1-3 捻りある戦い
リーナは大地を強く踏み込んで前に出る。
既にオレの目の前に来ていた。
これは――――
「地の格闘術“【剛拳】貫き”」
拳に溜めた一撃。オレは半身で避ける。
まさか体術も使うの……――――
「中位魔術《陣風の嘶き》」
握りしめた拳を手刀に変えて魔術の籠った攻撃がオレに襲い来る。だがオレは背中を反らしてその攻撃を避け――――
「……!!」
まるで反らすのがわかっていたかのようにオレの腹部に手刀の動きを変えた。
オレはバク転でその手刀を蹴ってリーナとの距離を取る。
「《未来眼》か……!」
確かあいつの天性魔術《魔眼》は全ての魔術を持っているって言ってたな。
《未来眼》も当然に持っている。だが、おかしいな。
オレは既に自分が持つ体質には気づいている。
オレに魔術は効かない。それは魔眼も例外なく「見えてない」はずだ。
でも、リーナは見えていた。
もしかしたら《未来眼》では無い何かなのかもな。
「そう。私はあんたの行動がすべて見えてる。それにしても驚いた。まさか、これも避けるなんてね」
「……経験の差だ」
「へえぇ。じゃあ、これはどうする?」
「……!」
最低位魔術《炎の千槍》が放たれる。
オレはそれを難なく避ける。が、頭上から中位魔術《塩湖の砲撃》が落とされた。
水しぶきが雨を連想するように降る。
中位魔術を落とされる前にオレは全力疾走でその場を離れていた。が、この状況がリーナの狙い。
リーナは雷の矢を弓で弾くような動作をして、中位魔術のダメージ範囲外に入ったオレに狙いを定めていた。
「くそっ……!!」
「雷を支配し雷神よ、その力を見越して我は要求する。人の目で捉えきれないその速さ、身体をも貫通するその威力をどうか我に与えたまえ、中位魔術《雷の一閃》」
矢は放たれた。
通常ならオレは簡単に避けられる。だが、この状況で雷の矢はヤバい。
塩水は純粋な水とは違い電気を通す。
現在、中位魔術《塩湖の砲撃》の衝撃でこの結界魔術の範囲内に塩水が飛散した。
つまり、この雷の矢はオレに来るどころか塩水が電気を帯びて結界を囲う全域に電撃が走ることになる。
それだけじゃない。
リーナは手首を上に曲げる。
すると、地面から突起物が出現する。
これは中位魔術《礫地の剣》。地面から人体を貫くように一気に上がるぞ。
ちっ……こっちに踏み込んで突進してきたと同時に魔術を仕込んでいたか。
「私の勝ち」
電撃と不意打ちが同時に重なり合い、実践場全体に轟音と衝撃が走った。
電撃は結界魔術内全体に及ぶ攻撃。そして自身もその魔術に当たる。
リーナは《雷の一閃》を放ったと同時に最低位魔術《魔力防壁》を立方体に囲んで身を守っていた。
そして、その魔術を解く。
リーナは自信たっぷりの笑みを零す。
これでリーナは正真正銘、学年最強の魔術師になった。と思うなよ。
「……!!」
残念だったな。オレは無傷だ。
「ど、いうこと」
「簡単な話さ。オレは地面を思いっきり殴った。それでお前の魔術を破壊して地面を殴った時に出た砂塵で雷撃を防いたんだよ。砂は雷を通さないからな」
「噓、でしょ……」
どうやら、これが全力だったらしい。
でも、一般の魔術師ならこの攻撃は防げなかったと思う。
リーナ・ラカゼット、お前は強い。
「オレからは攻めない。手加減できないからな。最終ラウンドだ。お前が持てる最高の魔術でかかってこい」
「……っ!!」
リーナの悔しそうな顔、オレはそれを理解しようとはしない。
理解してしまうとオレが負けるからだ。
リーナは何の前触れもなく詠唱が始まった。
「すべての光を照らす者よ、我が意志にどうかお答えください。洗練された高密度の光と呆気なく沈むその双撃によって敵をいなしてください、中位魔術《巧妙な二光線》」
オレに二つの光線が襲い来る。だが、その二つの光線が混じりあいより速度のある光線に変わった。
『決闘』のルール上「中位魔術以下の魔術のみの使用」でそれ以上の威力の魔術しか出せない。
けど、この二つの光線を一つに合わせることリーナの魔力コントロールからオレの計算上、最高位魔術に匹敵する高位魔術へと進化した。
「すげえ」
オレはリーナより実践経験があると思っている。けれど、オレが戦ってきた魔物たちはドラゴンを含め、こんなにも捻りのある戦いはしていなかった。
こういう魔術師が魔術学園にたくさん居るんだろう。勉強になる。
確信した。オレはタレミア魔術学園でもっと強くなれる。
だから、オレは最大限の敬意をこめてリーナにこの魔術を送ろう。
――――光の剣術“【秘剣】魔術返し”。
「え……?」
リーナの魔術はオレの剣術によってそのまま跳ね返されてリーナに直撃した。
「勝負あり。この『決闘』、勝者ノア・ライトマン……!!」
オレはリーナとの『決闘』に勝利した。
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