0ー15 帝国国立図書館①
ザノア帝国国立図書館。
帝都にあるこの図書館は色々な魔術が載っている魔導書や地理や歴史などのそれぞれの専門分野に特化した専門書、文学、伝記など世界各地から集められた著書を集めている。
オレはここで時々魔術の勉強をしている。
魔術を使うために勉強するためでは無い。勉強することで、もし魔術を使われても、どう対処すればいいのかわかるからだ。
あとオレは魔術師になるからな。
え? 家で勉強すればいいじゃないかって?
『あ、ノアが勉強してるぅ。真面目だねえぇぇ。偉い偉い……!』
そう言って温かい目で見るフレイの顔を想像してみろ。
できるか……!!
と、気を取り直して魔術についてだ。
魔術には《生点》と《死点》の二つが挙げられる。
《生点》は誰もが持っている魔術の総称で、魔力がある限り必ず発動できる。つまり、これが『基本魔術』。「最低位」魔術から「高位」魔術までが基本魔術。
《死点》は自分の絶対にできない何かがあることで、その人特有の魔術が体現できることを指す。これは『天性魔術』に多く見られる。
そしてこの《生点》と《死点》を結び付けさせることによって初めて体現できる魔術、これが「最高位」魔術。以前ドラゴンが使った《超速再生》も最高位魔術で、これは五大魔術師と少しの最上位魔術師しか使えない希少な魔術。
ま、そんなことをオレは勉強している。全ては魔術師になる為だ。
と、ここで一人の青年がオレに声を掛けてきた。
「席、前に座っていい?」
「……どうぞ」
その青年は、どう見ても育ちの良さそうな服装だった。髪は白く、全身コートでオレの前を座った。
「ねえ?」
「……何?」
「君はいつもここで勉強をしているの?」
「……たまにな」
「……そ」
なんだこいつ。初対面のオレに馴れ馴れしくないか。
「お前は、どうなんだよ?」
「あ、僕? 僕は今日この帝国に着いたばかりだよ」
「今日?」
「うん。僕、フランドル・タリア連邦から来たんだよ」
フランドル・タリア連邦か……。確かアズガバーナ公国よりもさらに西にある、西方の大陸全てを領土とする国だよな。
「どうしてそんな遥々遠くからザノアまで来たんだ?」
「来年の春に私立タレミア魔術学園へ入学するためだよ」
「来年? お前、中等学校には行かなかったのか?」
もし来年の春に入学するのならオレとは同学年ってことになる。だったら中等学校から、ましてや初等学校から行った方が良くないか?
すると青年はこう答えた。
「あぁ。行かなかったよ。僕の父がね、『学校に行くぐらいならせめて高等学校から行け』って言われてね。君こそ多分僕と同い年だと思うけど、どうして中等学校に行ってないの? もし中等学校に行ってたらこんな平日に図書館には居ないよね?」
「オレは魔術師になるからな。わざわざ中等学校になんて行ってられない」
「へぇー。じゃあ君も僕と同じで高等学校から行くんだ。君も、親に言われて行かない感じ?」
親、だと……。
母親は六歳の時に死んだ。父親は、オレに魔法の才が無いだけで追放した奴だぞ。それなのにお前はなんて言った? 「親に言われて行かない感じ?」だと……!
違う! オレは行かなかったんじゃない! 行かせて貰えなかったんだ! 魔術師の家系で生まれてきたのにも関わらず魔術が使えないだけで普通の初等学校にも行かせて貰えなかったんだ……!!
……そんなこと言ってもしょうがないよな。初対面にそんなことを当たっても何も変わらないし、それに中等学校に行かなかったのはオレの判断でもあるからな。そこはそこの青年と変わらない。
だから、ここはせめてオブラートに包もう。
「……オレに親なんて居ない」
「……そっか。……なんか、ごめん」
別に謝らなくていいさ。そうやって無理に引かれる方が困る。
オレたちは黙々と勉強をしていた。この気まずい中、誰もいない静かな図書館で。
落ち着かないな……。普段、たった一人で勉強しているオレにとっちゃあ人が居るだけで気が紛れる。
すると、青年がある噂を切り出した。
「ねえ知ってる?」
「……なんだよ、急に」
「『魔術師殺し』の噂さ」
魔術師殺し? なんだそれ?
誰にも関わらず毎日鍛錬しているオレに初めて聞く噂だ。
「知らねえな」
「えぇぇ! 今時珍しいね、君。今では有名になってるよ」
「そうなんだ……」
長々とその噂話を話し始めた。
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