第五話 消火活動?いや温泉だ!
読んだり、ブクマったり、評価してくださる皆様、感謝ですー!
今回は制作に1時間25分ですねー。
ううーむ、ちっとも制作速度があがりませぬ。むしろ落ちているような。
リリアンの氷のブレスは、城全体を覆い尽くし、あっという間に火災を消し止める・・・・・はずだった。だが、現実は目の前の空気中の水分が凍結し、きらきらと輝いただけだった。
リリアンは驚愕した。パワーには自信がないが、ブレスの威力には若手随一の自負がある。
なのに、これはどうしたことか。
彼女は懸命にふーふーと息を吹き続けた。
そのたびに発生した氷の粒がふわふわと空中を舞う。
その威力範囲は周囲一メートルほど・・・・・・
幾度やっても同じことだった。
傍目には、美少女が顔をまっかにして、口を尖らし、ふーふーし続けるシュールな光景が展開されていた。
あわてて炎、雷、光、風と次々ためすが、結局すべてがマジックショーなみでしかない・・・・・
リリアンは頭を抱えた。
人間化するとドラゴンの能力は大きく制限されるのはわかっていた。
だが、どの能力がどれだけ目減りするかは、ガチャみたいなもので、実際に変身してみないと見当がつかないのだった。そして今回は間違いなく大はずれだった。
・・・・・じつのところ原因は、けたはずれの美少女に無理やり姿を調整したしわ寄せであるのだが、若いドラゴンのリリアンはそんなことには思いもよらないのだった。
「ああっ!!どうしよう!!頼みのブレスが使えないんじゃ・・・・!!私、腕力なんて皆無なのに」
リリアンは嘆いた。だが、ないものねだりをしても始まらない。
まったく非力な身だが、自分が原因のこの火災を放置しておけるはずがない。
比較的ましに残った能力でなんとかするしかない。
リリアンは大きく息を吸い込み、聴覚に意識を集中した。
視力はだいぶ落ちているが、聴力は無事だった。
地中奥深くを流れる水音をキャッチする。
ここは分厚い岩盤のうえに建った城だが、岩盤の下には水脈がある。
リリアンはふるいたった。
お城の周りの堀の水はただの溜まり水だ。消火する量などない。でも、この水脈なら・・・・・
リリアンは片膝をつくと、ぎりっと拳を握りしめて引いた。
単純な腕力はドラゴンの身体のときとなんら変わらないのを、あふれるエネルギーで感じ取る。
その頃になり、リリアンの側の中庭で気絶していた執事が目を覚ました。
彼は汚れた眼鏡を、くいくいっと拭い、ねぼけまなこで身を起こした。
「・・・・・おや、エルモア城の旗を巻きつけた可愛らしいお嬢さん、あなたはいったい何をされようとしているのですかな」
間延びした声で質問する。
ドラゴンのときのリリアンに吹っ飛ばされた衝撃で、まだ半分夢の中にいるのだった。
リリアンは振り向き、にっこり笑った。
「・・・・・今から岩盤をたたき割って、お城の火事を消すの・・・ですわ」
つい乱暴な言葉が出そうになるのをあわてて押さえ、お嬢様らしい(と、リリアンが思っている)言葉遣いに訂正する。
「ほう、火事ですか。それは、それは・・・・・・ええっ!!?」
執事はとびあがった。人は火事という言葉を聞くと正気に戻りやすいらしい。
痴漢や泥棒にあったとき、まず叫ぶべき、由緒正しい気つけの呪文だ。
そして慌ててあたりを見渡し、崩壊して火の粉をとばしているエルモア城に愕然とする。
同時に自分達がドラゴンに襲われ、死の直前にあったことを思い出した。
「ド、ドラゴン!!あのピンクのドラゴンは、どこへ・・・・・!?」
「と、飛び去りましたわ。空の彼方に・・・・・」
リリアンはそ知らぬ顔で、しかし、内心は汗だらだらで、遠い東の空を指差した。
執事は安堵し、腰が抜けてへたりこんだ。
命が助かったと知り、火事も忘れ、ほおおっと深い息を吐く。
それにしても、この美少女は誰だろう。
こんな凄い美人が近隣にいるなら、自分の耳に入らないはずがないのだが。
「・・・・・それはよかった・・・・ところで、貴女はどなたですかな」
リリアンはびくっとした。ぎくしゃくした動作で振り向き、がちがちの笑顔を浮かべる。
「い、いやですわね。この城のリリアン姫ですわ。おほほほほ・・・・・」
「はあっ!?」
驚愕に目を丸くする執事。
これがリリアン姫!?失礼にも程がある。もちろんこの眼前の美少女に、だ。
あの姫はカバだ。豚だ。地獄の最下層の生き物だ。
どこをどう作り直しても、こんな可愛らしい少女になるはずがない。
かわいそうに、きっと今のドラゴンの襲撃に巻き込まれて、強く頭をうったのだな。
さもなくば、冗談でもリリアン姫だなぞ名乗るはずがない。
執事は気の毒がって、ううむとうなった。
疑ってる。この人、めっちゃ、疑ってるよお・・・・視線を感じるよお・・・・・
執事の哀れみの視線を背中に受け、リリアンは戦々恐々だった。
その場を誤魔化そうと、消火活動に没頭しているふりをした。
「さ、さあ、火を消さなくっちゃ・・・・ですわ・・・・・えいっ!!」
ぽこっとか、ぽんっとかそんな打撃音がしそうな気合いとともに、リリアンは拳を地面にうちこんだ。
・・・・・どおおんっと大地が鳴動した。執事の足元から背中に衝撃が走り抜けた。
地面がたわみ、そして大きく縦にはねあがった。執事の身体が一メートルほど宙に飛び上がる。
城の周りの森から鳥たちが一斉にとびたった。
「な、ななな・・・・・!!」
呆然とする執事の目の前で、クレパスのようにリリアンの足元に亀裂が入っていく。
ぼうんっと音をたて、土砂が噴き上がった。
ざあっと泥水が降ってくる。たちあがった水柱の勢いは衰えず、やがて白濁した色にかわり、飛沫になって降り注いで、エルモア城の火事を鎮火した。
虹がかかり、湯気がもうもうとあたりを覆う。
岩盤の下にあったのはただの水脈ではなかった。
偶然にもリリアンは温泉を掘り当ててしまったのだ。
リリアンが拳で岩盤を破壊したなど理解及ばぬ執事には、それは神話級の精霊魔法にしか見えなかった。
「・・・・・こ、これは夢か・・・・温泉が湧いておる・・・・・あんなに我らが掘ってもでなかった温泉が・・・・・・」
あんぐりと口を開いて尻もちをついている執事の横に、失神からさめた城代がよたよたと近づいてきた。その目には涙が浮かんでいる。
日に日に先細っていくエルモア領のため、良質の温泉の水脈がここにあるという水脈師の言葉を頼りに、彼らは温泉を掘り当てようとしていた。だが、分厚い岩盤がその作業を阻んでいたのだった。
「これで我が領に湯治場としての未来が・・・・いったい誰が、このような奇跡を・・・・・」
「あ、あの方です。彼女がこう・・・・・不思議な力で」
執事はまっかになった拳に涙目でふーふー息を吹きかけているリリアンをさし示した。
・・・・・実際は力技で岩盤ぶち抜いただけである。
「・・・・不思議な力だと!?あ、あれは、誰だ。あんな美人、この領にはいないぞ」
「や、やはり城代もご存じないですか。しかし、どこかで、あの顔見た気が・・・・・」
聞こえないようこそこそ話し合う二人だったが、リリアンの地獄耳、いやさドラゴン耳には丸聞こえだった。二人のそばにつかつかとリリアンは歩み寄ると、懐に入れた例のリリアン姫の似顔絵を、びしっと目の前に突きつけた。
「わ、私、リリアン姫ですわ~。おほほほほ~」
城代と執事の目は驚きで飛び出しそうになった。
美化度1000パーセントのいんちき似顔絵と、眼前で汗をだらだら流し、決して目を合わせようとしない挙動不審の美少女は、まさに瓜二つだった。
二人は思った。
〝この娘、絶対にせのリリアン姫だあ・・・・・!!まさか、あのドラゴンが化けたんじゃ・・・・!?〟
早くも正解にたどりつき震えあがる二人。
そうとも知らず、証拠の似顔絵さえ見せればなんとかなると思いこみ、リリアンは精一杯のお嬢様スマイルを浮かべ続けるのだった。目を地面にさまよわせたまま・・・・・
そのさまは悪い事をしておどおどし、必死に誤魔化そうとする子供そのものだった。
お読みいただき、ありがとうございます!
高速制作の練習なんで、矛盾や誤字脱字はたくさんあります。
背びれを背広とか・・・・・(笑)
見逃していただけるとありがたいです。




