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第九話 説明⑥

ストックが溜まってきたので本日二話目

「実はお兄様の身体を構成する素材の一つに、ドラゴンの心臓を使っております」

「……ドラッ!? マ、マジか!?」

「はい、大マジです」


 音符が付きそうな弾んだ笑顔で返された。


「核となる心臓をそのまま使用していますので、通常の人間には有毒な魔素にも耐えられるのです」

「は、はは」


 乾いた笑いしか出ない。

 ドラゴンといえば、どの作品でも最強種の一角として登場する生態系の頂きに近い存在だ。

 それをサラッと素材と言い切ったよ、この妹様は。


「勿論、そのままのサイズでは心臓に手足を付けたお兄様になってしまいますので、私の持てる技術を駆使して、圧縮し、なんとか拳サイズにしました」


 安心してくださいと、言外に告げるその笑顔になんて返せばいい!? 一瞬想像したんだけど……っ!?

 外面で「そ、それは頑張ったな?」と引き攣る口元を感じつつ笑顔を浮かべ、内面でキャラ崩壊を起こす俺に、シルビナは気づかないまま説明を続ける。


 もうお腹いっぱいなんだが……まだ続くのか?


「他にも、ヘルキャットの目玉や、スカル・リザードの骨、メタルロックの皮膚などを使い――」

「いや、いい。あ、後で聞く。今はマソどうこうって話だろ?」

「そうですね。まだ数十の素材の話が残っていますが、それはまた夜にでもしましょうか」


 数十……ヘルキャットやらスカル・リザードやらメタルロックやら、想像もつかないが、物々しさだけは伝わる魔物の列挙に耐えかねて、話題修正を図る。

 逸れていることは分かっていたのか、シルビナもすんなりと話題修正に乗っかってくれた。


 夜に続編があるらしいが、忘れてくれることを願おう。


「それでですね。魔力に変換する器官も再現できなかったのです」

「うーん? それはどういう?」

「魔力は多すぎると有毒である、と申しました」

「ああ」

「それは魔素も同じです。いえ、魔素こそ人体には有害だとお考え下さい」

「はぁ? でも俺はそれを吸収するんだろ? お前だって無意識に取り込んでるって言ってたし」


 話がややこしくなってきたぞ。頭の中がしっちゃかめっちゃかだ。


「はい。なので、私を含めたその他大勢には、魔素を魔力に変換する器官があるのです。と言っても、勇者であった“私達”には後付けの器官ですが」


 つまり、召喚された彼ら彼女らは、召喚時にその魔素変換器官が備わったってことだろうか?


 あー、思考は嫌いじゃないが、こうも無知識なことを詰め込むと、考えることを止めたくなる。凄く億劫だぞ、これは。


「俺にそれがないのは、まともな召喚の義で呼んだわけではないから、か」

「はい。検証した訳ではありません。前例も確認できていません。憶測の域を出ませんが、恐らく」

「……なるほど」


 一瞬の沈黙。ずずっとクセーフスの乳を啜る音が二つ響いた。


「簡単にまとめますと、ドラゴンの心臓を使ったので、魔素を多く取り込んでも影響はないだろうという話です」

「あれだけ長ったらしい説明をサラッと言ったな?」

「私はお兄様の疑問にお答えしているのです」


 あ? そうか。そこが端を発してるんだっけか。


「分かった。悪い、文句を言える立場じゃなかったな。続けてくれ」


 彼女の知識の範囲で、俺に分かるように説明してくれているんだ。ブー垂れてはいられないな。


「分かれば良いのです」


 うん、今の発言とドヤった顔にはイラッときた。


「……それで?」

「はい。私達には何故有毒なのか? ですが。強過ぎるからですね」

「強過ぎる? それは薬も過ぎれば、って話か?」

「まさに、です。魔素とは、単純に膨大なエネルギーの塊だとお考え下さい。それは一定の容量が決まった器には入り切らないものです」


 注ぎ過ぎれば水は溢れ出す、そういうニュアンスか。


「なので、膨大なエネルギーから必要な分を抽出するわけですが、それも多過ぎれば人体に悪影響が出るのです」

「あー、それが変換量とか言ってたやつか」

「はい」


 うーむ、なんとなーく話の流れが読めてきたぞ。


「つまり、変換器官、マソ吸収器官を持たない俺のメリットとは、その制限がないこと。努力次第で、多くのマソを取り込めて、魔力よりも強力なマソを幾らでも使える。って感じか? で、付け加えるなら、俺が蓄えられるマソの量も無制限に増やせられる、と? もう一つ分かった。マソは魔力の桁違いの量だな。メートルやキロメートル、グラムやキログラムのように、魔力の何十倍、何百倍もの集積体がマソ――魔力の素ってわけか」

「ご明察です、お兄様。魔素と魔力の違いも概ね正解です」


 人差し指の第二関節でグリグリと蟀谷を押さえて、纏めた考えを伝える。

 それはどうやら正解だったらしく、胸の前でぽふっと柏手を打つ。

 概ねってことは微細な違いはあるようだけども……


 幾つもの検証と実施を重ねて辿り着いたんだろうな。

 それは、俺がユイを救うために辿った地道さと似ているのかもしれない。


「さて、食事を済ませてしまいましょう。まずは魔素を吸収する練習から始めてもらいますので、しっかりクセーフスの乳を飲んで、魔力を蓄えておいてくださいね?」

「了解」


 少し……いや、かなり、かな。ワクワクと弾む鼓動を感じながら、魔法の一端に触れられるようで、期待半分、不安半分のまま頷き、食事後に思いを馳せた。

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