ゴミステーション担当のカラス、ぎゃお。
幼い頃からゴミステーションでカラスを見かけるたびに思っていたことを書いてみました。
*ゴミステーションとは
北海道弁です。ゴミを捨てる場所のことです。
他の地方だと、ゴミ捨て場というのでしょうか...
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から森まちにはたくさんのヒトが住んでいます。
まちに住んでいるヒトは、まいにち決められた時間に決められたモノを出します。
そんな小さなまちの、少しだけ広いゴミステーションにはカラスたちが集まります。
かぁかぁかぁ
ある春の日に、ぷっくりとした黒くてツヤツヤのカラスがゴミステーションにやってきました。
羽を組み、ふふんと仁王立ちしたカラスは、他のところからやってくるカラスをけんせいしています。
「ぎゃお!ようやくこの日がやってきたぞ!」
春の暖かくなる今日は、黒くてツヤツヤした少しだけぷっくりしているカラスにとって大切な日なのです。
「ぎゃお!寒い日に続けていた訓練がおわって、一羽で担当するんだ!」
まちにまった一羽で担当する日なのです。
ぎゃお!と鳴くので仲間たちには『ぎゃお』と呼ばれています。
ゴミステーションに近づいたぎゃおは、いつもと様子が違うと感じながらも、ごみがあるのを確認しました。
(ふむふむ、問題ないな!)
「ぎゃおぎゃおぎゃお!!!」
ぎゃおは、このゴミステーションを使う仲間を呼ぶために鳴きました。
「ぎゃおぎゃおぎゃお!!!ごはんの時間だぞー!!!今朝はいつもより、ふっくらしているぞ!」
ぎゃおの呼びかけに、戸惑いながらも仲間のカラスたちがやってきます。
カラスたちが集まり、ぎゃおに教えられながらゴミステーションのネットを開けて中に入ります。
「ぎゃお???」
ぎゃおは驚きました。
やってきた仲間たちも驚いています。
ヒトが置いていった大きな袋の中には食料があるはずなのに、固いものや柔らかい、不思議なものしかありません。
「ぎゃお、今日で間違いはないのかい??食料がないぞ!」
そうです、ぎゃおはヒトが決めたゴミを捨てる曜日を間違えたのです。
「あ、あれれ?おかしいな、今日のはずなのに、みんなごめんよ」
一羽で担当する初めての日に、ぎゃおは食料の日を間違えて、とても悲しくなりました。
めそめそとなくこともできず、仲間たちに謝りました。
「しょうがないなぁ、たまにあることだし、次の食料の日は間違えないでくれよな」
「そうだぞ、ぎゃお、お前ならできる」
「頼りにしてるぞ」
仲間たちは間違えたぎゃおを励まして飛んでいきました。仲間のカラスたちの優しさに涙が溢れそうです。
よくわからない固いモノや柔らかいモノ、これはカラスの食料にはなりません。少しだけ甘い香りのする柔らかいものもありますが、ゴクンと飲み込むのは難しそうです。
ヒトに気づかれないように、ぎゃおはネットを元に戻して、訓練していたところへ戻っていきました。
訓練していた所にはセンパイのカラスがいるのです。
「センパイ、今日からでしたが間違えました」
「そうか!デビューおめでとう」
「僕は間違えたんですよ?」
「良い経験をしたね」
厳しく指導してくれたセンパイのカラスは怒ることもせず、にっこりと柔らかい笑みを浮かべていました。
「すいませんでした、一番の場所を担当させてくれたのに」
「何言ってんだ、ぎゃおだから、あのゴミステーションを担当できるんだぞ。ハナガタの場所なんだからな!」
「ハナガタ...」
カラスたちの憧れのゴミステーションを担当するのはハナガタのお仕事なのです。
みんなに憧れられるお仕事をセンパイのカラスから引き継いだぎゃおは、力が入りすぎて寝不足が続いて曜日を間違えたのでした。
「ハナガタを担当するにはヒトの生活を覚えなきゃいけないからタイヘンなんだ。できるカラスはそういない。ぎゃおならできる」
「センパイ...!」
センパイのカラスに励まされて、なんだかきゃおは嬉しくなりました。
よぉし、次こそは!!!
その決意を胸に、ぎゃおは担当しているゴミステーションに戻っていきました。
センパイのカラスは飛んでいく頼もしく育った後輩の姿を見て嬉しくなります。
センパイのカラスは、同じように担当した日に間違えていたのです。
仲間のカラスに怒られて悲しくなった思い出が胸にチクリとします。
数日後、あのハナガタのゴミステーションにモノが置かれていきます。
ヒトが動き始めて食料が回収されるまでの数時間が勝負です。
ぎゃおはキョロキョロと周りを見渡し、ヒトがいなくて安全なタイミングかを見計らっています。
いまだ!!
「ぎゃおぎゃおぎゃお!!!」
ぎゃおは、前回と同じように大きな声で鳴き仲間を集めます。
「今日は間違いない!食料があるぞっ!」
仲間たちがやってきて、ゴミステーションのネットを開けて中から美味しそうな食料を集めます。
ネットを開ける担当のカラス、
袋を引っ張り出す担当のカラス、
袋を突く担当のカラス、
食料を運ぶカラス、
ゴミステーションの上で見張りを担当するカラス、
もちろん、ぎゃおも見張りを担当しながら呼びかけを続けます。
ハナガタのゴミステーションから食料を調達するのに担当を分けているのです。
「ぎゃお、やったな!今日は大漁だ!!これで皆んなお腹がいっぱいになる」
持ち出す食料の選別を担当するカラスは嬉しそうです。
褒められたぎゃおは満更でもありません。
「よぉし、みんな!最後はみんなで食料を運んでくれ!ここの片付けは俺がする」
「「「はーい」」」
キリッとした顔でぎゃおはみんなを見送りました。
最後のお片付けをするんです。ぎゃおは散らかったゴミを集めてゴミステーションの近くにまとめて、ヒトが困らないようにしました。
「よぉし、これで片付いたな、よし!無事に終わった!」
お片付けまで出来て、ぎゃおは大満足です。
自然と笑顔になり、仲間たちのところへと急ぎました。
仲間たちのところへ戻ると、その日の一番の食料がぎゃおのために用意されていたのです。
「これ、僕がもらっていいのかい?」
ゴミステーション担当は、最後に戻ってくるので残り物を食べることが多いのです。子供達が食べてから、カラスたちで分け合っているからです。
「もちろんだとも!ぎゃおのデビューだからね!おめでとう!これからも頼んだよ」
「ぎゃおがいないと食料の日がわからないからね」
「僕はネットを担当できるけど、食料の日はわからないからぎゃおが頼りだよ」
とくべつな訓練をしたカラスだけがゴミステーションの食料の日の呼びかけができる、カラスたちの憧れの担当なのです。
「みんなありがとう!僕が引退するまでよろしくね!」
ぎゃおは幼い頃に憧れたゴミステーションの食料の呼びかけ担当になれて幸せです。
センパイの厳しい訓練に耐え抜いたぎゃおはみんなの憧れでもあります。
皆さんの住んでいる町のゴミステーションにも、食料担当のカラスがいるかもしれませんね。
代替わりすると、初日は間違えて仲間のカラスに励まされているかもしれません。
から森まちのとあるカラスたちのお話でした。
お読みいただき、ありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ。:.゜ஐ⋆*
普段は異世界恋愛の小説を書いています。
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