1ー72 天涯頂天
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アリアはノアの戦闘を見て唖然とする。
当然、アリアはノアが元五大魔術師フレイ・ハズラークの弟子であり、彼が単騎でドラゴンを倒せるぐらいに強いのは知っていた。
けれど、いざ間近で見るとアリアの想像以上にノアは強すぎた。
「何も……見えない」
ノアの動きが捉えきれない。
一緒に戦えると思ってたのに、ここまで差があるとは思いもよらなかった。
アリアが手を差し伸べようとするも逆にノアの手を引っ張りそうで何もできなかった。
「……っ、うぅうん!」
ここでエミリーが目を覚ました。
「行かなきゃ」
そう言って彼女はアリアのもとを去るようにすぐさま消えた。
※※※※※
「ガララララララララッ……!!」
ドラゴンが炎を吹く。
オレは一瞬でドラゴンの懐へ進み、奴に強烈な拳をお見舞いする。
「ガラララララララララッ……!!」
「……っと」
奴がオレの頭上から杖を振るった。
オレは咄嗟に避けたが、ドラゴンと距離が空いた。
高位魔術《豪炎の咆哮》。
ドラゴンの尾から射出された高火力の炎がオレを襲う。
光の剣術“【斬撃】三日月”。
ドラゴンの炎を斬り伏せ、そのままドラゴンの尾を切る。
「魔界術《悪魔の極地》」
奴は既にオレの背後をとっていた。
漆黒の魔力でオレを潰しに来る。
「光の剣術“【秘剣】魔術返し”――――!」
その漆黒の魔力をオレは跳ね返し、その魔力は奴のもとに向かった。
奴はその魔力を杖を振るって無きものにする。
「流石はクインテット。数的不利の中よくもまあ、ここ までやれるものだな」
「お前、舐めてるだろ? オレがどんだけドラゴンを倒したか。たかが最上位の魔物だろうとオレにとっちゃただの雑音なんだよ」
「ほう……。ならば、これで更に貴様を苦しめるとしよう。これが真の二対一だ」
奴はドラゴンに魔力をかける。
「最高位魔術《天涯頂天》」
「グラアアアアアアアアアアアアアア……!!」
最高位魔術《天涯頂天》。
それはあらゆる全ての能力を限界突破、生物の壁を越えた、まさに超越した化け物へと底上げする途轍もない魔術。
この魔術を付与したものはあらゆる物理法則、魔術理論、世界の理すらも破り捨て強大な力を手に入れることができる。
「はっ……。マジかよ」
「どうした? 怖気付いたか?」
だが、その魔術の《死点》は付与したものは必ず身を滅ぼし、死に至る。
「よくやるよ。たった数十分程度の命を燃やさせてさ」
「だがこれで貴様に勝てる」
確かにドラゴンはオレの常識外の行動をしてくるだろう。
でもさ。
「何言ってんの?」
「なに……?」
相手はドラゴンなんだろ?
「これでオレに勝てるとでも思っちゃって、お前はつくづく脳みそお花畑なんだな」
「やれ」
ドラゴンがオレの顔面を殴りかかる。
オレはその打撃をガードする。
確かにドラゴンの一撃、強烈だが吹っ飛ばされない。
「光の剣術“【宝刀】煌めき”」
オレはすぐさまドラゴンの拳を振り切り、ドラゴンに巨体を抉る切込みを入れる。
だが、ドラゴンの切り傷はすぐに再生する。
「高位魔術《深層の鉄槌》」
奴はドラゴンを目眩しに腹を貫通させてオレの頭を狙った。
オレは首を傾げて避けるが、その瞬間ドラゴンの高速の炎がオレを襲う。
「くっ……」
オレは完全避けることはできず肩に火傷を負ってしまう。
あのドラゴンから吹かれる炎は魔力を通さず自力で編み出した炎なのか……!
「私を忘れて貰っちゃ困るよ」
オレは咄嗟に剣を振るって……いや、不味い!!
奴の杖はあらゆる物を無きものにする。
ここで奴の振るった杖とオレの剣が当たり、オレの剣が消滅した。
「魔界術《堕天楼》」
奴の指先から放たれる漆黒の矢をオレは寸前で避ける。
が、奴はすぐさまオレに杖を振るう。
ここは一旦距離を……!
オレはすぐに光の剣術“【斬撃】三日月”の応用、魔力密度の高いこの場だからできる無重力空間の移動で 奴から距離を取る。
だがオレが距離を置いた矢先にドラゴンはいた。
オレは気づいた頃には奴に殴られ吹っ飛ばされる。
「くそっ……!」
ここでカーミュラスの魔術が無作為に放たれる。
「魔界術《天帝の黒紋》……!!」
小さな黒点が一気にオレに来る。
おそらく魔族が持つ特有の魔術はオレの体質であっても効く。そう確信して放っている。
「光の剣術“【連刃】千連光芒”……!!」
オレは両手を手刀にしてひたすらに奴の魔術を砕いていく。
これはやばい。
ただでさえ数量で追い込まれているのに、ここでドラゴンがオレに突進してくる。
ドラゴンはオレに魔術が効かないと察知して近接戦を仕掛けてくる。
そしてドラゴンの速さはその巨体から考えられないほど凄まじい。
流石、最高位魔術の付与魔術だ。
でもオレがこの状況で切り抜けれないとでも……!!
ドラゴンはカーミュラスの杖を咥えていた。
幾らなんでもそれを捌くのには無理がある。
この状態でも剣術の流れでドラゴンに一撃を与えることはできたが、あの杖を先端にされたらオレの腕の長さよりあるその杖が先にオレに触れ、オレは消滅する。
くっそ……!!
それでもオレは一流の魔術師だ。
打開してやる……!!
この時、ある一筋の光がオレとドラゴンの間に生まれ、魔界術諸共消滅した。
「おかえり」
髪をたなびかせ、彼女は言った。
「ごめん。私のせいでノアが大変なことに」
「気にすんな。それよりあいつらを倒すことだけ考えろ」
「……うん!」
エミリー・ライトマン。
これより戦闘に復帰する。
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