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第十四話 初めて見る一面

本日二話目です。

更新できなくなるので、ちょっとぶち込もうかと思いました。

「はぁ……で? その閃光さんが何か?」


 シルビナの声音は完全に白け、その視線も俺が見たことのないような冷たいものだった。


 向けられていない俺やバーテンダーのおっさんが緊張する程のものであるにも関わらず、直に受けている金髪は平然とシルビナを見返し、自信に満ち溢れた笑顔を浮かべた。シルバーのクセに、鈍過ぎないか?


「君をスカウトに来たんだよ。僕が所属するクラン『(たけき)獅子』に」


 クランってなんだ?


「複数のパーティーが徒党を組み作り上げたチームです。パーティーとは、二人から五人までギルドで登録できる冒険者チームです。報酬は等分に分配されてしまいますが、依頼達成効率は格段に上がるでしょう」


 首を傾げた俺に、バーテンダーのおっさんが教えてくれる。

 昨日、初心者丸出しでシルビナに説明を受けていたからな。それで俺が理解できていないと勘づいたのか。


 まぁ、小説とかでよく見るやつだな。一人じゃ困難な冒険も仲間とならって感じのやつ。

 そんな制度がこの世界のギルドにもあるらしい。


「なるほど……」


 視線を俺に向け、更に隣の空いたカウンター席――おばちゃんが血を拭いている――を見てシルビナは納得したように一つ頷く。


「消えなさい」


 そうして述べたのは場が凍るような冷淡な言葉だった。


「は?」


 呆けた面は端正な顔立もあって、際立って間抜けに見えた。


「聞こえませんでしたか? それとも意味が理解できていないのでしょうか? 消え失せろ、そう言ったのですよ、三下」


 おいおい、ホントにシルビナかよ、この女。こんな乱暴な言葉、初めて聞いたぞ。

 ルクセラの使いとやらと入れ代わっていたりしないだろうな?


「何、を……?」


 再び静寂に支配される酒場。金髪の戸惑い震える声と、冒険者達のひそひそ話が嫌に鮮明に聞こえた。


「なんだなんだ? あれってシルバーのシルビナ・ステントだろ? なんかキレてないか?」

「みたいだな。さっきのストーンに絡んでたシルバーの――」

「アルベルト・デレナブでしょ?」

「そうそう、そいつ。そのゴールドが執拗く絡んだみたいだ」


「あのストーン、ゲゼラを伸した奴だよな?」

「まぁ、アイツらは雑魚中の雑魚だけどな」

「ブロンズって言ってもゴールドとかシルバーの腰巾着で、お零れでランク上げてきたからな。パーティー組んで貢献すりゃあいつか上がるって。ま、ブロンズ止まりだけどな」


「あのストーンが()のシルビナ・ステントの腰巾着ってことはないでしょ。ランクはBだけど、実力はSっていうのは有名な話だし……」

「そのシルビナさんが、ただのストーンを連れているわけがないってこと?」

「多分」

「曖昧すぎない?」

「話したことないし。機会もないし」


 好き勝手言ってるなぁ。

 悪い印象はないみたいだけど。……これはシルビナの普段の在り方とか、美貌による支持が大きいのかもな。


 金髪は、自分の容姿でシルビナと釣り合うとか考えてそうだけど、それはない。

 俺も並んで釣り合いが取れるわけではないが、そこはユイで慣れたし、負い目もない。


「木っ端をお兄様に絡ませてあなたが助ける……そんな稚拙なシナリオを描いていましたか? 彼は私の弟子でもあります。ギルド登録前にクワンドの討伐経験もありますし、Bランク相当の実力は有していると理解しています。そう長く我慢の利く方ではありませんし、自分だけならいざ知らず、私のことに言及したのであればその沸点は更に低くなる、それが自惚れではないとそう自負しています。私を勧誘したいのであれば堂々と来なさい。そのような小細工をされて有難いと思うわけもなし、あなた『方』への信頼など、信用など持てるわけもありません。()く失せなさい」

「ぬ、ぐ……っ」


 金髪に言葉を発する機会を与えない。

 新たな一面を見た。俺はそんな印象なんだが、どうも周囲は違うらしい。

 金髪に対して同情的というか、呆れのような、「それ見たことか」感が漂っているように思う。


 と言うかだ。洞察力がありすぎじゃないか? 俺の反応と、周囲に残った揉め事の痕跡で大方の事情を察したぞ。


「お兄様との晩酌に水を差されました。今日はもう帰ります」


 エールを一気に飲み干したシルビナは立ち上がり、行きましょうとだけ言うとギルドの出入口へ向かう。

 金髪を横切るが、下を向いた奴は反応を示さない。


 ごちそうさまと告げて、シルビナに貰ったお小遣いの一部をカウンターに置いて後を追う。


「……さな……い」


 金髪を横切る瞬間、ポソポソと蚊の鳴くような声が聞こえた。

「許さない」そう言ったように思う。


 面倒臭いことになりそうだと、そう予感させるには十分な陰湿な声音であった。

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