1ー61 現着
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グレイバルに首を切られた。
いくら最高位魔術《超速再生》を持っていても首を切られては再生できない。
俺の特殊な体質でさえももう、俺の体は治らない。
けど、想いは変わらねえ!!
最後の力を振り絞り、魂諸共振り絞って《時空の魔剣》に魔力を込める!!
どうか、俺の意志を……ゼルベルン様……いや誰でもいい!!
最後に奴にお見舞いしてやるんだ!!
俺の最後の一撃を!!
この時、俺の目の前に少女が現れた。
「わかった。後は任せて。必ず君の想いは届くから」
どこかで聞いたことのある声。
「私の弟子が必ず倒す。彼女も必ず救う。だから――――安心して」
膝枕され心身温まるのかわかる。
そうか。
これが死か。
『アミ―!!』
『なんですか、姫様』
『あれ、やって』
『まったく、しょうがない人ですね』
俺はあなたの笑顔でどれだけ救われたか。
だから、そんな顔をしないでください。
お迎えが早く来ただけなんですから。
そうだ。
最後に、言わなくちゃいけないことがあったんだ。
姫様――――
※※※※※
「あ、りが、とう、ござ……」
アミールの首が転がり、アメリアはアミールと目を合わせた。
微かな声と共に、アミールは息をしなくなった。
「あ、あああ、ああ」
アメリアはあまりの衝撃に過呼吸が進む。
「それにしてもあっけない死に方だな、アミール・タルタロスという人間は。私には絶対に勝てないというのに」
「グレイバル!!」
アメリアがグレイバルに牙を断つ。
「どうしてこんなことするの! 私が目的なら今すぐにでも私を殺せばいいじゃない! アミーまで死ぬ必要ないじゃない!!」
するとグレイバルはアメリアの髪をかき上げて引っ張り答えた。
「何言ってんだ。お前は最後に殺してやる。ただ、お前には絶望して死んでもらおうと思ってな。次、来世でも癒えない傷を負わせることで私たちの悲願が果たされる。お前は黙ってろ。ちゃんと、絶望してから死ね」
「……!!」
大事な人を失おうとアメリアは決して屈することなく睨み続ける。
「……まあいい。奴が死んだことで復国団とやらの統制は厳しいものになるだろう。不安要素はまだあるが、これで我らが大いに優勢になる」
ここで王都中の魔道具「モニター」でグレイバルは現状を話す。
※※※※※
『タレミシア魔術大国を防衛する魔術師達よ、ここで朗報だ!』
グレイバルはアミールの首を取り、「モニター」に移す。
『現在、この国を脅かす者共がこの国を侵略しようとしている。そしてこいつ、主犯格アミール・タルタロスが我が玉座に足を踏み入れたのだ。しかし、安心したまえ諸君! わたしがこの手で奴を葬った! これにより、タレミシア魔術師団よ、反逆者を殲滅せよ! この戦、我らの勝利で幕を閉じようではないか!!』
この時、タレミシア魔術師団の士気は最高潮に昂り、タレミア復国団の大多数は崩れ落ちた。
「そんな――――」
「団――――」
タレミシア魔術師団は慈悲を知らずタレミア復国団の頭を潰した。
「お、お前らぁぁぁあああ!! よくもおおおおおお!!」
あるタレミア復国団の魔術師がタレミシアの魔術師に向けて中位魔術《雷の一閃》を放つ。
タレミシアの魔術師はそれに気づかず、中位魔術が当たる寸前に思いも寄らぬ出来事が発生する。
「は……?」
そのタレミシアの魔術師の頭が殴り潰され、そのまま中位魔術を殴り、放ったタレミアの魔術師に跳ね返されたのだ。
その跳ね返した奴は禍々しい容姿をしており、敵なのは間違いないが、それでもあまりに衝撃的でタレミアの魔術師は動けず、跳ね返った自分の魔術を受けるしか無くなった。
「くっそおおおおおおおおお!!」
その跳ね返った魔術はタレミアの魔術師の頭に直撃しようとしていた。いくら中位魔術とはいえ当たり所が悪ければ死ぬ。
間違いなくもう一人、犠牲者が増える。
そんな時だ。
彼女が現れる。
「……逝ったか、アミール・タルタロス。君の生き様、大義であった。後は任せろ」
タレミアの魔術師の前に現れ、そして跳ね返った魔術を彼女に当たる寸前に破壊された。
「……あなたは、まさか……!!」
「遅くなってすまない。君は国民の保護を。そして、伝えなさい。タレミア復国団は『世界最強の魔術師ゼルベルン・アルファが受け継く』と」
「りょ、了解……!!」
タレミアの魔術師はすぐにその場を離れる。
「出張の時に確認した未知の魔力、そして五百年生きてきた私でさえ見たことの無い容姿を持った種族。君、魔族なの?」
「ゼルベルン・アルファ……。まさか、オマエが来るなんてね。グレイバルの予想より随分速く来たんだ」
「わたしだって成長するんだ。十年前の悲劇はもう繰り返さないよ。それより、やはりグレイバルは魔族とグルだったか」
「そんなことはどうでもいいんだよ! 早くやろう、ゼルベルン・アルファ!!」
奴は頭部から生えた二本の角。肌を黒く染まり上げ、二枚の翼が生えていた。
「いいよ。でも、その前に名前を聞いてもいいかな」
「セントミラル・アルデヒド。良く覚えて死ね!!」
「覚えないよ。だって君、もう死ぬんだから」
セントミラルは苛立ち、ゼルベルンに接近する。
「だったらこれで死ね!! 魔界術《悪魔の極地》!!」
セントミラルはゼルベルンは殴りかかる。だか、その拳をゼルベルンは軽々と手で抑え、さらにはその魔術すら消滅した。
「なっ……!!」
「君はわたしに挑んだ時点で死んでるんだよ」
セントミラルが強引に拳を離そうとするもビクともしない。
そしてゼルベルンはとどめを刺した。
「高位魔術《豪炎の咆哮》」
セントミラルを抑えた拳から高温度、それも最高位魔術以上の威力で放たれたゼルベルンの魔術は最高位魔術《超速再生》さえもさせない速さでセントミラルを一撃で葬った。
「待ってね、アメリア。今、助けに行くから」
新星歴二九九八年六月七日 午前十一時頃
五大魔術師第二位 《波動の賢者》。
ゼルベルン・アルファ 現着。
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