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第二十話 コムラット鉱石採取③

例の如くストックが貯まったので、本日二話目。


ドーン。

 胡座をかいて座るガンジンは嬉しそうに目を細めた。

 えらく親しそうだな。


「元気そうでなによりだ。憑き物も落ちたようだしな」

「ご心配をお掛けしました」


 シルビナが下腹部に両手を重ねるように添えて、深く腰を折った。

 相当な感謝の意でもあるのか、誠意と申し訳なさが、彼女の声音に多分に含まれているように思う。


「その者がシルビナ様の兄か?」

「ええ。タカシ フジサダと申します。お兄様、彼はガンジン族族長のバデッド殿です」


 欧米か。と言いたくなる紹介のされ方だ。どうやらこの世界ではファーストネームが先に来るらしい。

 シルビナは欧州とかの出っぽいから違和感はなかったけど、自分がそう紹介されると、なんとも言えないむず痒さがあるな。


「ふむ……」


 ガリゴリと岩が擦り合わさるような音を鳴らせて、ガンジン族族長――バデッドが立ち上がる。


 ……やっぱりデカい。五メートルはある。

 顔は俺の二倍近い大きさだ。それがずいっと寄せられて、少し身をのけ反らせてしまった。

 目、鼻、口の大きさも規格外で、耳は見当たらない。彼らに頭髪はなく、ゴツゴツした地肌が露出している。


 光源はシルビナの指先に点る魔法の光だけだったから分からなかったが、バデッドの額には紫晶石が嵌っている。


「シルビナ様の兄にしては弱いな」


 何を見たのか、俺に対する彼の感想がそれだ。


「それは比べる相手を間違ってるな」


 まぁ、否定をしても意味はないし、比べる相手を、と嘯いたところで、そもそも俺が勝てる相手がいるのか、と思う程度にはこの世界の危険性を理解したつもりでいる。


「それもそうだっ」


 俺から顔を離してがっはっはっはっと大口を開けて笑うバデッド。

 洞窟に先はないようで、音が奥にまで響かずに近くで反響して耳が痛い。


 暫く、バデッドの笑い声が反響してイィィンと耳鳴りのような余韻が引いた後、彼は顎に手をやり、まるで髭を摩るように撫でた。


「シルビナ様、何用で来た? 食器の類ではないだろう?」

「はい。コムラット鉱石の採掘の許可が欲しいのです」


 俺が小指でほじりほじりと耳鳴りを解消しようと試みている間に、シルビナがバデッドに交渉を始めた。


「ああ、構わない。コムラットは食えないからな」

「ん? 食う?」


 ようやく耳がまともに聞こえ始めた頃、そんな言葉がするりと入った。


「ええ。彼らの主食は石なので、岩山にある洞穴は彼らの食事処なのです。それぞれ好みがあるそうで、使い分けをしているそうですよ?」


 よく見れば、バデッドの足元に、鈍色の光沢がある石が転がっている。

 つまり、その石が彼の好物ってことだろう。今は食事中だったようだ。


「族長殿、食事中失礼しました」

「構わん構わん。シルビナ様ならば、いつ何時来られても大歓迎だ。タカシ、お前もな」


 シルビナは様付けで、兄の俺は呼び捨てか。俺はあくまで兄であって、敬意の対象外ってことか。スッキリキッパリした性格らしいな。


「機会があればな」

「うむっ」


 どかりとまた胡座をかいて座るバデッドは、鈍色の石を拾うと口に放り込んだ。

 俺の拳大の石がガリガリと砕け、ゴクンと飲み込まれる。


 その音を背景に、俺達は洞窟を出た。

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