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第三十九話 クワンド⑦

 (はや)く、疾く、疾く。何よりも疾く振るう。

 音を置き去りにする勢いを心掛け、視界に移るもの全て、接近する音も全て、羽虫も、木の葉の一片も逃さず斬り裂く。

 毒枝もこれで細切れだっ!!


 ……と、イメージしてみる。やってない。十三度目で思案しているところだ。

 浜辺に出る手前の木の上で、クワンドを見据える。

 一応中までは侵入できた。枝がくねって足場が多く、落ちる心配はなかったが、やっぱり滅紫色の斑点が難題だった。


 四方八方から迫る毒枝に、為す術もなく全身を貫かれること十三度目。現実逃避もしたくなる。

 魔法でも使えれば違ってくるんだろうけどな。それはないものねだりに過ぎず、今は現状できることで乗り越えなければならない。


 同じ行動を取れば毒枝も前回と同じ軌道を辿って襲ってくる。

 それを避けていけば一応進むことができる。一歩二歩程度の微々たるもので、中へ行くほどに攻撃は激しくなる。


 ようやく発見した規則性、斑点の表面がぽこりと泡立つと毒枝が飛び出す合図だ。

 それを念頭に置いて、さらに邁進にすることにする。


 ………………

 …………

 ……


 十九度目。キャパオーバーだ。余りにも数が多く、捌き切れなかった。

 ただ、前回あることに気付いた。クワンドの内部――と呼んでいいかは微妙だが――は枝や幹がビッシリで足場も多かった。その分斑点の数も尋常ではなかった。

 上へ逃げれば逃げるほど斑点の数が増えた印象で、実際に毒枝の数も多くなっていた。

 そこで足場にしていた枝を切って下へ逃げたんだが、斑点の数が目に見えて少なくなっていた。下へ行くほどに数が減少していることに気付いた。


 そこが突破口となるだろう。問題は根っ子だ。下へ進むと海面下で蠢く根っ子が見えてくる。

 あまり下に降りると、根っ子と毒枝による挟み撃ちが完成してしまう。それは避けたい。


「はぁ……魔法が使えればなぁ」


 ぼやくのはやはりないものねだりに過ぎない魔法の件。

 【身体強化】や【魔力渡し】が使えるだけでも、相当動きが違ってくるはずだ。選択の幅も増える。


 くどいが、ないものねだりだ。それだけ、魔法が使えたらな、と思っているという話である。


「……よしっ」


 意気込み、海に飛び込む。ここからの展開は一度目からの繰り返しだ。

 同じルートを辿り、まったく同じ挙動で躱し、同じ軌道で直剣で迎撃する。

 違うのはここからだ。


「――っ!」


 アーチ状になった根っ子の天頂まで駆け上がり、直剣を背負い直してそこから飛び降りる。

 飛び込み選手のように両手を頭上で重ねて、身体を爪先まで真っ直ぐにする。

 上や横から迫る根っ子は気に止めない。気を配るべきなのは、海面から飛び出てくるやつだ。


 互いに傷つけ合わないようにか、螺旋を描くように六本の根っ子が渦を巻いて上ってくる。

 身体に捻りを加えて、数ミリの開きで躱す。渦の真ん中を通り抜けた。


 ドポンと飛沫を上げて海面を貫く。

 最初に見た時よりも近い距離でクワンドの下半分と初対面した。無数に蠢く根っ子が海底を抉る。凄まじい砂埃と、激しい海流を起こして、ここだけ嵐に晒されているようだった。

 両手足で何とか身体のバランスを保つ。


「――っ」


 ダメだ。それだと迫る根っ子に対応できない。

 ここは体勢の維持に加えて海流に身を任せるべきだ。変に逆らうと、身動きが取れなくなる。

 でも、流されるだけっていうのも良くない。それだと近付くことはできない。


 剣を抜き、脇を通り過ぎた根っ子にぶっ刺す。

 根っ子は一度伸びると、追尾してこない。こうして見て分かったのは、必ず何十本かの根っ子は地中にある。

 一度出た根っ子と交代して引き抜かれ、また地中に戻る。おそらく、クワンドの根っ子は空気に晒されると弱いんだろう。


 戻る根っ子から剣を引き抜く。身体は流されるままクワンドの下へと入れた。

 ここも安全ではない。びっしりと太い根が絶え間なく動いて、俺を圧殺しようと押し寄せてくる。

 貫くだけが芸ではないらしい。


「――っ」


 潜って三分は経った。これ以上は息が持たない。早く上がらなければ……


 そんな焦りを覚えて上を目指した俺だったが……


「――っ!?」


 足が根っ子に挟まれて身動きが取れなくなり……やがて息が……意識が暗く………………

 …………

 ……


 方向性は間違っていないはずだ。焦りは多く酸素を消費させる。冷静にいかないと……

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