1ー80 タレミア奪還決戦⑥
「ガハッ……!!」
奴は吐血する。
完璧に決まった最大出力の光の剣術“【斬撃】三日月”。
どうやら奴の核すら届いたようだ。
しぶといな。
最高位魔術《超速再生》で元通りになるか。
さっきの最高位魔術といい、こいつの魔力は無尽蔵と言っていいな。
「まさか、目に見える全てのものを切るなんてな……」
「どうだ? そろそろ差がわかってきたか?」
「確かに……さっきのお前の剣術は誤算だったよ。最高位魔術を防ぐまでは想定内だったが……。面白い……さらに面白くなった……!!」
なるほど。
こいつは変態だな。
「それで、まだ続けるか?」
「何を言ってるんだ? 戦いはこれからだろ」
「そうだな。ここからは第三ラウンドだ……!」
ズレた建造物が塵を撒き散らしながら崩れていく中、戦闘はすぐに再開された。
「魔界術《天帝の黒紋》」
無数の黒点がオレに向かう。
なあ。
いい加減にしろ。
そんな攻撃、もう慣れたわ。
オレは徐々に最小限の動きで奴に近づく。
「……!!」
既に奴の間合いに入った。
「光の剣術“【速刀】瞬き”……!!」
奴に目にも止まらない速さで斬る。
て、それは奴も同じか。
奴はオレの剣を《死滅の霊剣》で受け止めた。
だが、奴の剣は元の姿に戻っている。
やはりその魔剣の天性魔術・開放は結界を張り巡らせることでその範囲のみで即死効果をもたらしていたか。
でもオレ本来の最大出力の斬撃はそれさえも破壊する。
「魔天剣術“羅刹万解”」
「光の剣術“【連刃】千連光芒”……!!」
互いが互いの剣をぶつけ合い、加速する。
一刀一刀が致命傷になり得る威力。気を抜くことが許されない死闘。
だが、そのような剣技はすぐに実力を露わにする。
「やはりお前の方が剣術は上か、ノア・ライトマン……!!」
奴の剣を完全に弾いた瞬間、オレは一気に奴を八つ裂きにする。
が、そんなことしても奴はすぐに復活……いや、高位魔術《蜃気楼》か!
崩れた分身体、そこから真正面から奴が仕掛ける。
「魔界術《悪魔の極地》」
全てを飲み込む漆黒の魔力。
「光の剣術“【秘剣】魔術返し”……!!」
オレはそれを弾き返すが、そこにできた隙をグレイバルはさらに追い詰める。
「魔天剣術“断刃輪”――――!」
くっそ。
オレは奴の剣を真っ向から受け止める。
完全に整った体勢から来る脳筋剣術は今まで受けたものと比べ物にならないぐらい重い。
「どうした? これで終わりか、ノア・ライトマン!?」
「……!!」
マジか。
押し込まれる……!!
このままだと不味い……!
――――とでも言うと思ったか?
「なにっ……!!」
一か八か。
オレは力を振り絞り奴の剣を受け止めたまま方向を逸らす。
力任せの剣術は一方向には強力だが他方向から力を少し入れただけで体勢が崩れる。
そして奴の状態は前に屈みこむ。
そこをオレは奴の顔面蹴り、いくつもの建造物を破壊しながらやがて壁に激突する。
今だ……!!
オレは瞬時に奴の間合いに入った。
「光の剣術“【宝刀】煌め――――”」
剣術を放とうとした瞬間、オレは奴に蹴り飛ばされる。
「何度も受けたからわかる。お前が剣術を出す度、限りなく無いが隙はある」
奴は服を叩きながら起き上がる。
オレもすぐに起き上がる。
「そういうのは良くない。それがいずれお前を苦しめるだろう」
「はっ……! 敵に助言とか随分余裕だな……!! 剣術じゃあ、オレに勝てないってわかってるのにな……!」
「なぁに、お前に助言した訳じゃない。お前をここで死ぬのだからな」
「いいや、オレがお前を倒す……!」
「言ってるだろう。お前に次は無い」
奴は言い放つ。
「お前はもう死んでいる」
※※※※※
グレイバル・サタンの天性魔術。
その名は《時間停止》。
それは全ての時間を止め、自身のみが歩める魔術。
「勝利は最初から決まっていた。お前は私に挑んだ時点で既に負けていたんだよ、ノア・ライトマン」
グレイバルはゆっくりとノア・ライトマンの方に近づく。
そしてグレイバル・サタンの《時間停止》に制限時間など存在しない。
「アミール・タルタロスもこれで沈めてやった。が、お前には魔術が効かない体質がある。これを奴に効くか正直怪しかったが、どうやら奴に直接な魔術以外は効くらしいな」
そして時間が止まった世界でグレイバルはノアに辿り着いた。
天性魔術《時間停止》の《死点》。
それはこの世界で時間が止まったものに直接攻撃を与えられないという制限。
「さらばだ、ノア・ライトマン。私はこの時を待っていた」
奴は剣を振り下ろす。
そして首に当たる一瞬で奴は魔術を解いた。
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