0ー35 違和感
「オレは『魔術師殺し』を倒しに来ただけだ!」
オレの言葉に貴族どもはまた騒がしくなる。
「『魔術師殺し』を倒す、だと? 貴様みたいなガキが?」
「こいつは馬鹿なのか?」
「五大魔術師でさえ倒せなかった敵だぞ?」
「貴様に勝てるわけが無かろう!」
「まさか五大魔術師の弟子だから勝てるとでも思っているのか?」
「それこそ無理であろう!」
「あんな五大魔術師でも無い魔術師に負ける程の弱い雑魚魔術師の弟子だぞ。分を弁えろよ、雑魚」
おいこいつら、今なんて言った?
「おい、今なんつった?」
「聞こえなかったのか、雑魚。あの雑魚魔術師の弟子が勝てるわけ無いだろって言ったんだよ!」
「……誰が雑魚だって?」
「さっきから言っているだろう。貴様の師匠フレイ・ハズラークはざ――――」
「雑魚はお前らだろうがァ――――!!」
オレの怒声が玉座の間全体に響いた。
「……貴様、罪人の分際で我々をざ――――」
「そうだ! お前らは雑魚だ!
たかが貴族ってだけ権力を振りまくってるだけの雑魚だ!
平民より魔力があるくせに! 平民に食材を作らせているくせに!
お前らはその守るべき平民に向かってともせず権力で言うこと聞かせて!
挙句お前らは何もしない!
それを雑魚と言って何が悪い!」
「貴様……! 我らに向かってよくも――――」
「それに! オレの師匠は最強だ! フレイは最強だ!
フレイはいくつもの国を破壊した大犯罪者ヒナタ・サクラザカを倒した立役者だぞ!
いくつもの犯罪組織の奇襲を未然に防いたんだぞ!
お前らはできるか? できねえよなァ!
だったら、フレイの『雑魚』発言を撤廃しろ!」
「くっ……! 貴様ァァァッ――――!」
一人の貴族がオレに殴りかかろうと前に出る。
「そこまでにせよ。今はそれが本題では無いだろ」
貴族はピタリと止まる。
「陛下……! この罪人は死罪にするべきです! 帝城に侵入だけでなく我らの暴言を吐いた! これはまさに国家転覆に等しいと存じます!」
「わかった。とにかく下がれ」
「……御意」
貴族は自分の持ち場に戻る。
オレは奴を睨みつける。
オレを侮辱するのは構わない。
でも、フレイを侮辱するのはどうしても許せなかった。
皇帝陛下は立ち上がる。そして、オレの元に少しずつ足を踏み入れた。
「陛下、何を……!」
「陛下……! 罪人に近づいてはなりません!」
「危険です! 今すぐお下がりを!」
皇帝は貴族の言うことを無視してオレの目の前に立った。
オレは再び皇帝を睨みつける。
「……貴様、先程『魔術師殺し』を倒すと言ったな?」
「……ああ、そうだ。オレが奴を倒す」
「……そうか」
「…………」
「…………」
「……ちなみに貴殿の歳はいくつだ?」
「十四だ。来週で十五になる」
「……そうか。わかった」
皇帝は再び、玉座の方に戻り、振り返る。
「皆静粛に……! 彼の判決を言い渡す!」
ここにいる全ての人が口を閉じた。
「罪人ノア・ライトマン。貴殿には『魔術師殺し』を討伐次第、その全ての謀反を無罪とする。以後、異論は認めぬ」
その判決は異例の物であった。
「陛下……! もう一度考えを改めてください! 奴はまさに国家転――――」
「異論は認めぬ、と言った筈だが?」
「くっ……!」
これ以上貴族は何も言わなくなった。
「これより、罪人の法廷を閉廷いたします」
※※※※※
あの後、オレは帝城の客室に案内された。
「ノアくん」
「……なんだよ」
「危なかったな。内心、俺はヒヤヒヤしたぞ」
「……なんで?」
「君は気づいていないのか? 君はあの時、死罪にされそうになっていたんだぞ」
「知らねえよ。オレはただ『魔術師殺し』を倒すために来ただけだ」
「あのなぁ……」
ダンベルさんは溜息をつく。
客室の扉が開く。隣に座っていたダンベルさんは急に立ち上がった。
「……なにしてんだって、あ」
扉が開いたあと、入ってきたのはザノア帝国皇帝グローリアル・ザノア・アルカナディアだった。
「あ、って君も立つんだ。相手は皇帝陛下だぞ」
「えぇぇ。オレを殺そうとしたんだろ?」
「とにかく立つんだ!」
「ダンベルよ、良い良い。座りたまえ」
「……御意」
ダンベルはお言葉に甘えて座る。
皇帝も側近に椅子を引かせて座った。贅沢なこって。
……と、もう一人皇帝の隣に誰かいる。
「貴殿も座りたまえ」
「……御意」
オレのまん前にその人は座った。
「では、本題に入ろう。説明を頼む」
「畏まりました」
どうやらオレが客室に呼ばれたのは『魔術師殺し』の情報を提供するためらしい。
今までどういった経緯でどのような形で『魔術師殺し』を捜索、討伐したか説明された。
「……以上で説明を終わります」
「そういうことだ。何か質問はあるかね?」
皇帝がオレに尋ねる。
「大体はわかった。でも肝心な情報が無いぞ。奴の次の出現場所とか、特徴とか。そこら辺はわからないのか」
「おい、目の前におられるのは皇帝陛下だぞ。最低限、敬語で話せ!」
「敬語でなくとも良い。我々は彼に依頼しているのだから」
「ですが……」
「それで、どうなんだ?」
皇帝は言う。
「出現場所はまだわからない。だが、奴の特徴ならわかる。そのために彼を連れてきた」
オレは目の前の人間を見る。
「彼は『魔術師殺し』討伐隊に参加し、唯一生き残った一人だ」
「初めまして。僕はザノア帝国魔術師団魔術攻撃部隊所属のケイロス・ロッペンと言います」
生き残り、だと?
それを聞いてオレは違和感を感じた。
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