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1-63 虚無の平原


 ※※※※※


 グレイバルは『タレミシア革命』後すぐにゼルベルンを呼び出した。


「何の用だ、この裏切り者が」

「なんとでも呼べ。お前はどうせこの国を破壊できないだろ」


 ゼルベルンは理解していた。

 五大魔術師(クインテット)は複数の国家を相手にできる怪物共。

 新しく出来たタレミシア魔術大国も勿論破壊できる。

 だが、破壊したとてタレミア王国が蘇ることは無く、むしろ復国次第困難になるだろう。


 故にゼルベルンはグレイバルの要求を呑むしかなかった。


「それで、本題はなんだ?」

「単刀直入に言う。私と《契約》を結べ」


 《契約》は魔術という枠組みの中で重要な意味を持つ。例えば、最高位魔術は《生点》と《死点》が締結することで莫大な力を生み出せるが、この締結こそが《契約》としての役割を担っている。


 これを破れば、破った当人は必ず殺される。

 この条件は設定もできるが、基本的には魔術という名の概念自体が裁き、呪い、死に至らせる。


「《契約》? わたしがそれを望むとでも思うか?」

「望むもなにも、お前は必ず《契約》する。お前はそうせざるを得ない」

「……なに?」

「単純な話だ。お前の受け持つタレミア魔術学園。私が皆殺しにしないと思うか?」


 ここでゼルベルンはグレイバルの胸倉を掴む。


「おい、それをわたしが許すとでも思うか」

「待て。そこで《契約》だ。私はお前の学園の生徒に手出しはしない。そして、お前も我々に手出しはしない。これが私とお前が結ぶ《契約》だ。どうだ?」


 ゼルベルンはグレイバルから手を離す。


 そして落ち着きを取り戻し、答えを出す。


「いいだろう。ただし、君だけじゃなく君たちだ。タレミシアの魔術師団及びタレミシアを牛耳る全ての者に対してその《契約》を結んでやる」


 ゼルベルンの答え。

 それは誰一人として失わないことだった。


「交渉成立だな」

「用はそれだけか」

「ああ。もう帰っていいぞ」


 そう言ってゼルベルンは一瞬で姿を消した。

 この時、ゼルベルンは気づいていなかった。タレミシア外の者ならいくらでも学園に干渉できることに。


 ここで同席していたド二ーが質問する。


「グレイバル様、少しいいですか?」

「なんだ?」

「なぜ、グレイバル様は《契約》までして奴から遠ざかるのですか? あなたの実力なら奴を打ち倒すことなど容易いのでは?」


 グレイバルは答える。


「いや、奴は強い。たとえ私が勝てたとしてもその被害は凄まじいものになるだろう。それならいっそ《契約》で縛りでもすれば奴は我々の邪魔はしない。我々が勝てる確率が高くなる。それだけだ」


 この時、ドニーは頷いだが、納得はしていなかった。

 それは未だゼルベルンを舐めていたからだ。


 そう、ゼルベルンはグレイバル、ドニーの知るクインテットでは無いのだから。


 ※※※※


 ゼルベルンが先に動く。


「結界魔術《虚無の平原》」

「結界魔術《煉獄》……!!」


 互いの結界魔術が衝突し、そしてゼルベルンの結界が展開された。


「くそっ……!!」

「どうやらわたしの結界魔術を阻止しようと展開したようだが、生憎わたしに分があったようだな」


 ゼルベルンは結界魔術の達人。

 私立タレミア魔術学園の実技場で使われる全ての結界魔術はゼルベルンが構築したもの。

 結界魔術だけで言うなら世界一と言っても過言では無い。


「……おい」

「なんだ?」

「お前、ふざけているのか?」

「何がだ?」

「なぜ、何も影響を被らない結界魔術を作った?」


 本来、結界魔術は自分の優位になるよう適材適所で展開する。

 だが結界魔術《虚無の平原》は他の結界魔術とは違い、相手に影響を及ぼさない。

 

「簡単な話だ。君たち魔族がどれだけ弱いのか確かめたいだけだよ」

「弱い……だと……?」

「念の為にここは少し授業しようか。魔術師には一流、二流、三流の魔術師が存在する。自分より強者と戦う際、三流は相手の実力を見極めず強者に突進する、だからすぐに死ぬ。二流は相手の実力を認めた上ですぐに逃げる。だから、生き延びる魔術師の大半は二流だ。そして、一流は強者相手にその実力見極め、そして下克上できる。一流の魔術師とは即ち英雄のような者のことを指す」

「……何が言いたい?」

「安心しろ。君は三流だ」


 その瞬間、ドニーの堪忍袋の緒が切れて莫大な魔力が流れ出す。


「舐めるなよ……!! 決めた。俺がこの手でお前を殺す……!!」

「やれるものならやってみろ。どうせ君は死ぬ」


 ドニーが先に放つ。


「魔界術《天帝の黒紋(ダークスレイド)》」

「最低位魔術《炎の千槍(サウザンドブレイズ)》」


 複数の漆黒に纏う黒点と燃え盛る火球が同時にぶつかり合う。


 その間両者は微動だにせず、互いの魔術が拮抗していた。

 ここでゼルベルンの詠唱が始まる。


「天より出でたる雷いかずちよ。その広大な力と光で我らを導き給え。

 電光と高熱。

 さあ、打ち砕け。

 高位魔術《天翔の雷(スレイサンダー)》」


 ゼルベルンから放たれたのは高位魔術《天翔の雷(スレイサンダー)》では無く《豪炎の咆哮(マキシマムフレイム)》であった。


 それに対しドニーは《消滅眼》でその魔術を打ち消した。


「どうした? まさか、詠唱失敗したのか?」

「いや、この魔術で失敗などしたことが無いな」

「なに……?」


 するとドニーの頭上から雷が突如として落とされた。

 これは三つの魔術を同時に発動させる三重詠唱(トリプルスペンド)

 高位魔術《豪炎の咆哮(マキシマムフレイム)》を囮にドニーにダメージを与えた。


「まだこの程度じゃないだろ、ドニー・デビルブル。存分にお前の実力を見せてもらおうか」

「ガハッ……! 良いだろう!! 俺の実力を全て引き出し、お前をこの手で確実に葬ってやる……!!」


 戦いは未知の領域へ進む。

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