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0ー36 正体


「初めまして。僕はザノア帝国魔術師団魔術攻撃部隊所属のケイロス・ロッペンと言います」


 生き残り、だと?

 皇帝は続けて言い出す。


「それで、『魔術師殺し』はどのような外見だっただろうか」

「奴は……至って普通の青年にしか見えなかったです。感知する限り魔力量も一般的でとても一流の魔術師を殺したようには見えなかったです。

 しかし、奴は我々が敵意を向けた瞬間とてつもない魔力が溢れ出ました。その魔力量は五大魔術師(クインテット)に昇るほどで……。

 それを見た後、僕は怯えてすぐ逃げて……しまいました……。自分の任を忘れるほど奴は恐ろしかった……」


 ケイロスという男の手は震えていた。


 なるほど。『魔術師殺し』はそれだけの奴なのか。

 だけど、その回答は()()()()だな。


「……だそうだ。他、分かっていることはあるか? 奴はどんな魔術を使っていたのかとか」

「……いえ。僕は奴の魔力を感じて逃げ出してきた身です。魔術は見ていません」

「そうか……」


 皇帝陛下は心底深刻そうな顔をしていた。ダンベルもそうだ。

 淀んだ雰囲気が部屋全体を覆う。

 ……は?


「あんま参考にならないな。奴が男ぐらいしかわかんねえ」

「おい! ノアくん!」

「だってそうだろ? 男か女かなんてどうでもいい。

 オレはただ『魔術師殺し』を倒すだけだ。

 それに奴が男であっても女かもしれねえだろ。

 魔術には変装するものだってあるからな」

「君なぁ、彼の気持ちを少しぐらい考えたらどうなんだ?」

「ダンベル団長! 良いんです! 彼の言うことは正しい!

 だけど! ……えっと、君の名前は?」

「……ノア・ライトマン」

「ノアくん! 奴を見た僕から忠告する! 奴には近づくな! 君の命がいくつあっても勝てない!」


 ……は?


「何言ってんだてめえ」


 怒りの沸点が光速で達した。ケイロスの胸倉を咄嗟に掴む。


「勝てるか勝てないかなんてどうでもいい! オレは『魔術師殺し』を倒す! お前の意見なんか聞いてねえ!」

「やめろ、ノア!」


 ダンベルさんは強引に胸ぐらを掴んだ手を離させた。


「……すまない。君はもう覚悟は出来ていたんだね……」

「貴殿ら、とにかく座りたまえ」


 皇帝陛下は熱くなってるオレたちを見て座らせた。


「……ケイロスよ。協力感謝する」

「いえいえ。そんな僕には勿体ないお言葉です。結局僕は皇帝陛下やダンベル団長、それにノアくんの役に立っていないのですから」

「いや、そんなことはない。俺からも感謝するぞ、ケイロス」

「……そんな、とんでもないです」

「うむ。ケイロスよ、貴殿は退席して良い」

「……御意」


 ケイロスはなにか申し訳なさそうな顔で席に立ち、扉の前に立った。

 一度、お辞儀。


「失礼します」


 扉を開けようとケイロスは取っ手を握る。


「ちょっと待てよ。お前はまだ役に立てるぜ」


 オレは彼の手を止める。


「ノアくん、いい加減に!」

「まあ、待てよ。オレに考えがあるんだよ」

「……なんですか?」


 オレはケイロスに案を提示する。


「奴の居場所の手掛かりのために、『魔術師殺し』を遭遇した場所に案内してくれないか? そこでどこに奴がいて討伐隊はどう立ち位置にいたか説明してくれ。そこに奴は残してるかもしれねえからな」

「ノアくん……! いくらなんでもそれは……!」

「わかりました。案内しましょう!」

「決まりだ」


 後日、オレたちは『魔術師殺し』が出現した場所、いや、フレイの最後の場所に赴いた。


 ※※※※※


 新星暦二九九七年五月九日


 オレたちは今、ケイロスに案内されダンベルと二人の魔術師を連れて歩いていた。


「ダンベルさん」

「……なんだ?」

「なんで着いてきたんだ?」

「おいおい! もう忘れたのか……!? 皇帝陛下に言われただろ! 『なにかあったらいけない。必ず複数で行くように』と!」

「そだっけ?」

「君なぁ……」


 溜息が聞こえた。


「それでダンベルさん」

「今度はなに?」

「十二日前、フレイの訃報でどう言ってた?」

「どう言ってたって……確か『貴族アズバング・ハズラーク及びその妻フレイ・ハズラークは今朝、王宮の王室の中央で魔術師殺し討伐隊十七名の内計()()名と共に遺体となって発見された』って言った筈だが?」

「本当に十六名か……?」

「ああ、十六名だ。そして残った一人が彼だよ」

「……そうか。わかった」


 全ての辻褄が繋がった。


 ※※※※※


「ここです」


 ここがフレイが最後に戦った場所。

 確かにここで戦った跡がある。潰れた教会の天井に最近できた穴が見えた。


「……教えてくれ。ここで何があったのかを」


 ケイロスは説明した。

 奴がどこから現れ、そしてフレイたちはどこで対峙したのか。


 だがそんなことはどうでもいい。


「……これで以上です」

「……ありがとう。じゃあ、オレから質問していいか?」


 オレは確信していた。奴が帝城に現れた時点で既に気づいていた。


「なあ、いつまで正体を隠しているんだ、ケイロス? いや、こう言った方がいいか?

 ――――『魔術師殺し』」


 ケイロスはオレたちを見てニヤりと笑う。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱりか...。ケイロスに変装していたのが、『魔術師殺し』だったんだな...。 もう一つ、戦闘前の敵前逃亡は、普通は極刑なんだよな…。 やっぱり、幻想魔法みたいに、事実を捻じ曲げる事が…
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