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1ー66 波動


 ゼルベルンは天性魔術を発動させる。


「天性魔術・発動《波動》」


 だが、ゼルベルン自体には何も変化は無かった。


「……ふざけているのか?」

「いや。だが、これによりお前はもうおれに攻撃は届かない。かかってこい。全て破壊してやる」


 ドニーは再び魔術を飛ばす。


「《深層の鉄槌(アイアンメイデン)》」


 高位魔術《千差万別の防壁(オールオブ・バリア)》さえ貫通する魔術でドニーはゼルベルンの心臓部を狙った。


 ゼルベルンはそれに何もせず立ち尽くす。


「死ねええええ!!」


 ドニーは叫ぶ。

 だが、その叫びは無意味と化した。


「……は?」


 ゼルベルンに当たる直前、高位魔術《深層の鉄槌(アイアンメイデン)》は消滅した。


「どうした? おれを殺すんじゃなかったのか?」


 ゼルベルンは余裕の笑みでドニーを嘲笑う。

 ドニーはそれに苛立ち、一瞬でゼルベルンの間合いまで接近した。


「魔天剣術“断刃輪(だんじりん)”……!!」


 縦に振り切る絶対的な一撃。

 その洗練された剣術は名のついた大物のドラゴンでさえ一刀両断する力を持っていた。


 だが、それもゼルベルンには通じない。

 またもゼルベルンに当たる直前、魔剣《紫狼の転剣(デッドリバース)》が一瞬で破壊された。


「なっ……!!」

「おい。それだけか」


 ゼルベルンはドニーの腹部を蹴り、距離を保った。その蹴りは通常の蹴りより異質で腹部が貫通されたかのように穴が空いた。


「ぐっ……がはっ……!!」


 吐血が止まらない。

 最高位魔術《超速再生》で回復はするも、そのダメージは測りしれない。


「な、なんなんだお前は!! その天性魔術はなんなんだ!!」


 ドニーは口から血を垂らしながら問う。


「良いだろう。おれに傷をつけたご褒美だ。

 生物や場所、魔力、音もか。いろんな所に『波』という存在する。おれの天性魔術《波動》はその『波』の振動を自由自在に操ることができる。

 そしておれは今、その『波』をおれの全身に纏うことでおれに向かうものを相殺できるようになった。

 つまり、おれの天性魔術は向かうものを全てを破壊する。よってお前の攻撃はもうおれに届くことは無い」

「……なっ!!」


 ドニーはこの時、ようやくゼルベルン・アルファを理解した。

 ――――こいつには勝てない。


 ゼルベルンはドニーに一歩ずつ近づく。

 その度にドニーは後ろに下がるが、その圧倒感が故に躓き、尻もちをついた。


「……!!」


 ドニーは戦意喪失した。

 ゼルベルンから距離を離すため、一瞬で逃げ去った。


「あいつはやばい。俺はどうなってもいい! これを今すぐグレイバル様に報告しなくては!」

「できると思ってんの?」


 ゼルベルンはすぐにドニーのもとに辿り着いた。


 おかしい。

 明らかにゼルベルンの身体は子どものような華奢な体型。それでドニーに追いつけるわけが無い。


「ああそうだ。一つ、お前に褒めることがあった。おれも完全に天性魔術を発動させる前に何度か使っていたな。

 言い忘れていたがこの目に映る光そのものも『波』が発生しているんだ。それを応用しておれは転移では無いが瞬間移動のような行動もできるようになった。

 そもそもおれの結界魔術で逃げる場所すら無いのに、なぜそのような無駄な体力を使うんだ?」

「……!!」


 ここでドニーの天性魔術《刹那の冥境(デスサークル)》で致命傷な一撃を与えようと、座標攻撃で仕留めようと試みる。

 だが、その試みは失敗しドニーの手は消滅した。


「《振音閃撃(ノイズ・フラッシュ)》」


 ゼルベルンが魔術を使用する。

 するとドニーの身体は一瞬で平衡感覚を失い、倒れ込んでしまう。


「これが効くということはどうやら魔族もおれたちと同じ体の構造をしているらしい。これは大きな収穫だな」

「……くそ」

「……ほう。立ち上がるか。通常なら三日は立てないんだがな……。すぐに脳を《超速再生》で治して無理やり立ったか……」


 ドニーは声を荒らげる。


「お前は一体……なんなんだ。こんな強い精霊の血を持った人間など今まで見たことなんてなかった。無論クインテット以外でな」

「おれが強い……? いや。おれはただ『世界最強』の称号を持っているだけで本当の世界最強では無い。上には上がいる」


 五大魔術師(クインテット)第二位 《波動の賢者(ウェーブ・オーバー)》。

 ゼルベルン・アルファ。


 この化け物にドニーは絶望する。

 完全に戦意喪失したドニーを見て、ゼルベルンは最終局面へと進める。


「これがお前の最後だ。散々おれを殺すと言っておきながら、なんだその無様な姿は。だが、お前は一つおれに傷をつけたという褒章がある。

 故に死に方を選ばさせてやろう。楽に死ぬか。それとも苦しんで死ぬか」


 この時、ドニーは最後の力を振り絞りゼルベルンに高位魔術《深層の鉄槌(アイアンメイデン)》を打つ。

 だが、その魔術もゼルベルンの前では無意味に散った。


「……わかった。なら苦しませて死なせてやろう!」


 ゼルベルンはドニーに最後の魔術をかけた。


天性魔術・解放(アドバンスロード)《波動》」


 その瞬間、ドニーはもがき苦しんだ。


「あ……あが……うがああぁぁぁあ……!!」


 目、口、鼻、耳、身体全て周囲の圧迫し続ける振動により全身が血だらけとなり、ドニーは何もできずやがて動かなくなった。


「そうそう。わたしはまだ本気の一部しか出してないよ。……って、もう聞いてないみたいだけど」


 ドニーはこうして息を引き取った。


 勝者 ゼルベルン・アルファ。


「さて、アメリアを救いにいこうか」


 結界魔術は解かれ、再びグレイバルと顔を合わせる。

光は本当に『波』です。

詳しくは「ヤングの干渉実験」って調べて貰えたらわかります。


星★★★★★、レビュー、感想、ブックマークのほど、よろしくお願いします!!


1つでも多くの評価ポイントがあるだけで作者は泣いて大喜びします!!

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