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1ー67 『魔力促進剤』


 ※※※※※


「『魔力促進剤』……?」


 ゼルベルンは私立タレミア魔術学園で一人の教諭からとある話題の魔力を増強する薬剤を耳にする。


「そうなんですよ。これがすごくて……ほら。《測量眼》で見てもらえればわかりますよ」


 ゼルベルンはすぐにその教諭の魔力量を見る。

 なるほど。

 確かに上がっている。


「……永続的に上げる魔力増強剤か。確かにいい物なんだろうな」

「でしょ。ならぜひとも学園長も」

「わたしはいいよ。そんなものは無くてもわたしは強いから。それより、その『魔力促進剤』はどこから出ているんだ?」

「王都から……なんと言っても新国王が開発したそうですよ」

「ほう……」


 なるほどな。


「……それ、あまり摂取しない方が良いぞ」

「なぜです?」

「あの国王、グレイバル・サタンが開発したとなれば何か裏があるかもしれないからな」

「この国の民を救ったのにですか?」

「ああ。あくまでわたしの直感だがな。とにかく生徒には勧めないでくれ。無論、この事を他の教諭にも伝えて欲しい」

「……わかりました」


 そう言って教諭は学園長室から去っていった。


 それにしても『魔力促進剤』。

 奴は必ず何かを仕掛けているに違いない。


 仮にそんな永続的な効果のある『魔力促進剤』などという物ができるのならば、とっくの昔にできていたはず。

 それだけの価値の物を成りたての一国王が作ったなどと到底信じられない。


 かと言ってゼルベルンはグレイバルとの《契約》を交わしているため、迂闊に手を出せない。

 今は《契約》を破棄したところでタレミア王国が戻るとも限らない。


 ならば、ここはグレイバルの動向を見る。

 奴が動き出した際にわたしは奴を倒す。


 そして、この判断が裏目に出ることとなった。


 ※※※※※


「さあ。次は君だよ、グレイバル・サタン」


 結界魔術が解かれ、ゼルベルンとグレイバルは同じ場所で顔を合わせる。


「……やはり奴では勝てないか。まあいい。想定内だ」

「……へぇ。想定内ね……。でも君はこれでチェックメイトだ。もうわたしを阻む者はいない」

「いや……それはどうかな」


 グレイバルは叫ぶ。


「さあ……!! 呼び覚ませ……!! 魔界より産みし生物兵器……!! アヴァロン!!」




 内戦に巻き込まれ、逃げ惑う国民。


「こっちだ!! こっちに来い!!」


 少年は男性に呼ばれ、ひたすら走る。

 だが、突如少年の身体は変化する。


 少年を覆うように黒い渦が出現し、そのまま呑み込む。そして、その黒い渦は肥大化し、奴はゼルベルンの背後に現れた。


 呼び覚まされし記憶。

 かつてタレミア王国を崩壊させた忌まわしき化け物。


 魔界生物兵器 アヴァロン。




「……やはり。君が元凶だったか、グレイバル・サタン」

「そうだ。私がこの国を乗っ取った。それで、何が言いたい?」


 アヴァロンはゼルベルンに向けて巨大砲撃を仕掛ける。

 高位魔術《豪炎の咆哮(マキシマムフレイム)》。

 だがゼルベルンに当たる直前、その魔術は破壊される。


「随分舐めたことしやがって。この愚行、どう落とし前をつける……?」

「愚行? ……いや、私は鼻からこの国の人間などどうでもいい。私の目的はただ一つ。アメリア・ランドロード・タレミアの抹殺だ」

「一つ聞きたい。なぜアメリアを狙う?」

「簡単な話だ。奴こそが我々の天敵。排除すべき異物だからだ」

「……もういい。あの魔物を殺して、すぐお前のもとに行くとしよう」

「残念だが、それは無理な話だ」


 それは受け入れたがい光景。

 グレイバルの言う通り、それができなくなった。


 同時に複数のアヴァロンを確認。

 更に増加、奴らは次々に出現する。


「……!! これは一体……!!」

「……十年前、私は建国と同時に『魔力促進剤』を作り、愚民共にばらまいた。本っ当にすぐに広まったよ。私の思惑をも知らずにな……!!」


 ゼルベルンは理解した。

 『魔力促進剤』。

 これは人間を媒介に化け物を作り出すため魔力増強を売りにした異物。


「貴様、やってくれたな」

「やっと余裕の態度を失ったか。そうだ。お前の考えている通り私はこの国民全てを人質にした。これでお前の刃は私には向かない」

「国民を捨てて貴様のもとに向かってもか?」

「お前はそれができない。この国を愛しているならな。生憎、お前と対峙しても私を殺すのはそう容易くない。それはお前も理解しているからこそ、お前は今もそこに居続ける」


 全てグレイバルの手の平に踊らせているたわけか。

 なるほど。

 じゃあ、これも想定内か?


 この時、ゼルベルンの背後にいたアヴァロンは突如消滅する。

 そして手元に現れた核に囚われた少年をお姫様抱っこした。


「もう、アヴァロンから救出する方法を編み出したか」

「なに、これは既にわたしの生徒たちがしてくれた方法でやったに過ぎない。いつまでアヴァロンが出現するかは知らないが、わたしはその全ての人を救おう。その後に君を倒す」

「やれるものならやってみろ」


 ゼルベルンはその場から姿を消し、次々に出現するアヴァロンを消していく。


 グレイバルも動き出した。


「さあ、最後の計画に移ろうか」


 グレイバルはアメリアのもとに向かう。

 最後の計画、それは――――。


「ちょっと、何をするつもり……!」

「決まっている。お前をここで殺す」

「……!!」


 アメリアは問う。


「なに考えてんの! そんなことしてあんた、無事でいられると思うの!」

「たとえゼルベルンがわたしを殺そうがかまわない。わたしの目的はお前を始末すること。それにお前が死ねばゼルベルンはこの国を必ず破壊するだろう。まさに一石二鳥だ」


 グレイバルは新たに王都中に魔道具「モニター」で流し、アメリアの死刑を執行する。


 だが、グレイバルは気づかなかった。

 そこに魔術学園の無能者がいることを。

『魔力促進剤』は1ー9 タレミシア魔術大国①にて既に出ています。



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