第二十二話 コムラット鉱石採取⑤
章とサブタイ付けてみました。
深く考えるのは苦手なんで、概要を抜き出した程度のものですけど。
ツルハシを振り上げて目の前の壁面に振り下ろす。
足元にパラパラと土と石が転がった。
光源はシルビナが残していった光だ。
「はぁっ……っ!」
素振りの要領でもう一度振るう。また土と石が転がる。コムラット鉱石はまだ掘れていない。
欠片が転がっていたから、すぐに採掘できると思ったんだけどな。そう甘くはないらしい。
「ふぅ……っ!」
息を整えてもう一度。散らばった土と石が、風の魔力で外に流されていく。
出入口に待機しているシルビナが、洞窟内に風を送って引き出しているんだ。
「まだ出ませんか?」
風魔法でシルビナの声が届けられる。
「ああ、まだそれっぽいのは出ない。そっちは?」
「…………こちらも同様ですね。希少なものは幾つか見掛けましたが、コムラット鉱石はまだ」
土と石を掻き出すと同時に、シルビナは精査も行ってくれている。目利きのできない俺では、見落とす可能性も十二分に有り得るからな。
「ふっ……っ!」
五十回以上はツルハシを振るっているが、それらしきものは未だに出てこない。
「んっ……っ!」
握力が弱まってきたのか、採れる石の量も減っている気がする。
それからも、何度も振り続けるが一向にコムラット鉱石が出る気配はなく、数メートルほど洞窟の奥行きが広まった頃、振り上げたツルハシが手をすっぽ抜けて後方に飛んでいた。
「あ……あー」
カランカランと虚しくツルハシの転がる音が反響する。
「悪い、シルビナ。もう限界っぽい」
「……」
溜め息が届く。言外に、だらしないと言われているようだ。
「まぁ、良いでしょう。欲しい大きさは採れていますから」
「は?」
いや。いやいや。何て? “欲しい大きさ”って言ったか?
「シィィルゥゥビィィナァッ!!」
俺は疲れも忘れて来た道を駆け戻る。シルビナが何をしたのか理解したからだ。
彼女は“鍛錬にもなる”と言っていた。まさにそういうことだろう。
「どうかしましたか、お兄様?」
洞窟を出る。急激な光量の増加に目が眩んだが、それどころではない。
「どうか、じゃないっ。またやったなっ!」
ふわふわと浮くシルビナを指差す。俺の反応を読んでの行動だろう。
またしても、だ。
シルビナはコムラット鉱石が十二分なサイズが手に入っていたことを伝えず、鍛錬にちょうど良いと、そのままツルハシを振るわせ続けていたんだ。
この二週間の修行生活で、俺は幾度となくシルビナの唐突鍛錬に付き合わされることになった。
唐突鍛錬とは、彼女が思いついたその瞬間に開始される、ドッキリ鍛錬である。
幾つか上げるなら、シルビナに指示されて登った木にバカデカい蜂の巣があって、一メートル近い大きさのミツバチに追いかけ回された。
俺はこれで二度死んだ。
一度目は腹にデッカい針を刺されて。二度目は頭を食われて死んだ。
三度目で湖に飛び込んで事なきを得た。
崩落する大地。そこは妙に地盤の弱い場所で、体重を掛けただけで地面が崩落した。
深さ五メートルと、打ち所が悪ければ死ぬ程度の高さではあったが、俺は崩落した地面の下敷きになって一度死んだ。
崩落には猶予があって、全力疾走すれば抜けられた。ただ、その前にやけに疲れさせるなぁ、と思ったんだ。
十キロほどの重しを括りつけた足で不安定な足場を走らされ、木を五百回蹴らされ、足に負担を掛けまくった後のそれだった。
もつらせながら走り切ったよ。
「良い鍛錬になったでしょう?」
「むっ、く……まぁ、死ぬよりはマシだけど」
“鍛錬”。この言葉は俺を無理くり納得させられる魔法の言葉だ。
強くならなければならない。身体を鍛え、魔素を操り、敵を討ち滅ぼす。
絶対に必要なことだ。
「今日は帰りましょう、お兄様」
くすりと失笑して、シルビナは俺の隣に降りてきて腕を絡ませる。
柔らかい感触が、上腕三頭筋を包む。
「……分かった」
視線を、シルビナとは逆方向の上空に向けて応じた。




