1ー83 タレミア奪還決戦⑨
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何もできない。
こんな、手錠に繋がれ魔力も吸収され、私は無力だ。
――――本当にそう思うの?
仕方ないじゃない。
そのせいでアミ―を死なせたんだから。
――――本心?
だって!! 私はもう、パパもママも、アミ―も居なくなった……!!
私のせいで居なくなったの……!!
だから――――
――――『悲劇のヒロイン』になるつもり?
う――――
――――じゃあ、なんで私立タレミア魔術学園に入ったの?
それは……私が魔術師になりたいからで……。
――――違うでしょ。
――――あなたは誰も失わないために入ったんでしょ。
だけど――――!!
『はっきり言おう、今の私。あなたは強い』
『何言ってるの。本当に強かったら、こんなことになんて――――!』
『そう。これは私のせいなんだよ。過去の私のね』
『え……』
『あなたが今ここに居るのは私が今、あなたを縛っているから。ケルベロスを見た時、アヴァロンを見た時、あなたは狂気し、泣き崩れた。幾ら強くなってもあなたが弱いままだと思うのはそれなんだ』
『でも、過去は変えられない。あなたがここに居るのだって過去があるからなんだよ。それを捨てるなんて……死んでいった人に顔向けなんてできない』
『顔向けなんてしなくていい』
『そんなの、できないよ――――!!』
『だったら、また犠牲者を出すの!! 過去なんていくら変えようとしても変えられないんだよ!! 死んだ人はもう生き返らない!! でもあんたは生きてる!! だったら今、この瞬間変えられるでしょ!!』
それでも、今は……。
『それにあなたのために死んだ人もきっとあなたに生きててほしいと思ってる。後はあなたが答えを出すだけ。こんな魔力を吸収する手錠なんか関係ない。今の私、あなたはどうしたいの?』
私は何も身動きが取れない状況の中、私にできること。
それは――――。
――――知っている。
私はそれを何度も見てきた。
ノアが何度も私に放ってきた。
『……私は、この国を守りたい!! パパとママ、それにこの国を守ってきた祖先達がそうしてきたように……!!』
私は覚悟を決めた。
『――――行きなさい。過去の私を捨てて、あなたが望む未来へ』
過去の、幼かった自分は消えていった。
もう迷わない。
私はアメリア・ランドロード・タレミア。
タレミア王国第一王女。
グレイバル・サタン。
あんたに告ぐ。
『返せ――――!! ここは私の国だ――――!!
それを扱える生物はこの世に存在しない。
だが、それでも私は何度もお手本を見てきた。
「動くな」
『外界理論』による《制動眼》。
私はもう誰も失わない。
※※※※※
「貴様はここで死ねぇ……!!」
この時、奴の動きが止まった。
これは《制動眼》か。
「最高だよ、リーナ……。やっぱお前はオレの最高のライバルだ……!!」
奴は話す。
「お前、これでいいのか!! これでは貴様の実力で打倒したなんて言えないぞ!!」
《制動眼》の中でも話せるなんて大した奴だよ、グレイバル・サタン。
「……誰が、お前に本気を出したって?」
「なに……?」
「オレは最初からこれを待ってたんだ。リーナが自分の縛りごと克服するためにわざとな」
「……!! き、さま……!! 私を愚弄していたというのか……!!」
「……儀式魔術は流石に想定外だったけど、オレはその前でも既にお前を仕留められたんだ。でも、それじゃあリーナが将来、このような惨事になった時それが足枷になる。でも、リーナはその殻を破ったんだ」
オレは奴に近づいて、奴との間合いをほぼ真正面まで迫った。
「最終ラウンドだ、グレイバル・サタン。お前はここで死ぬ」
「貴様、何をっ……!!」
そして内戦は終焉を迎える。
「生点と死点が締結する。――――」
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