1ー69 暗黒の纏
アリアとエミリーの方を見る。
強気で奴と戦おうとするが、やはり足は正直に震えていた。
カーミュラスが先手を打つ。
「魔界術《堕天楼》」
奴から放たれた魔術は漆黒の矢を以て高速で撃ち放った。
「光の剣術“【宝刀】煌めき”――――!」
オレは真っ向から奴の魔術を剣術で受けた。
その衝突はすぐに白煙に覆われ、視界が一瞬で奪われる。
だがそれが目的だ。
奴は白煙で姿をくらましたオレたちを魔力探知でしか詮索できない。
けどオレならその魔力探知すら引っかからない。
オレは一気に奴との間合いを詰める。
「光の剣術“【帯刀】閃光斬”……!!」
……さすがだな。
オレの網目に切り裂く剣術を奴は高位魔術《千差万別の防壁》で防ぐとはな。
で……?
「……!!」
奴の防壁魔術が歪み、原型を保てなくなった。
精霊魔術《幻影操作》。
精霊とは意志を持つ魔力。
その精霊たちに働きかけることで、対象の魔術を乱すことができる。
「アリア・マグナード……!!」
オレやリーナ、ルーク、アリアもかな?
オレたちは近距離から攻める魔術師『攻撃手』を得意としている。
でもアリアはその逆、中距離から援護する『援護者』で常にオレたちの助けになってくれている。
そして――――
「水の精霊さん、私に力を貸して」
アリアはそう言って、弓の形を作る。そして矢を射るように奴に照準を合わせ右手を引くと、矢が出現した。
「水の弓術“【直射】天楼水速”」
アリアは水の矢を放った。
そしてアリアは遠距離から敵を的確に撃つ『狙撃手』も兼任できる。
だが、奴に水の矢は当たらず奴の骨の手で防がれる。
「……この程度か。それでよくグレイバル様のもとへ行こうとはな。哀れだ」
「……哀れ? お前、アリアに踊らせすぎだろ。もう一人 忘れてるぞ」
奴が気づいた頃にはもう遅かった。
背後、それも足下よりエミリーは穿つ。
「《忍び寄る閃光》」
光の剣に具現したエミリーの魔術が奴の喉元を突き刺した。
奴の頭蓋骨が取れ、転がる。
「入った……!!」
「いや、下がれ……! エミリー!」
「え……?」
一瞬、奴は動いた。
奴の手はエミリーの頭上へ。奴はその手に魔術陣を展開し、放つ。
「魔界術《暗黒の纏》」
「光の剣術“【秘剣】魔術返し”……!!」
オレは奴の展開した魔術陣ごと切り、妨害する。
だがその系統の魔術ではエミリーを守ることはできなかった。
「あ……ああ……」
「クソっ……!」
精神に干渉する魔術か!!
一遍エミリーに何も異常は見られない。
だが、舌を出し既に何かに怯えているような表情を見て確信した。
「光の剣術“【宝刀】煌めき”……!!」
オレは奴に一撃を入れ、エミリーを抱えてアリアの元に戻る。
「アリア、エミリーのことを頼んだぞ。精神系統の精霊たちと協力してなんとかエミリーの苦しみを和らいでほしい。これはお前にしかできないことだ」
「わか――――」
「後、エミリーがもう助からないとか、お前を殺そうとしたりした場合は迷わず殺せ。そうじゃないとエミリーの魂に傷がつくからな」
「……わかった」
「安心しろ。そこまでお前を信用してないわけじゃない。エミリーは絶対目を覚ます。オレはそう信じてる。だから改めて、頼んだぞ」
「うん……!!」
全く、オレはアリアに凄い重圧をかけてしまったな。オレも魔術が使えたならアリアに押し付けるなんてしなかったのに。
悪いと思ってる。
だから奴とは早めに決着をつける。
頭を刎ねられた状態でもそのまま動ける奴に果たしてオレの剣術は通じるのか。
少々苦手な相手でもオレなら問題ない。
オレは世界最強の魔術師の意志を受け継いだ魔術師 ノア・ライトマンだ!
「もう、終わりか。ノア・ライトマン」
「いいや、ここからだろ骸骨野郎。お前を倒してオレ達はリーナのところに行く。オレはもう誰も死なせない」
カーミュラスの一撃入れてズレた脊椎はすぐに修復され頭が奴のほうに向かって飛び、首を合致させる。
「……良いだろう。ならば私はここから天性魔術を使うとしよう」
さあ来い、カーミュラス。お前の全てを壊してや――――
「は……?」
その瞬間、オレの視界が逆転しオレはいつの間にか吹き飛ばされていた。
※※※※※
急に私の視界は何もない暗闇になっていた。
「ここ、どこ……?」
確か、あの骸骨の魔族と戦闘中、ノアに「下がれ」と言われた途端、それから急にわからなくなったのか。
魔術、使えない。
体は動く。でも、どう動いているのかわからないほど何も見えない。
「……なに?」
この時、音が聞こえた。
何かはわからない。でも確実にこっちに来ている。
私は逃げた。何かはわからないものに。
怖い怖い怖い怖い怖い。
その恐怖だけが私を確実に蝕んでいく。
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