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コント「忘れていい話」

作者: 井の線亭ぽんぽこ

舞台…バーの店内

配役…A=ツッコミ B=マスター(ボケ)


舞台下手にB、舞台上手にAがいる。Aは辛そうな表情をしている。


A「マスター、イヤな事が忘れられるようなカクテル作ってくれる?」


B「かしこまりました。(シェイカーを振る)お客様、何かあったんですか?」


A「それが…いや、初めて入った店でこんなこと言うのもな…」


B「失礼しました。楽しんでいってください」


A「…あのね、これは忘れていい話なんだけど(うつむいて)仕事が上手くいってなくて」


B「ほう(シェイカーを置いてメモを取る)仕事が」


A「俺ね、会社で商品開発のリーダーに抜擢されて、ライバル社と競争してるんだけど」


B「(メモを取る)リーダーに、ほうほう…」


A「ライバルに先越されて、同じような商品を作られちゃって…(顔を上げる)何してんの?」


B「はい、メモを取っております」


A「いや、忘れていいって言ったよね?」


B「すいません。私、記憶力が壊滅的に悪くて、メモを取らないとすぐ忘れてしまうんです。今の話も、メモがないと何の事か分からなくなる有り様で…」


A「そんなに悪いの?」


B「なのでメモを取らせていただきます。どうかお気になさらず」


A「気になるなぁ。ってかカクテル作ってくれない?」


B「失礼しました。(右手にペン、左手にシェーカーを持つ)続けてください」


A「片手!?そんな二刀流でできる?」


B「大丈夫です。ライバルに先を越され…(メモを取り、同じ動きでシェイカーを振る)」


A「シェイカーがメモの動きに持ってかれてるじゃん!」


B「ところでお客様、この店は初めてでしたね?(紙を渡す)こちらに記入をお願いします」


A「何これ?」


B「こちらに住所、氏名、国籍などをご記入ください」


A「ホテルのフロントで書くヤツ!?俺、ここに宿泊に来たんじゃないんだけど」


B「すいません。こうしないとお客様を覚えられないんです。それ書いてる間にカクテル作りますんで」


A「南雲なぐも敬一と…(記入する)ってこれ何の時間?(紙を渡す)ほら」


B「失礼!(スマホで客を撮る)」


A「うわっ!?(ビックリ顔)何すんだよ?」


B「すいません。初めてのお客様は写真も撮らせていただいてるんです。(スマホを見る)すごいビックリ顔ですね」


A「あんな撮り方すりゃ誰だってそうなるよ!」


B「お待たせしました。カクテルです」


A「どんなタイミングだ!なんだこの店、二度と来な…(カクテルを飲む)美味うまっ!?注文通りの味だ。なんでカクテルはちゃんと作れるんだよ?」


B「よろしければ、もう少しお話されてはいかがですか?」


A「…帰るタイミング逃した」


B「(メモを見る)お仕事が大変なんですよね?」


A「もうその話はいいや。それよりもっと大きな悩みがあってさ」


B「ほうほう(パソコンを出す)どんな悩みですか?」


A「何でノートパソコン出してんの!?」


B「お客様の情報をまとめないといけませんので。お話は作業しながら聞きますから、どうぞ続けてください」


A「カクテル作りながら聞くなら分かるけど、データベース作成しながら聞くことある?」


B「で、お悩みというのは?」


A「実は、嫁が浮気してるっぽくて」


B「ほうほう奥様が浮気を(エンターキーをターンッと打つ)」


A「エンターキーをターンッと打つな!パソコンとムードが壊れる」


B「それは大変な…おや?お客様、以前この店に来てますね?」


A「は?来たことないけど」


B「ですがデータに名前が…失礼、南雲敬子様という女性の方でした」


A「誰と間違えてんだよ!?南雲敬子は俺の嫁だろ…嫁!?え、アイツこの店来たの?」


B「はい。3日前にお連れの男性とご来店されてます」


A「お連れ!?お、落ち着け、俺。まだ黒と決まったわけじゃ…」


B「記録では、この後どこのホテルに行くか話していたようです」


A「黒だったー!(頭を抱える)最悪だ!嫁がどこの誰かも分からない男と浮気してたなんて!」


B「お相手は鏑木かぶらぎ様ですね」


A「って分かるのかよ!?…鏑木?まさか、あいつか!?」


B「お知り合いですか?」


A「さっき話した、ライバル社のリーダーだ」


B「と、おっしゃいますと?」


A「忘れんな!メモ見ろ!」


B「(メモを見る)はいはい、商品開発で先を越されたとおっしゃっていた」


A「そういえば、最近嫁が俺の仕事にやたら興味持ってたけど、まさか鏑木に情報を…あ、ありえない!」


B「お客様、同姓同名ということもあります(パソコンを指す)ここに南雲様と鏑木様の写真がありますので、ご確認されては?」


A「そうだな。頼む!別人であってくれ…(恐る恐るパソコンを見る)…嫁とライバルが、ビックリ顔で写ってる…」


B「…どうぞ、この店で一番強いカクテルです」


A「あークソッ!(一気飲みする)イヤな事忘れに来たのに、よけい忘れられなくなったじゃねぇかよ!」


B「イヤな事を忘れられなくなる、と(メモを取る)」


A「メモんな!」


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