1ー71 召喚
オレの光の剣術“【斬撃】三日月”は魔力の流れを捉えて放つ剣術。
言うなれば大気中の魔力を「捕まえて投げる」イメージで常に斬撃を飛ばしている。
そして結界魔術は自分以外の対象全てが不利になるほど結界内の魔力は大気よりも濃く流れている。
オレはそれを利用し、結界内の魔力を「壁にして蹴り飛ばす」ことによって何もできない無重力空間を移動できるようにした。
さらに奴の魔術はオレではなくオレの周りの空間を対象に重力を生み出してオレの体を自由に振り回している。
オレ自身が対象で無いならオレの周りの空間を外れた瞬間にオレは自由になれる。
そしてこれらの読みが当たり、現在に至る。
「これでお前と対等にやり合える。それでどうする? このまま倒されても良いんだぞ?」
「抜かせ。この程度で私を追い込めたと思うな」
「でもどうやってオレを倒す? お前はさっきから自分の有利な条件で戦ってきた。でも今は違う。オレは既にこの結界魔術を攻略している。 ここからはオレのターンだ」
オレとカーミュラスに少し間合いができた瞬間に再び魔術が勃発する。
「魔界術《天帝の黒紋》」
奴が無数の黒点を発生させオレに攻めてくる。
光の剣術“【帯刀】閃光斬”でその無数の黒点を破壊することはできるが、この状況だと破壊し損なった時、オレはまともに食らうな。
「なあ……言っただろ? オレは今お前とは対等だって」
「……!!」
奴はおそらく武術の心得を持っていないか、基礎ぐらいの知識しか持っていない。
だからオレは逆に正面から一気に間合いを詰めた。
「光の剣術“【速刀】瞬き”」
オレの剣術に奴は反応すらできなかった。
オレは奴の心臓部を強烈に引き裂く。
奴の身体を支える骨の至る所に亀裂が走る。
「がっ……!」
奴はオレにまたも奴と反対方向に重力を発生させる。が、そんなものでオレが止まるわけないだろ。
オレはすぐに奴の間合いに詰めた。
「光の剣術“【連刃】千連光芒・乱舞”……!!」
奴の弱点目掛けて、目に止まらない速さで奴の心臓部を切り裂いていく。
奴の弱点の心臓部が次々と剥がれていき、やがてほとんど消え、とどめの一撃。
「舐めるな……!!」
オレは咄嗟に引いて回避。
奴と距離ができた。
奴は新しく武器を手に入れ、それを奴はオレに振るった。
「へぇ、やっぱ持ってんだな」
「まさか私がこれを使う羽目になるとは夢にも思わなかった」
「というか最初から使っとけよ。オレがそれ諸共潰してやるからさ……!!」
武器と言えど剣では無い。
どちらかと言うと身の丈ぐらいの杖のようで奴はそれをオレに向けて振るった。
奴の様子を伺う。
何もしてこない。近接用の武器なのか。
オレが剣で接近しなければ攻撃できないと思っているのか?
「光の剣術“【斬撃】三日月”」
オレは奴に向けて斬撃を飛ばす。
だが、その斬撃は結界の魔力密度によりいつも撃つぐらいの出力より大幅に威力がある。
この一撃で奴の武器の本質がわかる。
すると奴はその杖を振るい、斬撃が掻き消された。
なるほど。
やばすぎるな。
「……さっき、お前と距離を離しといて良かったよ。その武器、おそらく保持者以外の全てを存在ごと消滅させる奴だな。もし当たってたらオレは間違いなくこの世に居なかった」
「ご名答。これは《根滅の魔杖》。貴様の言う通りの効果を持った杖だ」
「……それで、オレが討ち取れると思ってんの?」
「いや、このレベルで貴様を倒すのは少々もったいない。だが、この杖は単純な魔力増強の効果もある。故に私はこいつで容赦なく殺すとしよう」
オレが見たのはまさに絶望と呼ぶべきものだった。
「これをチームローの連中に教えたのはお前だな」
奴は巨大な魔術陣を展開。
そこから生み出されし、大きな翼を持ちし豪快な巨体のトカゲ。
「召喚魔術」
奴はこの《無重力空間》に新たな刺客、ドラゴンを呼び出した。
「ガラララララララッ……!!」
面白い。
「まとめてかかって来い。オレが全てを倒してやる」
まだ戦闘は終わらない。
※※※※※
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
もう何時間も走った。
なのにまだ何かがついて来る。
「一体、なんなの……!」
何も見えない空間、私は走ることしかできなかった。
もう限界はとっくに超えている。
涙もボロボロと流れ出ていく。
それでも終わらない恐怖。
いつか来る光のために走った。
けれど現実は残酷だ。
「痛っ……!!」
何が起きたかはわからなかったけど何かにぶつかり、倒れてしまった。
「いや……嫌っ……!!」
慈悲もなく、骨の吃音はだんだん大きくなる。
近づいていく。
尻餅をついて後ずさるが、やはりそこにはさっきぶつかった何かがあった。
「来ないで……!!」
ダメ。怖い。逃げなきゃ。でもどこに。どうしよう。このままどうなるの。怖い。嫌だ。殺される……!!
耳元までその雑音が聞こえ、何かにしがみつかれ、もうどうしようも無くなった時、ある声が聞こえた。
『魔術、使えるよ』
「えっ……」
そう誰かに言われ、咄嗟に魔力を込める。
使える……!!
そして私は魔術でこの空間全てを照らした。
何も無い空間。
微かに残った砂のような白い粉があちこちに纏まって落ちてあった。
誰に言われたのかはわからない。
けど、私は行かなきゃならない。
「待ってて……!」
私はその空間からひたすら走り抜けた。
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