1-85 終戦
「ありがとな、《天空の聖剣》」
そう言うと、剣はすぐにオレの手元から消えた。
グレイバル・サタンの討伐により増え続けていた魔界生物兵器アヴァロンはすべて消滅し、そこに媒介となった人間も無事、救出された。
タレミシア魔術師団の連中はまだ戦闘の意志があったようだが、それをゼルベルンがすべて対処し何万といる魔術師を確保したそうだ。
やっぱ学園長は化け物だな。
オレはすぐにリーナのもとに行った。
リーナは泣き崩れてはいたが、どうやらちゃんと見送れたみたいだ。
「よ、リ――――いや、アメリア」
オレはそう呼ぶと、すぐにオレの方に向いた。
そして恐る恐るオレのもとに近づいて、オレには体を預けた。
「……なんで、来たの?」
「そりゃ、助けにだろ」
「あんた、馬鹿じゃないの。こんなボロボロになって」
「そんなボロボロの奴にもたれかかるお前はどうなんだよ」
「それもそうね」
アメリアは一旦距離を取る。
「……って、あんた至る所血が出てるじゃない!」
「軽傷だろ。ここまで来れたんだから」
それにしても全く、なんて顔してんだよ。
「ほら、せっかくの美人が台無しだろ。もっと口角上げろよ」
「はぁ……!? 誰が美人よ……!!」
と言いつつも、オレたちはお互い笑い合う。
ここで思わぬ客人が来た。
「そうそう、この戦いが終わった後お前に合わせたい人いたんだ。ほら、あの人らだよ」
「……??」
魔術師に囲まれながらもオレたちのところに来た途端、とある夫婦がオレたちの目の前に現れる。
アメリアは思わず彼らのもとに走り出した。
「パパ……!! ママ……!!」
彼らはかつてこの国で統治し、守ってきた者達。
タレミア王国国王ジーク・ランドロード・タレミア。
そしてもう一人は王妃のリリィ・ランドロード・タレミアだった。
アメリアに抱き着いた。
「でも、なんで……死んだはずじゃ……!!」
「おいおい、アメリア。それは失礼だろ。フレイがそんなへますると思うか?」
それを聞いて、アメリアは涙目になる。
「じゃあ、本当に……」
「そうだよ、アメリア」
「大きくなったね、本当に」
それを彼らの声を聴いた瞬間、アメリアは思わず大泣きをした。
それはかつて幼子のように。時間を取り戻すかのように。
そしてそんなアメリアを見た王妃は一筋の涙を流し、国王は彼らを包むように抱いた。
「……そうだ。ノア君からこれを預かっていたんだった」
「え……?」
すると、国王からアメリアに一枚のタオルが渡された。
それは端に蝶々の刺繡がついたタオル。それはアメリアにも見覚えがあった。
「これって……」
「それはオレが深く落ち込んでるときに貰ったやつだ。……お前のおかげでオレは立ち直れたんだ。だからこれでオレたちは貸し借りは無し、な」
すると、オレの方に向いてタオルを抱き締め、涙を人差し指で拭い、リーナは笑みを浮かべながら言った。
「もう、返しすぎ」
※※※※※
新星歴二九九八年六月七日――――終戦直後。
元タレミア国王ジーク・ランドロード・タレミアとその王妃リリィ・ランドロード・タレミアはザノア帝国の魔術師に先導され、戦場の地に足を踏み入れる。
教会の前を通過した時、ある国民が国王の前に現れる。
「国王陛下……ご無事だったんですね……」
「……」
ジークは何も言えなかった。
何故なら我が故郷を地に染めたのはグレイバルの企みに気づかず阻止できなかったから。
民衆が続々と教会から出て、国王の顔を見に来る。
距離を保ちながら群がる国民。
彼らは一体、何を思い元国王の前に現れたのか。
「……陛下。下々の声をどうかお聞きください」
「……言ってください」
ここは王として振る舞うべきなのだろうか。けれど、彼らの王であったのは十年前。
敬語で彼らの話を聞くことにした。
「どうかもう一度、国王として我らを導いてください」
「……!!」
ジークはその言葉に驚きを隠せなかった。
かつて国を追われた身。なぜ今になって自分を頼るのか。
「……それはできません。私は既にこの国を救えなかったのです。私に王を名乗る資格はありません」
「いえ、それは違います。俺たちはグレイバルを英雄とし統治を委ねました。けれど、奴は俺たちのことを何も考えず逆に俺たちを利用しました。でも、あなたは違う! あなたは常に我々タレミアの民を考え先導してくれました。だから、もう一度、タレミアの玉座に座ってください」
すると、集まった国民は一斉に声援を贈る。
「そうだ!!」
「陛下こそ、私たちの王!」
「もう俺たちは騙されない……!!」
ジークはそんな声を聞いても尚、不安が残る。
もし自分がまたこのような事が起きた時、阻止できるのか。
やはり自分に王を名乗る資格はあるのか。
「そうだ。君が国王になれ、ジーク」
ここで世界最強の魔術師が現れる。
五大魔術師第二位 ゼルベルン・アルファ。
「わたしは君たち王族に助けられたんだ。それ以来わたしはこの国を親愛している。その為にも君が再び王になる必要があるんだ、ジーク」
「それは六代前の話です。我々先祖と私は違う。私に――――」
「ジーク」
ここでゼルベルンは宣言する。
「この国は必ず私が守る。守り抜いてみせる。だから、君はここにいるいや、全国土のタレミア国民を先導するんだ」
「ですが――――」
「大丈夫。君はわたしの自慢の教え子だ。さあ、ここで宣言したまえ」
ジークはゼルベルンの背中を押さえ、前を向く。
そこに居るのはジークに期待する国民たち。
覚悟を決めた。
王都中に「モニター」が放送され、ジークは宣言する。
「五十代目タレミア国王ジーク・ランドロード・タレミアがここにタレミア王国復権を宣言する」
新星歴二九九八年六月七日 午後零時四十五分
タレミア王国 復権。
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