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0ー18 予感


 新星暦二九九七年四月十二日



「ほら、もっと力を入れて!」

「あん……!? これでも十分に力入れてるわ!」

「まだ剣の使い方が甘いって言ってんのよ!」

「くそ……。こうか……!!」

「そうそう! その調子……!」


 ここ数日、フレイの稽古がさらにキツくなった気がする。

 毎日が地獄のような特訓をする稽古だけど、その厳しさは日に日に増していっている。


「どうしたの!? かかって来なさいよ!」

「『先に攻撃を仕掛けるな』って言ったのはあんただろ! オレはじっくり出方を見るよ」

「それもそうね……。じゃあ遠慮なく私から……!」


 は……? 何考えてんだ……?


 その振る舞い――――光の剣術“【宝刀】きら……”


「――――“煌めき”……!!」

「……!!」


 フレイの木刀をかろうじて受け止めた。庭全体が剣術によって音が鳴り響き、一時的な突風が発生した。


「よく私の剣術を受け止めたね……!」

「ンニャロ……! オレじゃなかったら死んでだぞ……!」


 オレはフレイの木刀をほどき、二回木刀振るった。

 フレイは軽々と躱し、縦に振るって反撃。

 その攻撃をオレは半身で躱して刺突。


 フレイは一歩を引いた。オレとフレイ、お互いに木刀を構え直し、睨み合う。


 ――――さあ、来い。オレは幾らでも反撃できるぞ。


 フレイから先に攻撃を仕掛けた。一瞬で距離を詰める。


 やっぱり速い……! けど、いつものキレが無くなってるぞ!


 フレイがオレの首元を狙って剣を振るう。同時にオレは距離を更に詰めて首元を外させながら、頭にコツンと柄の先端に載せようとした。その瞬間――――。


「フレイ・ハズラーク様、皇帝陛下より手紙を届けに来ました!」

「ごふっ……!」


 くそ。魔術師団団員の呼び掛けのおかげで脇腹に一発入っちまった。


「油断は禁物だよ、ノア。はーい……! 今行きまーす!」


 何が「油断は禁物」だ……! さっきの組手! どう考えてもオレが勝ってただろ!


 と、イラつきながら脇腹を抱えながら立ち上がった。

 笑顔で対応するフレイ。自由奔放ながらもその微笑みは少し年を重ねたことで少し大人びていた。


 フレイが手紙を開ける。すると、さっきまでの笑顔が一瞬で冷めた顔に変貌した。何かあったのか?


 魔術師団団員が「失礼します」と言って門から離れていく。

 フレイがこっちに来た。そんな冷めた顔で来ないでくれ。


「……何かあったのか?」

「…………」


 無言のフレイ。こんな静かになったのは五年過ごしてきて初めてだ。普段が騒がしすぎるだけなんだけどね。


 フレイがオレを見る。そして満点の笑顔でこう言った。


「うぅうん! 何でもないよ」


 本当か?


 フレイが背伸びしてオレの肩に手を置く。


「今日の稽古は終わり……!」

「は? まだ昼にもなってないぞ」

「さっき仕事が入ったんだ……! 早く行く準備しないと……!」


 そう言ってフレイは屋敷に戻っていった。


 なんだ……?



 ※※※※※



 昼からフレイは大荷物を背負って玄関を出ようとしていた。


「オレが代わりに仕事行こうか?」


 オレに黙って出ていくので声を掛けてみた。するとフレイはこう返した。


「良いよ。だって私の仕事だもん……! ちゃんとやらなきゃね! ……まさかノア、私がサボるとでも思ってるの?」

「うん」


 オレが少し剣術できるようになってから全部仕事ふってきたじゃないか。


「ええええええ――――!! 嘘……。私、そんなふうに見られてたの……」


 うん。


「まあいいよ……! こう見えて私は仕事サボった事無いから! 安心して……!」


 生まれて初めてこんな信用の無い「安心して……!」を聞いたわ。

 あんたどんだけ仕事サボってきたか数えてねえだろ。


 フレイが玄関の扉を開けた。

 駄目だ。やっぱり信用できねえ。


「……やっぱオレが仕事行こうか?」

「大丈夫だって! そんな心配しなくても良いから……!!」

「でも……」

「大丈夫だから」

「……!!!」


 フレイの顔が突然真剣になった。こんなフレイ、初めてだ。


 オレは言葉を返せなかった。


「じゃあお留守番、よろしくね!」

「……おう。いってらっしゃい」

「行ってきます!」

「フレイ様、どうかお気をつけて」

「リンちゃんもノアのこと、よろしくね!」


 そう言ってフレイは屋敷から出ていった。


 今日はアズバングさんは仕事で帝都に行っている。実質、この屋敷にいるのは使用人のリンさんとオレだけだ。


 ――――どこか胸騒ぎがする。


 まるでフレイがもうここに帰って来ないような、そんな違和感がオレに押し寄せた。


 ――――帰ってくるよな。


 そう信じてオレは自分の部屋に戻った。



 その後、フレイが帰ってくることは無かった。

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