1-2 賭け
新星歴二九九八年四月十三日――――放課後。
第六実践場にて入学早々、一年生による『決闘』が行われた。
決闘する者の名は一年生首席ノア・ライトマン。同じく一年生で次席リーナ・ラカゼット。
両者の決闘はお互いに一年生のトップ同士。一年生だけではなく上級生や先生、それに中等学校の生徒までがこの『決闘』に足を運んだ。
どうやら入学した次の日に『決闘』は珍しいらしい。
「リーナ先輩頑張ってください!!」
「あんな笑顔が気持ち悪い感じの男になんかギャフンと言わしてやってください!!」
「首席は絶対にリーナ先輩です!!」
中等学校の女子たちがリーナのもとに集まってくる。
ああ、確かあいつ中等学校は首席なんだっけ?
次々と同学年の魔術師を蹴散らす姿が格好良かったのか、リーナファンができたとか。
というかリーナファンも口悪いな!
「皆、ありがとう。絶対勝ってくるよ」
「きゃああああああああああああああああ!!」
うわ。
歓声がすごい。
こんなんオレが勝ったら絶対悪役じゃねえか。
リーナの人気ぶりに圧倒されながらもオレは天使の声が聞こえた。
「ノア君。頑張って」
アリア・マグナードが応援してくれている。
「おう、絶対勝つさ」
「……うん」
アリアは照れながら小声で返事してくれた。なんてこの子はいつもこんなに可愛いんだ。
よおおおおおおおし。頑張るぞおおおおおおおおおおおおお!!
「へえ。さすが首席。良く逃げなかったわね」
「そりゃ、退学が掛かってるからな。逃げれるわけないさ。そっちこそ、逃げていいんだぞ」
「フン! 誰が逃げるもんですか! 私はここで勝って皆から首席だって認めさせるんだから! じゃないと……」
じゃないと……?
「ええ……。審判を務めます、わたくし、彼らの担任教師をしているセンリ・アーヴァインと申します。以後、お見知り置きを。早速だけど君たち、お互いの賭けるものを言いなさい」
「ノア・ライトマンの退学」
「リーナ・ラカゼットの……」
ちょっと待て。今ここで「口封じ」と言ったら不味くないか。
そんな事言ったら確実にオレに何かあると思われるぞ。勘のいい奴は絶対察するかもしれない。
ならどうする。
正直に言うのは不味い。かと言って退学は流石にやり過ぎだ。
……これだ。これしかない
仕方ない。そっちから仕掛けてきたんだから。
「リーナ・ラカゼットへの正式な交際を要求する」
「はああ!」
実践場の観客たちが騒ぎ始める。
「この決闘、まさか首席が告白して始まったのか?」
「それで『決闘』って大胆すぎるだろ!」
「それにしてもラカゼットの賭けるものは少しやりすぎじゃね?」
「別にお互いが納得してるならいいでしょ」
「リーナ先輩!!」
「絶対にボコボコにしてください!!」
リーナが少し赤らめながらオレに怒る。
「ちょっと!! あんた約束と全然違うじゃない! 今すぐにその賭け――――」
「静粛に、リーナ・ラカゼット。これは正式な『決闘』です。要求を受け入れなさい」
「……わかりました」
センリ先生から『決闘』のルールの説明を受ける。
「使う魔術は中位魔術以下の魔術。回復魔術や付与魔術の使用はしても良いです。
ただし、殺すことは禁止とし、また四肢の切断や失明、植物状態などの後遺症が残る行為も禁止とします。
以上より、各々の魔術、力、その全てを使い勝利を掴め」
互いに前に出る。
オレは思った。
相手は同年代の学生。決してオレには敵わないだろう。
オレは数々の魔物と戦って勝利してきた。実践の経験じゃあ、ただ強くなるために研鑽してきた奴に劣るわけがない。
悪いことをしたなとは思っている。でも、ここで退学する訳にはいかないんだ。
ここはフレイの意志が詰まっている。
必ず勝つ。
結界魔術が展開される。
「試合開始」
オレは完全に彼女を舐めていたと思う。
開始直後、まだ戦闘の気がまだ入り切っていないときに彼女は奇襲を仕掛ける。
無詠唱の高速魔術。
中位魔術《雷の一閃》
目では捉えきれない速さの魔術を瞬時に首を傾げて避けた。
「驚いた。まさか、本当に避けれると思わなかった」
「っぶねえ……。当たってたら死んでるぞ!」
「フン!! それぐらいあんたを退学させたいの!!」
こいつ正気か。
『決闘』で殺したら駄目なの知ってんだろ。
でも、オレと同じ世代でこの魔術ができるなんてな。
面白い。
「さあ、始めようか。第一ラウンドだ」
オレは思った。
このタレミア魔術学園にいれば絶対にオレは強くなれる。
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