1-76 タレミア奪還決戦②
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ゼルベルンは「モニター」が突然途切れた後もアヴァロンに囚われた人達を救い続けていた。
「アメリア……。無事で居てくれ」
高速で飛翔しながら次々に人を救っていく。
アメリアへの心配もさながらゼルベルンは責務を全うする。
「待って。止めて……。誰が助けて……!」
前方およそ九五〇メートル。
ここに来て未だ逃げ遅れた、重症を負った彼氏を庇い覆う彼女がアヴァロンに向けて魔術を打ち続ける。
が、アヴァロンはそれを無視するかのように確実に近づいていた。
間に合うか……!!
アヴァロンは既に高位魔術《豪炎の咆哮》を放っていた。
ゼルベルンは悟った。
これでは間に合わないと。
そして、決断する。
ピンポイントで高位魔術《千差万別の防壁》を彼らに貼ることを。
長距離の動きながらの魔術付与は、リスクが高すぎる。
それは例え世界最強でも例外では無い。
仮にその座標がズレて高位魔術《千差万別の防壁》を貼ってしまうと彼らの身体のどこかを分断してしまう恐れがある。
それでも彼女はやる。
現在タレミア復国団は国民の避難に追われながらタレミシア魔術師団と対峙しており、付近に彼らは居ない。
ならば、やってやる。
彼女は五大魔術師第二位 《波動の賢者》。
ゼルベルン・アルファなのだから。
だがその必要は無くなった。
アヴァロンに当たる直前、彼らはタレミア復国団でも無い魔術師によって高位魔術《千差万別の防壁》を展開により守られたのだ。
これでゼルベルンはすぐアヴァロンを消滅させ、無事事なきを得た。
「君たち、何者だ?」
ゼルベルンは彼らに問う。
「申し遅れました。五大魔術師第二位ゼルベルン・アルファ様、いや今はタレミア復国団団長殿とお呼びした方が宜しいか。我々はザノア帝国魔術師団特殊部隊。そしてその指揮を任された副隊長のエリアス・シュナイダーです」
……!! ザノア帝国の魔術師が何故ここに……!!
「特殊部隊、確かフレイ・ハズラークがその長をしていた部隊だな。それで君たちは何しに来た?」
「我々は隊長の命によりタレミアを奪還の為派遣されました」
隊長ね……。まさか他に代わるやつが居たとはな。
「それで、その隊長とやらは今どこに?」
するとエリアスは王城を指す。
「隊長は今、グレイバルを倒しに行っています」
途切れた「モニター」。そしてザノア帝国特殊部隊隊長であったフレイ・ハズラークを継いだ者。
なるほど。
「全く、あれほど釘刺したのにな。君は本当に手のかかる生徒だ」
ザノア帝国特殊部隊はタレミア復国団と合流。国民の避難と救助に尽力した。
そしてゼルベルンは再びアヴァロンに囚われた人の救助に勤しむ。
これにより王都は着実にタレミア復国団が優勢に傾いた。
※※※※※
「来い《死滅の霊剣》、お前に引導を渡してやる」
奴は右手に剣を顕現。
「やっと本気になったか」
「本気? こんなもの、まだ序の口だ。お前との戦闘で私は本気を出さない。出させたければ私を驚かせてみろ」
「そのぐらい一瞬で剥がしてやるよ……!」
互いの剣がぶつかる。
そうだろうな。
手刀でなら簡単に弾けていたが、真剣なら弾くどころかビクともしない。
奴は相当の剣術の心得があるようだ。
でもそれで互角だと思うなよ。
「……!!」
奴の両足が床に着いたままジリジリと後退していく。
いくら剣術が上手くてもそれ以上の奴には勝てない。
つまりお前ではオレに勝てない。
「光の剣術“【速刀】瞬き・天”……!!」
オレは奴の剣を弾いて反応すらできない速さで奴を斬る。
オレの剣が奴の身体ごと両断する。
だが致命傷にならない。
「魔天剣術“昇界輪”」
最高位魔術《超速再生》で全快。
奴は剣を弾かれて崩した体勢からオレの脇下から頭部へ一気に剣を振った。
オレはそれを後ろに跳んでかわすものの奴はそれを逃さない。
「魔界術《悪魔の極地》」
オレは高速で来る漆黒の魔力を《天空の聖剣》で受け止める。が、その魔術はさらに魔力が上昇し、王城の壁を突き抜け城外へ押し出される。
「お前は邪魔だ。せいぜいくたばってろ」
奴はすぐにオレに追いつく。
オレは奴に頭部を蹴られ決して地力で追いつけないぐらいの距離まで飛ばされ、王都中どこからでもはっきり見えるぐらいの地煙と共に地面に叩きつけられた。
くっそ。
このままだとリーナは殺される。
遠くからでもわかる。
微かだが、奴の魔力がリーナの魔力に近づくのを。
オレはすぐに起き上がる。
「大丈夫か? 少年?」
くそ。まだ避難してない奴がいんのか。
「何してる……!? 早く逃げろ!」
「でも君が……!!」
「オレは魔術師だ。今、前線で敵の魔術師と交戦している。ここにお前が居ては邪魔だ! 早くここから逃げろ!!」
「わ……わかった……」
咄嗟にその住人は逃げていった。
それでいい。
これでオレは全力を出せる。
グレイバル・サタン。
お前はオレをどうやら見誤っているようだ。
確かに魔術が使えないオレには近接戦闘しかお前を倒す手段が無い。
いくら遠距離でもお前のところまでは光の剣術“【斬撃】三日月”は届かない。
でもオレは一流の魔術師だ。
オレはあらゆる手段を使ってもお前を倒す……!
オレは剣を小指方向へ持ち替え、奴がいる方向へ照準を合わせる。そして、オレの剣を投げ放つ。
「炎の槍術“【投槍】遠炎牙月”」
※※※※※
「これで邪魔はいなくなった。あとはお前を殺し、この国を滅ぼす」
グレイバルはアメリアのもとに近づいていく。
「何言ってんの? それで本当にノアを追い払えると思ってんの?」
アメリアは奴に向け嘲笑する。
それを見たグレイバルはアメリアの両頬を掴んだ。
「随分奴を買っているようだが奴はここに来ない。もう詰みなんだよ。さて、もう生かすのも面倒だ。死ね」
アメリアは目を瞑る。
グレイバルが剣でアメリアの首を掻き切ろうとしたその時、王城の壁ごとぶち抜いて《天空の聖剣》がグレイバルの首を斬り落とした。
グレイバルは首をすぐに最高位魔術《超速再生》で治し、アメリアから離れぶち抜かれた壁の外から見渡す。
そして微かだがノア・ライトマンが見えた。
何言っているのがわからない。
けどグレイバルには口の動きからすぐに察した。
「今すぐ降りてこい。オレはここからでもお前を殺せるぞ」
グレイバルは笑い、王城の外に出る。
そしてグレイバルはノアのもとへ降り立った。
「仕切り直しだ、グレイバル・サタン」
「ああ。そうだな。お前は確実に殺さないといけないようだ」
戦場は王室の狭い空間から荒れ狂う広大な市街地へと移転する。
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