1ー82 タレミア奪還決戦⑧
くそっ……!!
まさか儀式魔術が来るなんてな……!!
これは想定外だ。
奴はこれまで大量の魔力を使ってきた。最高位魔術《超速再生》の大量使用。天性魔術まで使ったんだ。
儀式魔術は最高位魔術や天性魔術・解放と比べ物にならない程の魔力を使う。
故に百を超える魔術師と併せて初めて使える、それが儀式魔術だと言うのに奴は単体で使ってきた。
奴はどこまで魔力を持ってるんだ……!!
「消えろぉぉおおおおお……!!」
一点に集められた光が奴の指先に集まり、そして放たれた。
不味い。
この魔力に学園長も気づくはずだ。学園長とならなんとかなるかもしれない。
でも、五大魔術師第二位のゼルベルンは奴が作り出した魔物と対峙中。
やるしかない……!!
「光の剣術“【秘剣】魔術返し”――――!!」
オレは奴の滅光の方に跳び、《天空の聖剣》で奴の魔術を受け止める。
「うぅぅぉぉぉおおおおおおおおお……!!」
重い。強すぎる。やばい。
受け止めれてるだけでも奇跡だ。
複数人の魔力で放つ魔術。
それを単体という時点で奴の儀式魔術《嗜虐の滅光》の威力は下がると思っていたが、そうもいかない。
これが儀式魔術。
初めて受けたが、これ程とは……!!
くそっ。もう無理だ……。
けれど、ここでオレが受けきれず光が王都の土を侵食したらリーナの愛した国自体が無くなる。
ここにいる人間全てが死ぬ。
それは駄目だ。
いくらリーナを助けても意味が無い。
ここは何としても奴の魔術を受け切る……!!
オレは世界最強の魔術師の意志を受け継いだ魔術師ノア・ライトマンだ……!!
ここで奴はさらに威力を上げる。
こいつ。
どんだけ魔力持ってるんだ……!!
やがて、オレの足は地上に着く。
地面に踏み込める分は耐えられる。
が、それ以上に奴の魔術が追い討ちをかける。
ちくしょう。
ここまでか。
でも――――!!
オレの足が地面に食い込み始め、腰まで埋まる。
あと一メートル。
これがこの国が存命できる距離。
「死ねえええええええええええ――――!!」
「はぁぁぁぁぁぁああああああ――――!!」
奴はさらに威力を上げてきた。
それでもオレは戦う。
オレは一度たりとも諦めたりはしない……!!
だが、ここで悲報。
オレの脇腹に奴の魔剣が刺さる。
ここに来て二重詠唱を使うか……!!
そしてオレは奴の魔術に打ち負けた。
くっそ。
ごめん、リーナ。
アリア。エミリー。ルーク。
そして、フレイ、アズバングさん。
オレはどうやらここま――――
『大丈夫。君はよく頑張った』
隣にいたフレイが居た。
これが走馬灯って奴か。
『何言ってんの? 戦いはここからだよ』
何言ってんだよ。オレは負け――――
『だから大丈夫だって! ほら見て。彼がグレイバルの横に居るでしょ』
誰だ、あいつ。
『彼は最後に望みを賭けた。そしてそれが私の作った魔剣に届いて彼は賭けに勝利した』
見る限り長身の男。
そして長身の男はグレイバルの首を完全に斬った。
『天性魔術・解放《未来の一閃》。良かったね、アミール……!!』
「がはっ……!! ちくしょう……!! 許さんぞ、アミール・タルタロス……!!」
奴の魔術は止まり、オレは一息をつく。
グレイバルの胴体は地上に落ちるが、すぐに再生し立ち上がる。
「だが、良かったな! 屍に助けもらってよ……!! これで私の切り札は無くなったんだ……!! せいぜい楽しもうじゃないか、ノア・ライトマン!!」
オレは埋もれた下半身から飛び出し、奴を睨む。
「……なるほど。やはりそうか……!! 貴様はどうやら私に打倒する手段が無いんだな……!! あの世界を断つような斬撃でも私を倒せないんだ。だから貴様はオレを睨みつけることしかできない……!!」
何言ってるんだ、こいつ。
「この勝負、私が貰った。貴様はここで死ねぇ……!!」
オレは待ってるんだ。
努力家で誰にでも人気があって、だけどオレには対抗心を持ってる、オレの最高のライバルの叫びを……!!
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