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ピンクドラゴン、東へ飛ぶ    作者: らまくな
6/8

第六話 リリアン姫の兄、アニトニオ、王立寄宿学校より帰宅す

こんな道端の石を拾って、地面に書きなぐったようなひどい話を読んだり、ブクまったりする方達、感謝です!! 慈善事業に等しいです。とおとひ・・・・

今回は制作に一時間三十分ちょいですね。

頭からっぽの我ながらひでえ話です・・・・・・

エルモア領主の息子、アニトニオの帰路の足どりは重かった。

王立寄宿学校に通う彼は、月に一度の休息日に家に戻るのがなにより苦手だった。

寄宿学校の生徒はほぼ貴族ばかりだ。

親の領主たちの以前出した学校への希望により、子供達は実家に戻ることが義務づけられている。

なので休息日の早朝には、各屋敷から馬車が迎えにやってくる。


寄宿学校の森の洞窟深く隠れ、さがしにきた御者の目を逃れようとしたアニトニオは、煙にいぶされ、咳き込みながらとびだしてきたところを、御者と馬丁にあっさり捕獲された。

彼らにすれば何十回と繰り返してきた恒例行事であり、もうすっかり慣れっこなのであった。


縄でぐるぐる巻きにされ、アニトニオは荷物ごと馬車に放りこまれた。


「おまえら!!俺は次期当主だぞ!!待遇改善を断固要求する!!」


暴れるアニトニオに、召使たちは哀しい目で答えた。


「・・・・・無礼は承知のうえ。アニトニオさまをお連れしないと、リリアン姫さまが我らを折檻するのです。やりたくてやっているのではありません。お許しを」


「リ、リ、リリアンがなんだあっ!!・・・・・・お、俺はリリアンの兄だ!!嫡子だぞ!!なんとでもしてやる!!泥船に乗った気でまかせておけ!!」


勇ましい口調とは裏腹に、アニトニオは真っ青であり、身体はがたがた震えていた。

馬車の振動のせいではない。横暴な妹への恐怖のためだ。


「・・・・・泥船ではなく、大船でしたらよかったのですが。アニトニオさま、申し上げづらいのですが、我ら家族をリリアンさまに人質にされております。アニトニオ様をお連れしないと、家族の命がないのです」


馬を操りながら、御者はわっと泣き崩れ、さすがにアニトニオも従わざるをえなかった。


それでも悪あがきでおずおずと馬車の天窓をあけ、身をのりだすと、御者の後ろ頭に語りかける。


「・・・・・いいか。もっとゆっくり馬を進めるんだ。出来たら深夜に家に着くようにな」


アニトニオは御者に命令した。いや、泣いて頼んだ。

それぐらい彼は家に帰りたくなかった。深夜につけば、「奴」はきっといぎたなく高鼾だ。

そして俺は、「奴」が目覚める前の早朝に、家を出立し、学校に戻るのだ。

そうアニトニオは決意していた。

奴の腹はわかっている。

父君母君が留守のあいだに溜まりに溜まった決裁仕事を、全部自分に押しつける気なのだ。

アニトニオは、一日ぎりぎりでそれを成せる自分の優秀さを恨み、歯軋りした。

もちろん領主の父母は、城代と執事さえいれば、きっちり行政仕事はまわるようにしていた。


それを無茶苦茶にするのは、あのバカでバカでバカの呪われた妹だ。

あいつは我儘しほうだいで、家来のトップの城代や執事もふりまわし、召使いすべてを私用に使い、エルモア城を機能停止させてしまうのだ。

きっと今回の休暇も、俺をスタンプマシーンとして使い潰す気だ。

そうそう思い通りになってたまるかよっ!!


憤慨し、ばしばしと馬車の客室の壁を蹴飛ばすアニトニオに、御者と客室の後ろステップに立ち乗りした馬丁は涙目を向けた。


「・・・・・・あきらめてください。馬車は定刻どおりにお屋敷につきます。我らはリリアン姫さまに逆らえないのです。リリアン姫さまは、一刻遅れるごとに我らの家族を一人づつ釜ゆでにすると・・・・・・」


「はあっ!?」


アニトニオは口をあんぐりした。幾らなんでもやりすぎだ。


「・・・・・私達の家族だけでなく、アニトニオ様のかわいがっているカナリヤ達も、遅れた場合、一羽ずつ分刻みで焼いて食べると・・・・・・」


「あ、悪魔か。あいつは・・・・・!! わかった。しかたない。馬車を飛ばせ」


その言葉を待ちかねたように、馬車はものすごいスピードで動きだした。

あまりの速度に、街道をゆきかう乗合馬車のあちこちから、なにごとかと乗客が首を出す。

まるで古代ローマの戦車競走のような凄まじさだった。


多少お調子ものでも、根は気のいい坊ちゃんのアニトニオは回避行動をあきらめ、馬車の椅子の背もたれに疲れ果てて身を沈めた。召使たちの家族と大好きなカナリヤ達の命がかかっている。ここは臥薪嘗胆で耐えるしかない。


・・・・・・この恨み、はらさでおくべきか・・・・!!


しかし、燃え盛る怨みの炎も、あの化物みたいなリリアン姫の姿を思い起こすと、たちまちひょろひょろと鎮火してしまった。リリアン姫は百倍返しを座右の銘にしている。

右の頬をうたれたら、相手の村ごと焼き払う危険人物だ。

アニトニオの手に負える相手ではない。


「・・・・・なあ、世界にはドラゴンハンターという竜殺しを生業にしている奴らがいるが、彼らをだまくらかして、我が城にモンスターが住みついてしまったと嘘をつき、リリアンを退治させてはどうだろうか」


アニトニオのあほな提案に、御者は切なげに首を横にふった。


「とても魅力的な提案でございますが、ドラゴンハンターへの報酬は高額すぎ、我が貧乏なエルモア領に賄えるものではありません」


「そうだよなあ。城代が中心になって必死に温泉を掘ろうとしているが、岩盤がなあ・・・・・」


アニトニオは深いため息をついた。


「あのなあ。聞いてくれよ。俺、リリアンに王立寄宿学校に入学したいって、脅されてんだ」


ぼそっと不機嫌そうに呟くアニトニオに、御者は思わず振り向き、驚きに目を丸くする。


「王立寄宿学校にでございますか!? あそこは入学試験があるのですぞ。失礼ながらリリアンさまの学力では、少し危ういのでは・・・・・・」


「少しどころか、完全にアウトだわ!! あんなガマガエル並みの知能しかない奴、裏口入学で大金積んでも入学できんわい!!あいつの学力じゃ、プリ・プレップ・スクールでも落第しかねん」


いかに裏口入学とはいえ、最低限の学力は必要だ。

リリアン姫の巨体では、裏口の門にさえつっかえてしまうということだ。

頭を抱えるアニトニオに御者が気の毒そうに質問する。


「・・・・・学力不足で入学できないなら、そもそも問題はないのでは・・・・・」


「い~や。駄目だね。あいつへの返事はイエスのみだ。あの無駄にプライドが高いリリアンが、入学試験なんかに落ちて、みんなの前で恥をかいてみろ。怒り狂っておまえら家来たち半分くらいを生き埋めにしかねないぞ。殉死だ」


・・・・・当の本人は死んでいないのに、家来を殉死させる。

完全に頭がふっとんでいるが、たしかにリリアン姫ならやりかねなかった。

御者と馬丁は地獄の未来を想像して震えあがった。


「・・・・・そ、それはなんとかしないと、いけませんなあ・・・・・」


「だろう? しかも、あいつが王立寄宿学校に入る理由はな!!聞いて驚け!!男漁りだ!!」


リリアン姫の言動に慣れている人間達は、はあっと一斉にため息をついただけだったが、馬車をひく馬は危うく足をもつれさせ転倒しそうになった。


「・・あいつ、あの容姿と性格で男にもてるつもりらしい。あの化物、色にばっかり目覚めやがって」


アニトニオは吐き捨て、着飾った実妹の姿を思い出し、気分が悪くなった。

吐きそうになるので、思い出した妹のふくれあがった腫れ姿を頭から追い出す。


「・・・・・お屋敷の鏡は、みな、綺麗に手入れしているはずなのですが」


「あいつは目玉そのものが邪悪で曇っているからムダだ。うー、嫌なものを思い出した。美人の一人でも見て目の保養をしたいよ・・・・・」


嘆くアニトニオに、身をかがめて後ろ窓から手をさし入れ、馬丁が一枚の紙を渡して来た。

そこには絶世の美少女の絵姿が刷られており、アニトニオは相好を崩しかけたが、横にリリアン姫と書かれているのに気づき、心底がっくりした顔になった。

それは例のリリアンを超超美化した似顔絵だったのだ。


「・・・・・なんだ、この詐欺作品は。化物屋敷のタライポーよりひどいぞ・・・・タライの中に棒がある。これが噂のタライポー・・・・・」


落胆のあまりアニトニオはわけのわからない呟きを漏らす始末。


「・・・・・いったい、なにがどうして、こんな出鱈目をつくったんだ」


それでも領主の息子の矜持から、かろうじて錯乱はまぬがれる。


「リリアンさまが、王子様達の花嫁探しにふるいたち、大量に刷ってエルモア領すべてに貼らせたのです。勿論家臣領民総出で・・・・・・城代も執事もかりだして」


そう聞いたアニトニオの顔こそ見物だった。世にも情けない顔で、


「で、では、領内の決裁書類は・・・・・・」


「もちろん山積みでございます。今宵は徹夜を御覚悟していただきます」


御者は力強くうなずいた。


「はあっ・・・・・・まじかよ・・・・・・」


あわれアニトニオは力が抜け、ずるずると背もたれを滑り落ちた。

まあ、執務室にこもりきりになれば、にっくきリリアンとは顔をあわせないで済むかも、と自分を慰めながら。男は諦めが肝心なのだ。最悪の中にも、よかったを見つけなきゃ・・・・・

「よかった探し」をはじめ、自分を慰める哀しい男、アニトニオ。


しかし、その不屈の闘志、ゴムのごとき柔軟な適応力をもつ彼をもってしても、まさか実家のエルモア城が、その執務室ごとドラゴンによって半壊している景色を目にすることになるなど、完全に想像の埒外だったのだ・・・・・・



お読みいただき、ありがとうございます!!

いや、こんな作品、ほんとは人目にさらしちゃいけないんですけどね。

誤字脱字あたりまえ!!

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