1ー59 時空の魔剣
※※※※※
新星歴二九八八年五月十四日
タレミシア革命後、アミールはフレイに用があり、ハズラーク家の屋敷に来ていた。
「それで、なんの用?」
「単刀直入に言います。あなたに俺の魔剣を作って欲しいです」
フレイはそれを聞いてすぐに理解する。
「でも君、剣術できるの?」
「それはもちろん。ジークから教わってます」
「そう……。だったら最高級品の剣でも買えばいいんじゃないの? 私、良いところ紹介するよ? あと、敬語は辞めて。年上の人に敬語で話されるの、なんかいや」
「……わかった。でも、あなたの魔剣じゃないとダメなんだ」
「なんで?」
アミールは答える。
「あなたの天性魔術《魔剣生成》は魔剣を作る事ができる。そして、その魔剣は基本魔術の域を超えた天性魔術程の魔術さえ付与できるのも。俺はその強力な魔剣が欲しい」
「……なんで? 君でもグレイバルに勝てるんじゃないの?」
「いや、奴はそんな俺みたいな生半可な実力じゃ勝てない。奴の天性魔術、あれは転移じゃない何かだ。それに打ち勝つ魔剣が欲しい」
「ふーん、ならこれはどう?」
すぐにフレイは魔剣を生み出す。
「これは……?」
「これは時間のズレで切れる魔剣だよ」
「時間のズレ?」
「うん。これは振るった剣が過去か未来のどちらかで斬撃として切れるんだよ。だから――――」
※※※※※
「アミー!!」
アメリアは思わず叫ぶ。
「いえ、大丈夫です。姫様、俺はお腹をこじられようと動けます。治りが早いんで」
「でも……」
アミールの貫かれた腹部が一瞬で完治する。
「ほう……。ここ十年で《超速再生》を身に着けたか」
「ああ。お前は仮にもジークを傷みつけるほどの実力はあるからな。そのぐらいの準備はするさ」
「人族に現れる権能を捨て、それでも私に立ち向かう。……面白い。なら、私に見せてみよ。その無駄になる覚悟とやらを……!!」
高位魔術《断崖の業火》がアミールに向かう。
その火球はアミールの魔術よりも速く、その制度はおそらく最高位魔術に匹敵するだろう。
だが、グレイバルは思いもよらない攻撃を受ける。
グレイバルの腹部が両断された。
「……!!」
グレイバルは突然のことで気が一瞬で気が紛れた。
この隙をアミールは逃さない。
「光の剣術“【秘剣】魔術返し”――――!!」
グレイバルの放った魔術が跳ね返され、自身の魔術でグレイバルは被弾する。
これで奴は倒れるだろう。だが、気は抜けない。
「豪快なる炎、莫大な火力は我らを絶望と希望を招く。
開かれる灼熱。焼き尽くす炎光。
その炎で全てを蹴散らせ。
高位魔術《豪炎の咆哮》……!!」
アミールはさらに畳みかける。
詠唱された魔術は基本、見合う魔力量さえあれば必ず発動し、さらに魔力量はさらに消費するが、完璧な発音と文脈の合致すれば一段階上の威力を出すことができる。
故に最高位魔術に匹敵する魔術をグレイバルは受けたのだが――――
「そんな簡単にくたばるとは思っていなかったけど、まさか無傷とはな」
奴はその燃え上がった炎の渦を一瞬で吹き飛ばし、再び現れる。
最高位魔術《超速再生》は最高位魔術の中でも格段に魔力を消費する魔術。
これを取得する魔術師は極端に少なく、元五大魔術師フレイ・ハズラークですら取得していなかった。
「なるほど。時と空間を司る魔剣《時空の魔剣》か。お前が剣術を使用した瞬間、私を切り裂いた魔力が見えた。即ち、その魔剣の斬撃はいずれいつの時間かで私に襲うということか。……面白い。それで、次は何を見せてくれるんだ、アミール・タルタロス?」
先の一撃でアミールの魔剣の特性をグレイバルは理解した。
「でも、お前。この魔剣のことがわかっただけで避けれると思ってんのか?」
「さあな。だが、いずれ適応するだろう。魔力は時間に依存しないのだから」
「……そうか。なら、本物の魔術戦といこうか――――!!」
アミールは《時空の魔剣》を置き、人差し指をグレイバルに向ける。
「《深層の鉄槌》……!!」
アミールの指先に込めた槍状の鉄の塊が高速でグレイバルに襲う。
「《断崖の業火》……!!」
鉄をも溶かす炎の爆撃が鉄の槍と衝突し、蒸発した。
「……!!」
「《虚空の瞑想》……!!」
蒸発し、視界が制限された隙にグレイバルは接近し、拳に魔術を宿した。
そして、その掌でグレイバルはアミールの頭部を収めようとするが、アミールはそれに間一髪で反応。
首を傾げて、さらに高位魔術《天翔の雷》がグレイバルに落とされた。
それにグレイバルは避けれず、命中する。
「くそっ……!」
確かにグレイバルはアミールの魔術を受けたが、それを諸共せずアミールの首をつかんだ。
「《豪炎の咆哮》……!!」
アミールとの距離、ゼロ。
奴の魔術にアミールは受けてしまった。
「……!!」
アメリアは青ざめる。
しかし、アミールも負けてはいない。
「これで、お前もくたば――――!」
被弾し、黒煙が舞う中グレイバルはアミールを見た。
居ない。
「なあ、言ったよな。『魔術戦といこう』って。何近づいてんだが――――まあいい。これでくたばれ」
グレイバルの頭上よりアミールはもう、そこにいた。
「最高位魔術《向日葵》」
そして、グレイバルの頭部をつかみ、魔術を放った。
確実な勝利。
最高位魔術《向日葵》をゼロ距離で生還できる者はいない。たとえ最高位魔術《超速再生》を以てしてもその核ごと破壊され死は免れないものになった。
だがここでグレイバルの天性魔術が既に発動されていたことをアミールは知らない。
星★★★★★、レビュー、感想、ブックマークのほど、よろしくお願いします!!
1つでも多くの評価ポイントがあるだけで作者は泣いて大喜びします!!




