1-84 タレミア奪還決戦⑩
※※※※※
「ねえ、ノア。聞いて」
「……なんだよ」
「私、本当は君以外にも弟子を取ろうとしてたの」
「……?」
「その子は君と同じくらいなんだけど、ある事件に会って一人になっちゃったんだよ」
「……?? それ今言うことか?」
「最後まで聞いて」
フレイがオレの方に向き、瞳が合う。
「もちろん、今は一人じゃないよ。ある人がその子を引き取ってくれたから。でも、本当は早くその事件に気づいてたらあんなことにはならなかったんだよ……。だから、もしその子に会ったら絶対に仲良くして欲しい」
「……名前はなんて言うんだよ」
「そうだね。その子の名前はアメリア・ランドロード・タレミア。今はリーナ・ラカゼットって偽名を使ってる」
「偽名?」
「そう。その子は訳ありなんだよね」
そんなこと言われてもな……。
「オレ、そいつのことなんて知らないし、そんな、仲良くといわれてもな……」
「ねぇ、ノア」
ここでフレイが話を切り替える。
「もし、私が居なくなった時、私の代わりに君が彼女を助けてね」
フレイが居なくなるなんて到底思えないんだけどな。
「……わかった」
「約束だよ」
「……うん」
※※※※※
フレイとの約束、今果たすよ。
「生点と死点が締結する。
孤高の口笛。高鳴る一心の雄叫び――――」
奴が何か吠えている。
でもオレには関係ない。
「世界を統べる大地はこの一刀に震え
世界を統べる大海もまたこの一刀に震える――――」
奴が最後の漆黒の魔術を放つ。
予備動作無しで打つとはな。
その魔術はオレではなく、リーナの方へ。
最後の力でリーナを仕留めに行ったか。
「画して我、ノア・ライトマンはこの一刀に全てを集約する。
怒り、悲しみ、絶望、虚無、あらゆる負の感情を断罪する――――」
でもそれは無理な話だ。
奴の魔術は曲がり、その魔術はとある人物に向かった。
「希望よ。
自由よ――――」
奴が作った魔物を打倒した五大魔術師第二位ゼルベルン・アルファによって奴の魔術がゼルベルンのあたる直前で破壊された。
「行け、ノア・ライトマン。君がこの国の英雄になれ」
奴はオレの正面を見る。
「この一刀にて全てを解決する。
さあ、我が一刀で全てを照らせ――――」
なあ、リーナ。いや、アメリア・ランドロード・タレミア。
十年間、よく頑張った。
だから、オレがお前の苦しみを終わらせてやる。
味わえ、グレイバル・サタン。
その絶望の顔と共にあの世で詫びろ。
そして、オレはタレミア王国を奪還する。
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお……!!」
「光の剣術“【絶剣】永劫の十字架”」
振り下ろされた剣が奴を直撃。
奴は体の核ごと破壊され、そして光の十字架が王都中どこからでも見えるぐらい大きく照らした。
その光は新たなる兆し。
タレミアに住まう全ての人々へ贈る。
タレミア復国団の悲願が叶った瞬間。
これよりタレミアは復活を遂げる。
そして、光はやがて消えてなくなった。
『ノア、ありがとう……!!』
フレイにそう言われた気がした。
当たり前だ。オレはお前の意志を受け継いたんだから。
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『姫様』
『なに?』
これはアミ―と二人で話したとある記憶。
『もし俺が死んだらどうします?』
『……アミ―は絶対死なないもん』
アミ―は笑って私の頭を撫でる。
『そうですね。でも、俺もいずれそういう日が来ます。少なくとも俺の方が早く死ぬでしょうね。その時、俺は姫様に笑顔で送って欲しいのです』
『アミ―は死なない……!!』
『……姫様には幸せになって欲しいのです。好きな人ができて、その人との子どもを授かって幸せな家庭を築いてほしい……と言ってもまだわからないですよね』
当時の私はその意味がわからなかった。
『とにかく、俺など忘れて幸せになってください。俺が願うのはそれだけです』
でも、今ならわかる。
私はあの光の十字架を見た時、直感でグレイバルを倒したことがわかった。
手錠が取れ、私は自由になる。
涙が溢れ出す。
「ありがとう……」
私は精一杯の感謝を込めて、天を見上げた。
※※※※※
新星暦二九九八年六月七日 午後十二時三十分頃
ザノア帝国の魔術師ノア・ライトマンにより、魔族グレイバル・サタンの討伐に成功。
この戦いを後に『タレミア王国の戦い』として歴史に名を遺した。
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