0ー26 剣聖
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『我がハズラーク家は代々騎士の家系だ。剣を持ち戦う戦士。それ故に我々が持つ天性魔術には必ず「剣」に関係してくる。そこでだ、フレイ。お前はどういう騎士になりたい?』
『騎士? 何言ってるの? 私は女の子だよ? なる気なんて無いよ』
『別になれとまでは言ってないよ。ただ、フレイが人を守るのなら誰を守りたいか、それを聞いてるんだよか』
ハズラーク家元領主の父はそう私にハズラーク家の心髄を聞かされていた。当時は守りたいとか助けたいとか予想がつかなかった。
でも――――
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「どうした? まさか剣を折られた程度で貴様はくたばるのか? ならば、貴様にもっと痛みを味あわせてやる!!」
奴が殴りかかってくる。
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『私に、剣を教えて欲しい!』
『断る』
私が十歳の時。国立タレミア魔術学園初等学校の魔術訓練の一環として魔術師同伴で行われる「魔物退治」にて突如、強力な魔物と遭遇。魔術師はすぐにその魔物に殺され、先生は足止めを請負い、私たちの班はすぐに逃げた。
私は他の魔術師に助けられたものの、他の友達全員はその魔物に食い殺された。
『どうしてよ!』
『友達を目の前で魔物に殺されて悔しいのはわかる。でもな、フレイ。今のお前はただ気が動転しているだけだ。落ち着きなさい』
『落ち着け……ってそんな、始めっから、落ち着…………――――』
私はボロボロと涙を流した。
父は何も言わず、私を見つめた。そして父はこう私に告げた。
『……落ち着いても尚、悔しいのなら俺のもとに来い。その時お前に剣術を教えてやる』
父は去っていった。
私はこの時初めて剣を手に持った。
私が守りたいものは――――
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「おい貴様。どこから剣を取り出した……?」
「あれ……? 言ってなかったっけ? これが私の天性魔術だよ」
奴はすぐにその場から離れる。腕は魔剣の刃先に喰い込まれ二枚下ろしに。
その腕はすぐに《超速再生》で元に戻った。
「これが私の天性魔術《魔剣生成》。私はこの魔術で魔剣を生み出すことができる……!」
「ほほう……。なるほど。それは面白い……! それが貴様の生まれ持った魔術というわけか。しかし何故だ……? なぜ剣を生み出せるのにも関わらず剣を壊された程度で凹むのだ?」
「……剣を壊されたのは久しぶりだったからね。動揺したんだよ」
「……そうか。ならばその魔術、我が物としようか……!」
奴が襲い掛かる。
速度は同じ。そのまま真っ直ぐにこっちへ来る。
でもね……。もうその速度は見切った……!
「光の剣術“【斬撃】三日月”……!」
斬波は奴に直撃。
「ぐあああああ……!」
直進に向かっていた勢いが止まり、真下の足場に落ちる。
これでやっつけたとは思わない。
奴には《超速再生》という魔術が存在する。
煙帯びた煉獄。そこから無傷の『魔術師殺し』が出てきた。
「まさか、《獅子の怒号》に順応するとは……。流石おれが認めた剣士だ……!」
「それはどうも。じゃあ、この戦いも終わらせよう……!」
私の魔力が揺るぎ出す。漲ってくる。
――――本気を出そう。
「天命より我が魔術を仕え奉る。
洗練された太刀筋。透き通る世界。
我が剣道は誰よりも、
深淵かつ鋭利なり。
鮮明かつ人道なり。
そして、あらゆる異能を打ち払う紛うことなき凄まじき剣。
全ての者を護りきる素晴らしき剣。
剣聖よ、これより我は貴殿の称号をここに受け継ぐ。
次代は貴殿を受け継ぐに値する資格を持っている。
ならば、その名をここで言おう。
我が名は剣聖、フレイ・ハズラーク……!」
私の身体は複数の剣に輪を描くように囲まれた。
身体能力が強化され、代わりに魔力が大量に消費されていく。
まるで神でもなったかのような姿。
「……素晴らしい」
敵である『魔術師殺し』がボソッと言った。
これはハズラーク家だけに継承される神秘の魔術。
この魔術を解放できた者は歴史上でたった数人しかいない。
これが私の天性魔術の心髄。
――――天性魔術・解放 《剣聖》。
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