0ー27 「 守りたい者」
※※※※※
元五大魔術師第四位、ヒナタ・サクラザカが最後にこう言った。
『フレイ・ハズラーク。君は何故そこまで強い。五大魔術師候補でも無い君が、どうして……』
『……私には守りたい人がいた。でも、今はいない。私は守れなかった。全てあんたのせいで。私の家族に手をかけたあんたは許さない。絶対に……!』
戦禍の炎を搔き消す程の激しい雨。この大犯罪者は私の家族を殺した。この時私は父の言った言葉を思い出した。
『そうか……。君の強さは後悔と自分への憎悪ということか。良いだろう。五大魔術師、ヒナタ・サクラザカは君を五大魔術師候補と認めよう。
俺を討て。そして、君が五大魔術師になるんだ』
その言葉を聞いた時、私は腹を立てた。
その称号は決して強さの象徴だけじゃない。全ての民を護りきるという称号だ。
私はこの時初めて人を殺めた。
最後の一突きこそ私の答えだった。
私が守りたい者――――それは家族だ。
※※※※※
「やはり、やはり素晴らしいぞ……! なんて素晴らしい魔術だ……! これこそ我が手に宿るにふさわしい魔術だ!」
「ふーん。なら私は、ここであんたを倒す。もう、あの時のように後悔しないために」
「面白い……! やれるものならやってみろ!」
奴が斬りかかる。未だに《獅子の怒号》は顕在だ。
でも、私には効かない。
「……!!」
私の無数にある剣が奴の剣を受け止めた。
空中に潜む剣の中の一本。生み出した魔剣は空中で移動し、私を守る。
「クッソおぉぉぉぉ……!」
奴は何度も斬りかかる。その度に私の魔剣たちが防ぐ。
「どうしたの? 私を倒すんじゃなかったの?」
「……!」
もう私を傷つけることは、できない……!
「光の剣術“【屑刀】一閃”……!」
「ぐがあああぁぁぁ……!」
奴の肩から思いきり縦の傷を入れた。すぐに治療しなければ致命傷。まだ油断はできない。
奴が《超速再生》する前に斬り捨てる……!
徐々に奴の体が修復されていく。
私は強く前に出た。
「光の剣術“【宝刀】煌めき・円陣”……!」
これは私にしかできない剣術。
奴の首に九本の魔剣が襲う。その剣は円を描くように真っ直ぐそして同じ方向から奴を狙う。
だが、奴の首は取れなかった。
「舐めるなよ、人間ふぜいが……!」
奴の魔力が爆発し、私ごと九本の魔剣が吹っ飛ばされた。
そう簡単にはいかないか。
「貴様、よくこのおれに致命傷を負わせた。貴様の不敬、万死に値する……!」
「万死に値する……? それは無理なんじゃないかな?」
「なに……?」
「だって、私があんたを倒すんだから」
「お、のれええぇぇえ……!」
互いの剣が激突する。
奴の連撃。私も連撃を繰り出す。
「くっ……!」
でも、私の他の魔剣が奴の連撃を阻む。連撃じゃあ、私に分がある。
ここで私本人が一太刀を入れる。
それに驚いた奴は一旦私との距離を広げる。
そして奴は魔術を繰り出した。
最低位魔術《炎の千槍》。
いや、この威力は高位魔術そのものだ。
私の魔剣たちがその魔術によって焼き尽くされた。相当な温度を持ってる。
ふーん。魔剣を減らしにきたんだね。
けど――――
私はさらに魔剣を増やした。
「何っ……!?」
「私の天性魔術は『持ってくる』んじゃなくて『作り出す』んだよ。どんだけ減らそうが私は無限に魔剣を生み出せる……!」
私は人差し指を指す。
「高位魔術《焦点》」
奴の魔術は一瞬で私のもとに来る。
「またあの技か……!」
「光の剣術“【秘剣】魔術返し”……!」
あの技……? 何言ってるの?
さっきより強いよ!
魔剣をも飲み込む炎は赤く暗い煉獄の中で蒼く輝きを放ち、冷酷無比に術者のもとに帰る。
「ちっく、しょぉぉおおおおお……!」
その威力は骨まで溶かし、《超速再生》では追いつけないぐらいのダメージを負う。
でも、奴は正真正銘の化け物。私はさらに追い詰める。
奴に直撃した。
そして、私は奴のところまで距離を詰める。
「光の剣術“【連刃】千連光芒・極”……!」
先に行った私の複数の魔剣が奴の《超速再生》している体をさらに切り刻む。
私はまた後悔した。
夫を亡くした。
五大魔術師になった時、大事な人を必ず守ろうと、そう誓ったはずなのに。
哀しかった。でもくよくよしていられない。
絶対に奴を。『魔術師殺し』を後世に残さない。
私は奴の首を狙う。
「はあああぁぁぁああああ……!」
だって、私にはまだ大事な人が二人いる。
絶対にノアとリンちゃんに手を出させない……!
私の剣が奴の首に届いた。硬い。剣を力一杯振り切る。
奴の首に食い込む。良し。このまま行けば……!
奴の首が徐々に切れ掛かる。
もうすぐでこの戦いは終わる。
「え……?」
この時、予期せぬ事が起こった。
私の天性魔術《剣聖》が解除された。
星★★★★★、レビュー、感想、ブックマークのほど、よろしくお願いします!!
1つでも多くの評価ポイントがあるだけで作者は泣いて大喜びします!!




