0ー13 ドラゴン討伐⑤
魔術師という職業は決して魔術だけを鍛錬している訳では無い。
それは時に魔力切れで使えなくなったり、また自分の間合いを突破され魔術を使う暇を失う場合だってある。
その時の為に一流の魔術師は魔術以外に護身術や体術を身につける。
ただ戦闘不能にすればいい。
トドメを刺すのは魔力が回復したその後でも十分だ。
オレが目指すのは一流の魔術師。だからオレは体術を身につけた。
体術といえどオレは剣を失ってしまえばオレの剣術は使用できなくなってしまう。
――――体術で奴を仕留める……!
走る。奴が回復する前にオレの拳でぶっ飛ばす。はずが……。
奴は自身の翼を広げ宙を舞う。最高位魔術《超速再生》で治してたか……!
「待て、コラ……!」
奴が空を飛ぶ。そのまま逃げようと奴はこの場を去ろうとした。
ヤバい。このままにしておくと村どころか国全体が被害を被る――――……なーんてな……!!
オレは奴の小さな尻尾に掴んでいた。これでお前を倒せる。
奴はオレが尻尾に掴んでいるのを感じて全力でオレを振り落とそうとしている。
ドラゴンよ。そんなことをしても無駄だ。
「――――オレは、魔術師ノア・ライトマンだ……!!」
尻尾を上に振る。そのタイミングでオレは手を離した。
限界で手を離したわけじゃない。わざと手を離したのだ。
上に振ってくれたおかげで奴の背中にピンポイントで殴れる……!!
「よいしょぉぉぉおおお……!」
オレの拳が奴の背中にクリーンヒット。奴は地面に直撃した。
硬ぇえええ……!!
でもこれで、奴は再びオレの闘技場に入った。
オレの猛攻は終わらない。
奴が地面に激突した際、一瞬空中に浮く。
そこにオレは一発蹴りを入れた。
奴が森中の木々を掻き分け、空中を飛ばされる。そこにオレの蹴りがもう一発入る。
「ガララララララララ……!!」
奴が崖底の壁にぶつかり、宙に浮く。ここでオレは奴の体全身に連続で打撃を入れる。入れ続ける。
そして、最後にオレは奴に地面をくい込ませた。
「ふぅ……」
これで奴も動けなくなっただろう。
オレは手刀で奴を切り刻もうとした……その瞬間、オレは気づいた。
もう、傷が治ってる……。まさか……!
奴は自分の背中に魔術陣を展開。そしてその魔術陣から溶岩のような泡がプカプカと浮いている。
「くそ……!」
高位魔術《大噴火》。
一定の方向に炎を集中させ放出させるシンプルかつ高火力の魔術。摂氏三千度を超えるとも言われてるこの炎は触れるだけで溶けてしまうほどだ。
オレは間一髪でこの魔術を避けることに成功。
まだそんな隠し玉を持っていたか……。
だが、この魔術を見てオレは安心する。
奴が持つ最高位魔術が《超速再生》だけだということだ。もし他の、もっといえば甚大な被害をもたらす最高位魔術を持っていれば、オレ一人じゃどうすることもできなかったと思う。
「じゃあ、決着をつけようか」
オレは体術を止めた。
《超速再生》は傷を治すことはできてもダメージは残っているはずだ。もっと言えば魔力なんてその魔術でほぼ残ってないだろう。
オレは両手を手刀の形にした。
奴はオレの方に向き、最後の力を振り絞ってオレに立ち向かう。
奴がオレに向けて突進する。
ドラゴンは戦闘を好む最上位の魔物。ここで、こんなところで引くほど臆病な魔物ではない。
そう、お前の敗因は機動力とスピードを重視して体を縮めたこと、そして――――
「光の剣術“【帯刀】閃光斬”……!!」
「グラララララララララララララララララララララ……!!」
オレは奴を再生できないほどに八つ裂きにした。
そして、――――オレを相手にしてしまったことだ。
奴は体を完全に無くし、そして傷が治ることも無かった。
「ふぅ……」
オレは勝利した。
いつもとは違って今回はかなりしんどかった。最高位魔術なんて卑怯すぎるだろ。
寝転び考える。
オレは、強くなった……。これで、ケノア公爵も……。ダイア兄様も……。あの時の仕返しが……できる……はずだ……。
そんな思ってもないことを考えてオレはこの森の中で眠りについた。
※※※※※
隣国 アスガバーナ公国 深夜
「おい、貴様」
「なんだ雑魚、誰に口を聞いている……?」
「私を誰だと思っている……。私はこの国最強の魔術師だぞ……!!」
「そんなの知るか。そう言うならなぜお前は俺に首を掴まれてるんだ……?」
「ふん……。そんなこと私が油断していただけの事。貴様なんぞ私の相手ではない……!」
「そうか……。なら今すぐ俺の腕を振りほどいてみろ……! できたらお前を『雑魚』から『三流』にしてやろう」
「……!!」
「そうか。無理だったか……。ならここで死ね……!!」
翌朝、アズガバーナ公国最上位魔術師テミール・ノノア公爵が遺体となって発見された。
この噂は帝国にも伝わり、やがてこの噂の犯人は『魔術師殺し』ではないかという伝承が定着していった。
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