表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/93

第三十六話 クワンド④

ストックが増えたので本日二話目

 翌朝、朝日で目が覚めた。潮風の影響か、髪の毛がバシバシしてる。触るとごわごわした手触りがなんとも不快だ。


「は、ふぅ。う、んんっ」


 枝の上で寝た所為で、身体が凝り固まっている。

 少し捻るだけで、ぴきぴき、ぱきぱき、と鳴った。


「はぁ、身体拭こうかな」


 独り言ちて立ち上がる。


「あれ、毛布は?」


 今気が付いた。被っていた毛布がない。

 辺りを見回し、視線を下にやれば、数段下の枝に引っ掛かっていた。ついでに、包みと直剣も。

 寝る前にベッド代わりにした枝に引っ掛けていたんだが、寝相で落としたらしい。


「中身は……無事だな」


 ひょいひょいと降りて包みの中身を確認。携帯食料残り二日分。ドラゴンの肝。クセーフスの乳が入った筒もおっけー。

 毛布をパンと払うと、たちまち二十センチ四方サイズに。マジックのような早業だ。

 包みの中に仕舞い、直剣と一緒に持って枝から飛び降りる。

 高さ三メートルからの着地を膝をバネにして難なく成功させる。

 実に様になってきたんじゃないかと、誰にでもなくドヤっと胸を張ってみた。


「……川はこっちだったな」


 恥ずかしくなって、目的地へ足を進めることにした。


 ◇


 髪を洗い、身体を濡らしたタオルで吹き、ついでに朝食も済ませてまた元の場所に戻ってきた。


「あれ、島が動いてる?」


 昨日発見した影をもう一度観察してみようと目を向けると、どうも記憶通りの場所にはないような気がする。


 島と言うよりも、木々が群生して海の底から幹が伸びているようだ。

 沖縄にあるマングローブみたいだな。テレビで見たが、なんとも不思議な光景だった。

 ここから見えるあれも、そんな感じに見える。海面から出ている部分はさほど高くはないようだ。俺の乗っている木の半分程度か。


 やっぱり様子が変だ。

 観察していれば、なんとなく動いているように見えた。

 大きく波を立てているわけではないし、枝葉を激しく揺らしているわけでもない。

 微妙に移動しているように見えるんだけど。気の所為かな? ってレベルの移動。距離もあるから、どうにも判断がつかない。


「あ」


 今、魚が跳ねた。

 海上にとび出た魚はマングローブの傍を跳ね……何かに引きずり込まれた。

 触手のように見えたが……


「いや、まさかな」


 ある憶測が浮かんだ。もしそうなら、厄介だな。


 今度は前のめりに、目に意識を向けて観察してみる。なんとなく左目を瞑って、右目だけで見てみた。焦点を明確にするために右手で筒を作った。

 するとどうだろう。遠くて見え難かったマングローブがクリアに見えて、望遠鏡のように視界が近付いた。これも意識したからか。


 今、俺は視覚をいかんなく発揮できている。


「おっ、まさかとは思ったけど、これはビンゴか?」


 十数分、その状態を維持して観察を続けていると、また魚が跳ねた。

 ソイツを海中から飛び出した明るい茶色の触手――ではなく、根っ子だと思われる――がエラ辺りを刺し貫いて海中へ引きずり込んだ。


 多分あれがクワンドだ。根っ子で串刺しにして養分を吸うとか、そんな獲物の取り方をしているんだろうな。


 ゴーレム・タイプの魔物には弱点がある。

 コア、或いは魔核と呼ばれる魔力結晶に、周囲の魔力伝導率が高い物が吸い寄せられ、凝固したものがゴーレム・タイプである。

 故に、そのコア、或いは魔核を破壊すれば、魔物は体構成を保てなくなり、崩れるという仕組みだ。


 厄介なのはコアの位置だな。シルビナ曰く、魔物によって位置は異なるから、確実にここって目星が付けられないんだそうだ。

 まぁ、基本的に外界よりも遠いか、より頑強な場所に隠されているそうなんだが、それも確実性に欠けるんだそうで、過信しすぎないようにと言われている。


「さて、手をこまねいていても何も起きない。……行くか」


 覚悟は決めた。後は、遂行するだけだ。


 幹に足をつけて蹴り付ける。

 ここから砂浜までそう遠くはない。七本の木々を経由して森を抜け出す。

 前転の要領で受身を取り、勢いを殺さないまま駆け出す。

 海に到達する前に包みを解いて浜に捨て、迫る波に飛び込んだ。

 ドラゴンの肝が入った布袋だけは腰に縛り付けた。どんな魚類系の魔物に襲われるか分からないからな。中身がこぼれないようにしっかり縛っておかないと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ