0-1 魔力の無い少年
序章は学園ものではありません。
これは主人公ノア・ライトマンが魔術学園に行くことになるための前日譚となります。
魔術師の中でも特に五人の圧倒的な存在がいる。その存在を五大魔術師と呼び、彼らは複数の国家を相手にしても勝ててしまうような強さを誇っている。
それ故、五大魔術師となった貴族は必ず公爵(貴族爵位の第一位)となることができる。よって貴族の子は幼少から魔術の鍛錬に勤しんでいる。
現在、五大魔術師は四人しかいない。
※※※※※
新星暦二九九二年五月三日
「おい、ノア! さっさと俺の荷物を運べ!」
「ごめんなさい、ダイア兄様!」
「チッ……! だから、気軽に俺の名を呼ぶな! この、無能者が!」
そう言われ一つ上の兄、ダイア・ライトマンに顔を一発殴られた。
「テメーは俺の言う事を聞いてればいいんだよ!」
「……ごめんなさい」
ボクはノア。ライトマン公爵の次男だ。
代々ライトマン家は、レミリス王国の右腕としてその膨大な権力を持つ名門貴族だ。その背景には魔術師としての実力が深く関係している。
でもそんなボクがなぜ、こんな扱いを受けてるかって?
そんなのは簡単だ。
ここでお父様がボクたちに声をかけてきた。
「ダイアよ、今何してる……? 留学の準備は整ったのか……?」
「あの、お父様。それはですね……。この役立たずに運搬を任せているのですが、まだ完了しておらず……」
「…………」
お父様は無言の圧力でボクたちを見つめる。
ボクは待っていた。こんな奴隷みたいに扱われている息子を見て、ダイア兄様の注意を促すと。
だが、お父様の答えはこうだ。
「……そうか」
たったそれだけ。
その瞬間、持っていた荷物が一気に手から滑り落ちた。なんだそれ。
「なんだよ! なんでボクがこんな仕打ち受けてるのに助けようとしないんだよ! ボクだって! ボクだってお兄様のように頑張ってるのに!」
ボクは涙を流しながら叫んだ。これまでの怒りが爆発した。
すると、お父様は足を止めた。
「おい……!」
「良い。私から言うことがある」
「……わかりました」
お父様はダイア兄様の肩をとんと置き、ボクのところに向かった。そして、ボクを上から目線で言った。
「お前の言い分もわかっている。お前はよく、頑張っている。それは認めよう」
「だったら……」
お父様はきっぱりとこう言った。
「だがなノア! 魔術も開花できていないお前に同情することは無い! 我がライトマン家は代々国王の剣としてこのレミリス王国を支えてきた誇りがある!」
「でも……」
「不満があるのなら結果を出せ! 魔術を開花させろ! そうなれば少なからずお前を弁護しよう」
ボクは何も言えなかった。
そう、ボクは魔術を開花できていない。
ライトマン家は実力主義。魔術を持たぬものに存在意義などない。だから、ダイア兄様は実の弟であろうとボクに容赦なんてしない。
お父様はその後すぐその場を去った。
「お前、よくもお父様に舐めた口を……!!」
ボクはダイア兄様に何度も殴られた。
※※※※※
ボクは毎朝、ライトマン家敷地内の闘技場で特訓している。
「クソっ! クソっ! クソっ……!!」
だが、いつも魔術おろか魔力さえ出てくる気配が無い。
だったら……!
「雷帝よ、その凄まじき痺れを持って、かの者に矢を放て……。《雷の煌矢》……!!」
駄目だ。やっぱり出ない。
こんな最低位魔術さえ、詠唱を入れても出現する気配がないとは……。
「《炎の千槍》……!」
「《水の砲撃》……!」
「《風の両断》……!」
何度も試した。何年も試してきた。なのに、出ない。
魔術は詠唱すれば、間違いが無い限り必ず出現する。
何度も魔導書を読んだ。一語一句漏れが無いように読みまくった。読めない字も使用人に聞いて読めるようにした。
どうして。どうして……。どうして……!!
ボクは自分の出来の悪さに絶望していた。そんな時、ある少女がボクに呼びかけてくれた。
「ねえ、ノア?」
「……………………なに?」
呼んだのはボクの双子の妹、エミリー・ライトマンだった。ボクと同じ黒色の髪にいつもポニーテールをしている、つぶらな瞳が特徴な客観的に見て可愛い妹だ。
客観的というのは他の人が見て可愛いと言うだけでボクは可愛いと思ったことは一つも無いということである。そもそも妹に可愛いとも感じないだろ?
と、話を戻してエミリーはこう言った。
「ねぇノア? 一緒に遊ぼうよ……!」
「……!!」
ボクはその言葉に腹を立てた。
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