいつしかいねえな。


 オレは早速、あいつのところに向かった。

 たまたますれ違った同じクラスの奴に聞いたら、今の時間帯だと学園の図書館で勉強しているらしい。


 図書館に着いた。やっぱり広くて一時間ぐらいかかってしまった。


「まだいるかな……。……!」


 いた。


「リーナ、ちょっといいか」

「…………!!」


 リーナはオレの顔を見て冷たい目線を送った。


星★★★★★、レビュー、感想、ブックマークのほど、よろしくお願いします!!


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