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第二十一話 実戦も特訓ですっ②

 半数程シルビナに任されたが、 結局瞬時の【魔素渡し】は習得できなかった。こればっかりは練習の繰り返ししかないだろう。

 難易度を下げて、的当てで練習するとか、換えの訓練方法はいくらでもある。


「まだ着いてくるな」


 距離は離れたが、冒険者達はいまだに俺達の後を着けていた。

 正確には覚えていないが、二、三人減ったんじゃないか?


「向こうのアクションを待ちましょう。目的がなんであれ、尾行に理由はあるはずです」


 まぁ、それはそうだろう。これで面白半分とか、向こうの割に合わな過ぎる。


 会話をしながら、迫る蜂を捌いていく。蛇の次は蜂だ。

 一体一メートルもあるずんぐりとしたフォルムのコイツらは、ビックビーという。

 この世界で最も大きいとされるハチの種だそうだ。ただデカいだけで、直線にしか飛べないし、屈めば簡単に躱せる。魔法にめっぽう弱い。集団でも、並の冒険者なら松明一本で闘える、まさに虫けらだ。


 さっき述べた、難易度を下げてって練習にピッタリな連中である。


「ハチミツでも取りましょうか?」

「……これだけデカイなら、相当な量が取れそうだな」


 形はミツバチに近い。ただ、針は抜けても死なないみたいだ。

 射出された針はまた生えてきている。


 ハチらしく毒針を持つ。まぁ、サイズが俺の腕ほどの大きさだから、その毒が麻痺毒でも当たれば確実に死ぬけど。


 ポイズンスネーク程の硬さはなく、業物じゃない短剣でも簡単に断ち斬れる。

 ギルド査定で一個体Eランク判定を受けた弱い魔物だ。面倒なのはその数。

 巣のサイズで変わるが、ざっと見て三十はいる。群体になると、確かCランクに格上げだったと思う。


「っ!!」


 【身体強化】して振り抜いた左足が、迫るビックビーの横っ面を撃ち抜いて砕く。緑の鮮血が飛び散った。


 手首を回し、虹色のオーラを纏う刃が左から右へ流れる。

 二匹のビックビーの首が飛んだ。

 流れは止めずに、逆袈裟からの斬り上げで真っ二つに裂く。

 更に袈裟斬りで二匹仕留め、左肩を大きく開いて射出された針を躱し、すれ違い様にがっしりと掴み取って投げ返す。


 反応できなかったビックビーは腹に自分の針が刺さって息絶えた。


「あれです」


 シルビナが、銃の形にした右手を軽く振るってビックビーを狙撃しながら高い木の枝を指差す。

 木の幹が重さでしなる程の大きさの蜂の巣があった。

 巣の傍には一際大きなビックビーが居て、ソイツは針を五本ケツに携えている。仲間を殺す俺達を眺め、異様な雰囲気を放っていた。


「クイーンも居ますね。アレを仕留めれば全て死滅します」

「そうなのか? じゃあ仕留めるか」


 ブブブッと不快音を響かせて迫るビックビーを一突きで迎撃し、駆ける。


「クイーンの針は再生も早く、硬いので気を付けてください」

「了解」


 耳に届いた忠告に頷き、地を蹴って跳ぶ。


 巣は十メートル以上高い位置にある。クイーンも当然同じような高さで滞空しているから、そこまで上がらないといけない。

 俺は空を飛ぶ力はないが、そこに辿り着く術を持っている。

 木の幹に足を付けて蹴ることで、更に高く跳ぶ。タン、タン、タンと幹を蹴って巣へ肉薄する。


 薄暗い視界で、獲物を捕らえるのは困難だ。聴覚に意識を集中しても、あちこちにビックビーが居るから、クイーンを捉えるのも難しい。

 ただ、考えていたことがある。

 俺の身体は錬金術で錬成された物だ。素材は高位の魔物。それ故か、五感が動物以上に優れている。


 普段は無意識にセーブしているようで、並の人間と変わらないんだけどな。

 でないと、僅かな音でも拾う耳にあらゆる匂いを嗅ぎとる鼻。飛ぶ極小の羽虫は鮮明に見え、そよぐ風に痛みを伴う敏感な肌。空気の味さえ分かってしまう過敏な舌。

 これらの情報が、俺の脳に小さくないダメージを与えてくる。

 だからセーブしているわけだ。


 ……わけなんだが、意識を向ければセーブを解除することが可能だとシルビナに教えられた。

 今までは、視覚に関しては視界をズームすることしかしたことがなかったんだが、光量をいじるということに着目してみた。


 夜行性の動物の夜目が効くのは瞳孔が大きくなるからだ。逆に明るい場所では光量を抑えるために瞳孔は細くなる。

 それが人間よりも如実だから、暗闇でも僅かな光量を拾って見ることができている。

 俺にもそれができないか? そう思考したわけだ。


 魔素の扱いと違い、これは上手くいった。鮮明な見え方じゃなくて、闇に紫の輪郭が浮かぶような感じだ。

 遠近感が少し掴み辛く、距離を見誤りそうだが、これは次第になれるだろう。


 思考は一瞬だ。【魔素渡し】を試みるための集中が運良く作用して、俺の時間感覚を引き伸ばした結果である。


「せぁっ!!」


 瞬きの間に足を進めてクイーンまで駆け上がり、射出された十に迫る数の毒針を遠近感の狂いで大振りに躱さずを得なかったものの、無事に蜂の女王を両断できた。


「まだまだ甘いか」


 薄闇に浮かぶ虹色のオーラは剣身半ばにも到達していなかった。


 クイーンを切り捨て、ようやく全身がオーラを纏う。

 これでは遅すぎる。瞬間的な【魔素渡し】を習得したいんだ。


「よっと!」


 クイーンの奥にあった巣を切り取り、その裏に隠れていた枝に片腕でぶら下がる。


 幅二メートル、長さ三メートルもある、蜜を滴らせ、大きさの割に小さい八角形の穴ぼこの中には二十センチサイズの白い幼虫がいる。


 キィイキィイと不快な鳴き声を響かせ、幼虫が藻掻く。

 この短剣で全部落とすことは適わず、一メートル幅を落とすに留まった。


 ただ、それはまさに最後の断末魔であったようで、残った巣にいた幼虫も、落ちた巣にいた幼虫も、飛んでいたビックビーでさえ、力なく地面に落ちていく。


 ただ一匹、他の幼虫よりも小さい奴だけが生き残っていた。


「彼女達は魔力線で繋がっています。働き蜂が得た養分をクイーンに送り、幼虫にも均等に分け与える為なのですが、それが一蓮托生の要因になり、魔力線が途切れてしまうと死に至るようになってしまうのです。次期クイーンだけはその難を逃れさせる為に、別個で養分を与えているようで、クイーンを討滅しても生きているのですが」


 風に乗ってシルビナの声が届く。


 魔力なんてものがあるが故の弊害か。

 クイーンが大元になっているから、働き蜂を倒しても死なない。でも、大元が倒れれば軒並み、ってことか。


「アレが次期クイーン? 小さくないか?」


 次期と言うなら、もっと大きいイメージがあるんだが。


「養分の差だという研究論文があります。クイーンによる魔力線経由の養分摂取では、クイーンの魔力も吸収する為に幼虫は大きくなり、次期クイーンは経口摂取なので多分な魔力を得られず、そう大きくはなりません。けれど、成長と共に魔力量は増大し、身体も大きくなっていくので、これで問題ないのだと書かれていました」

「ほーん?」


 シルビナは論文とかの話をよく持ち出す。

 時折、学者に対して毒を吐くが、研究自体は認めているようだ。


「ハチミツゲットですね」


 シルビナが両腕を広げて上へ上げる仕草をすると、ずっしりした重量感を思わせる蜂の巣が浮き上がり、右手はそのままに左手を引く動作をすると、卵やら幼虫やらが引き抜かれていく。

 風魔法なんだが、強い風が吹いているわけでもないから、サイコキネシス地味た超能力感が凄い。


 それを尻目に、「ごめんな」と囁いて短剣を投擲して次期クイーンとやらを仕留める。


 ギィイイッと挙げられた最後の呻きは、ちょっぴり俺に罪悪感を持たせた。


 正に虫けらだが、彼女らも生きる為に必死だ。

 生存競争に俺らが勝った。そういう話でしかないのは分かっているが、残された赤ん坊を殺すと思うと若干の申し訳なさが胸中に生まれる。


「さて、では行きましょうか」


 蜂の巣を丸ごと【異空間収納】に収めると、枝から鉄棒の要領で身体を揺らして、次期クイーンに投げた短剣に飛び、柄を掴んでそのまま落ちる。


「うえっ、マジか」


 次期クイーンが短剣にぶっ刺さったまま着いてきた。若干痙攣しているのが気色悪い。罪悪感は一瞬で、もう感慨もない。

 過ぎ去れば、周囲を飛ぶ鬱陶しい蚊と変わりはなかった。


「食べてみますか?」

「コレをかっ!?」


 とんでもないシルビナの提案に、払い落とした次期クイーンを指差す。


「地球にもあったと思うのですが、蜂の子を食べる文化が」

「いや、あった。でも、俺にはないから」

「ふむ、興味があったのですが。栄養分も豊富だと聞きますし」

「……俺の居ない時にしてくれ」


 ポイズンスネークよりも、ビックビーよりも、シルビナとのこのやり取りが一番疲れたぞ。ホントに。

ってことで2話目でした。もう日曜日じゃないですけど……


誤字脱字、文章の間違い、文脈の矛盾、etc…、は後に直します。

見直しが途中からめっちゃ荒いので、その辺は大目に見てやってください。


完全に忘れてました。めっちゃ漫才見てました。笑い過ぎて頭痛いです。病み上がりに笑い過ぎは気を付けましょう。


細かいのは置いといて、ホントにこれが今年最後です。


ではでは、良いお年を〜

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