1ー68 タレミシア魔術師団団長
新星歴二九九八年六月七日 午前十時五十分頃
オレとアリア、エミリーはリーナのまで走り続けた。
どうやらほとんどの魔術師はルークのおかげであっちに集中したらしい。
「それでアリア、位置はわかるか」
「あとちょっと。もうすぐでリーナちゃんのところに着くよ……!!」
走る途中、オレは走るのを止め、二人を腕で止まるように指示した。
誰が来る……!
「おやおや。中々若いお客さんが来てしまっているようだね」
「……誰だ、お前」
「誰って、それはこっちの台詞だよ。城に無断で侵入してよく言えるね」
オレは直感で理解した。
こいつは強い。
「アリア、エミリー。今のうちに逃げろ。こいつは強いぞ」
「知ってる。だけど……ここで退いたらリーナちゃんに会えない。私はここにいるよ」
「アリアだけでも逃げろ」
「私も残る」
あの臆病なアリアが強気で言ってくるとはな。
「……わかった。だったら覚悟を決めろ。もう後戻りなんてできないぞ」
「うん……!!」
「わかってる。こう見えて二人、上位の魔術師を倒してんだから……!!」
「そのおかげで魔力がだいぶ減ったんだろ?」
「……あ。あれは仕方ないじゃない! まさか起きるなんて思ってなかったし!」
さすが『星極の術魔祭』を補習で参加できないくらいの天然っぷりだな。
ともあれ奴からは逃げられないと考えていいだろう。
「それで、貴様らの名を聞こうか」
「……それは聞いた方が先に言うのが筋だろ」
「……ならば名乗ろう。私の名はカーミュラス・アーケイン。タレミシア魔術師団団長を担う者だ」
タレミシア魔術師団団長、と言うことはグレイバルと仲間なのは確かだな。
「オレはノア・ライトマン」
「アリア・マグナード」
「エミリー・ライトマン」
すると奴は少し笑みを浮かべる。
「ノア・ライトマン……。ここで貴様と戦えるとはな……」
「それはどうも。オレは戦いたくないよ」
リーナを救う為にも体力は温存しとかないとな。
「そこのもう一人のライトマン。貴様とノア・ライトマンは血筋なのか?」
「……? そうだけど? ノアとは双子だよ?」
「ほう……。確か双子は人間が奇跡的な確率で結びついて二人同時に産まれる現象、だったか。面白いな」
なんだこいつ。
急に余計な話ぶっ込んできやがって。
だがここで奴の本性が現れる。
「しかし、そんな人間も私は殺さなくてはならない。私はグレイバル様の右腕。ここは潔く殺してあげよう」
来る……!
「死――――……!!」
《死眼》。
奴はオレたちが奴より魔力量では大分差があると悟り、即死する魔眼を仕掛けてきた。
でも残念。
その魔術はオレが発動する前に切ってやった。
「……へぇ。さすがクインテット。これではいつ私が魔眼を仕掛けようと必ず阻止されるな」
奴は瞬時に最高位魔術《超速再生》で自身の両眼が何も無かったかのように回復した。
「まあいい。ならこれで一先ず貴様らを屠るとしよう」
「来るぞ……!!」
結界魔術《煉獄》。
奴は確実にオレたちを殺すため、逃亡の禁止と灼熱の気温での戦闘を強いられた。
「はあぁ……はあぁあ……はぁああ……!!」
やはりか。
オレは体質で温度すら感じない。それ故奴とは足下だけ気をつければ問題ない。
けど、エミリーは違う。
エミリーは急変した環境を直接に受ける。あのザノア帝国魔術師団団長のダンベル・シュナイダーでさえ照り返す気温にやられて動けなかったほどだ。
やっぱり、逃がしておけば……!!
だがエミリーにアリアは手を差し伸べる。
「……!」
「大丈夫……?」
「……ありがとう」
灼熱の気温に苦しんでいたエミリーがアリアに触れられたことで一瞬で平常に戻り顔色も良くなった。
「ほう。アリア・マグナードとか言ったな。貴様、精霊魔術を使ったな」
精霊魔術。
本来精霊魔術は精霊族のみしか使えない魔術。しかし、例外としてアリア・マグナードはその精霊魔術を使うことができる。
「……うぅうん。私は人間だよ。でも聞こえるの。精霊たちの声が」
「なるほど。それは興味深い。だが、残念だよ。貴様を知る前に殺してしまうのだから」
「言ってろ、カーミュラス。アリアとエミリーは絶対に死なせない……!」
「……それはどうかな」
この時、カーミュラスは変貌する。
全身の身体が溶けだし、蛹から羽化するように奴は本来の姿を見せた。
それはまるで歩く屍。
全身が骨のみで構成されており、頭蓋骨の顔面はアリアとエミリーを恐怖に陥れる。
全身のマントや鎧には対魔術が付与されており、まさに魔術師を殺すかのようにできている。
わかっていたけど奴は魔族。それも『魔術師殺し』も数倍は強い。
「始めようか……! 運命に弄ばれし少年少女よ……!! 貴様らを手にかけ私は新たな力を手にするとしよう!!」
これより苛烈な戦闘が幕を開ける。
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