表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/93

第十八話 コムラット鉱石採取①

 登れば当然降りなければならない。普段ならそれも鍛錬の一環なんだが、今日は別に用事があるってことで、俺は今シルビナに手を繋がれて空を飛んでいた。


「おぉっ、落ちる経験はあるが、飛ぶってのはなんとも、まぁ、不思議な体験だなっ」


 興奮冷めやらぬままに、声も弾む。

 雄大な緑の絨毯を見下ろして俺達は空を飛ぶ。風は強く感じない。シルビナの風魔法で流しているらしい。


「歩いても良かったのですが、二日は掛かりますからね。飛んだ方が楽で良いのです」


 少し彼女より後方にいる俺には、その表情は見えない。声音からして、得意気な顔なのはなんとなく察せられた。


 しかし、魔法とは本当に便利だな。これだと、確かに科学技術の進歩は見込めないだろうな。ファンタジー小説にはよくある話だ。


「見えました。あそこです」


 自然の神秘で出来た塔から見えていた山を超えた頃、シルビナが声を掛けてくる。

 彼女の指さす先には、地肌を剥き出しにした岩山が見える。

 その麓付近には幾つもの洞窟が見えていて、森戸の境目辺りに丸太の杭が連なってで出来たバリケードのような壁が設置されていた。


「ああして防壁を築いて、魔物の侵入を防ぐんです」

「ふぅん? 大変なんだな」

「ええ。地球のヒエラルキーの頂点は人でしょう。けれど……」


 この世界ではその限りではない、と。

 まぁ、それはそうだろうな。あんな化け物共が闊歩する大陸だ。バリケードなしに生活なんて難しいんだろう。


 二週間前に遭遇した魔物を思い出して、ブルっと身震いする。


「お兄様?」

「お、ん? なんだ?」

「降りますよ?」


 集落に着く前に降りるらしく、シルビナの視線の先は深い森の中だった。


「恐らく、向こうはこちらを確認したと思うので。空からの無闇な侵入は敵対行動と同義です。礼節はできるだけ取るのが世術というものです」

「分かった」


 目測で一キロメートルほど離れた場所に降り立つ。


「交流はあるのか?」

「彼らとですか?」

「ああ」


 ただ黙々と歩くのも退屈なので、浮かんだ疑問をぶつけてみる。


「ええ、ありますよ」

「種族とかってどうなるんだ?」

「ガンジン族ですね。分かりやすく言うなら、岩の人、となるでしょうか」

「岩の人……なるほど、ガンジン(岩人)か」


 姿形はそのままなんだろうな。

 想像するに、ファンタ○ティック・フォーの、オレンジでゴツゴツした超人的な感じか。


「穏やかな種ですよ。温厚で動植物を愛でる気質の者が多いです。戦士は力強く頑強。先の大戦でも、彼らには苦戦を強いられました」

「戦ったのかっ?」


 大戦ってことは、殺しあった仲だろ。それが“ひなた”なのか“シルビナ”なのかは分からんが、交流を持てるってのはまたなんとも……俺の分からない世界だな。


「彼らではありませんから」

「うん? それはどういう……?」

「魔族にも部族があるのです。同じ種族であっても、それぞれの長を仰ぎ、従う者達がいます」


 地球にもいるような、部族別民族のようなものだろうか。


「この先に住む彼らは、私が戦った者達とは違う部族なのですよ」


 会話の途中、草木を掻き分けて迫り来る、二メートルを超える狼の魔物の姿があったが、シルビナが瞬時に左右の掌で生成した二つの風の渦を飛ばし、削り斬られて絶命した。


 クロスに交差した風の渦は、ウウゥゥンとF1カーのような唸り声を上げて左右に別れ、大きく旋回する。

 どうも魔物は群れだったようで、俺達をいつの間にか包囲していた同種の魔物を削り斬った。

 最後に合流する後方で互いにぶつかり合い、ボヒュウと規模の小さい暴風を起こして相殺した。俺達に届く頃には、暴風はそよ風にまで弱まっていた。


「魔族の集落には食料があったりしますからね。この大陸で比較的弱者に位置するジャットウルフなどは、集落の傍で虎視眈々と襲撃の機会を伺っていたりするんですよ」


「勿論、彼らは弱者なりに強者に歯向かう術を持っていますが、彼らにはなかなか」とシルビナは続けて、血の香るようになった一帯を抜けていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ