第四話 ドラゴンのリリアン、姫に化ける
こんなアホな作品に、ブクマや評価、そして読んでくださって、ありがとうございます。
今回、二時間かかっています。一度しゃべる杖のくだりを書いたのですが、話がややこしくなるので削除し、軌道修正・・・・・(泣)
大失敗です。無駄な労力を使いました。行き当たりばったりですので・・・・・・
〝う~ん、ごほごほ。なんか埃っぽいなあ・・・・・・〟
ドラゴンのリリアンは夢見心地のまま、むにゃむにゃと口を動かした。
エルモア城の中心にある天守に突っ込み、半壊させてしまった彼女は、ドラゴン呼びの香の酔いからさめきっていない。跳び箱を飛びそこなってお腹をつけてしまった子供のように、ぺたんと上半身を腹ばいにして天守にのせ、地面で二本の尾をくねらせている。
「この私が・・・・エルモア城の花、リリアン姫が、こんな目に遭うはずがない!!これは家来達のせいだ!!あいつら、私をはめやがった・・・・呪ってやる・・・・・!!」
なにかキーキーとリリアンの歯の間で声がする。リリアンは閉じかけた瞼を開けた。
きらびやかの布の端っこが目に映る。また悪戯者のカラスがちょっかいでも出してきたのだろうか。
うとうとしていた気持ち良さをさまたげられ、リリアンは苛立って歯軋りした。
どうせカラスは飛んで逃げるだろうし、少し驚かしといてやろうと思ったのだ。
ゴギゴギギッとすごい音が鳴った。
ぶひいッという、汚らしい叫び声が口腔内に響き、いやな味が口いっぱいに広がった。
リリアンは眠気もふっとび、あわてて異物をぺっと吐き出した。
人間でいえば、口の中にまちがって飛び込んできた虫を噛み潰してしまい、あわてて吐いたというところだ。
二度三度パウンドしたあと、異物はごろんごろん転がり、壊れた天守から落下しそうになった。
あわてて落下を食い止めたリリアンは、自分こそが奈落に突き落とされる絶望を味わうことになった。
その異物には手足がついていた。ぺしゃんこになっていたが、ドレスを着て、長い髪の毛があった。ドレスはぼろぼろになったとはいえ、上質なサテンだった。
〝・・・・・私・・・・人間、噛み殺しちゃった!?〟
リリアンは仰天し、全身の鱗を逆立てた。頭にかつが入り、急激にしゃんとした。
〝・・・・・エルモア城、リリアン姫って聞こえた・・・・それって、まさか・・・・!!〟
エルモア領じゅうでたたえられていた自分と同名の姫のことに思い当り、リドラゴンのリリアンは震えあがった。
噛み殺したのは、ドラゴンのリリアンの突進を受け全身を潰され、さらに偶然に口の中に飛び込み、牙にはさまれる不運にもめげず、なおゾンビのように悪態をついていたリリアン姫だった。
悪口とどなり声を常にサイレンのように撒き散らしていたリリアン姫は、やっと静かにすることを学び、ドラゴンのリリアンのかぎ爪につまみあげられたまま、ぶらぶらとおとなしく揺れていた。
悪の栄えたためしはなし。やはり神様はいらっしゃるのだった。
しぶとく生にしがみついたリリアン姫は、ドラゴンの少女の歯軋りによって、頸骨と背骨を粉砕された。さすがにもう蘇ることは出来ない。
いっぽうドラゴンのリリアンは、まっさおになって神様に祈っていた。
〝・・・・・神様、どうか見逃してください!!人間を噛み殺したなんて知れたら、私、二度と人間界に来れなくなっちゃう!!〟
ドラゴンの世界は、人間界への不干渉を義務づけられている。
とはいえ、リリアンがエルモア領を好き勝手に飛びまわっていたように、名目だけで、けっこうゆるゆるなザル法だ。ただし、人間を殺すなどの度をこえた振る舞いをすれば話はべつだ。
世界の境界を破壊する危険なドラゴンのレッテルを貼られ、二度と人間界には来られなくなる。
〝そんなの絶対、いや!!また、あの力自慢のバカ達しかいない、ドラゴンの国でずっと暮らすの!?歌も踊りも素敵な詩も、心はずむ音楽も絵もない世界に!?〟
それは人間の文化好きのリリアンにとって、死刑宣告に等しい罰だった。
なんとしても罪を隠し通したい。
とはいえ、これだけ城を破壊し、しかも人間の姫を殺してしまい、知らんぷりなど出来るはずがない。
途方に暮れるリリアンの目に、うめき声をあげ、身じろぎするこの城の家来達の姿がうつった。城のや塔の出っぱり、中庭の藁のうえなど、いたるところに彼らは散らばっている。幸い命に別条はなさそうだが、リリアンが姫を殺したことは逃れようがない事実だ。姫の死を知れば、彼らは騒ぎ立てるだろう。リリアンの姫殺しの罪が明らかになってしまう。万事休すだ。
〝・・・・・いえ、私にはまだ手があるわ。私がこのお姫さまに化けて、この場を誤魔化せばいい。そしてほとぼりがさめた頃、お城から失踪し、私はドラゴンに戻ればいいんだわ。うんっ、完璧!!〟
リリアンは思いつきに満足し、誇らしげに胸を張る。
完璧どころかぼろっぼろっの計画なのだが、長命種のドラゴンは些事は気にしないのだった。
〝・・・・・まあ、一度人間に化けると、二年間はもとに戻れないけど・・・・・パワーも制限されるけど、まっ、いっか。そのあいだ人間の生活と文化を楽しむことにしましょう〟
二年間ぐらいドラゴンにとってたいした時間ではない。家族も失踪届は出さないだろう。
そうと決まれば、善は急げとばかり、いそいそ人間になる準備に取り掛かったリリアンは、大変なことに気がついた。化けるべき姫の顔は、ピザソースをぶちまけた状態であり、ちっとも参考にならないのだった。
困り切ったリリアンの鼻先に、天の助けか、ひらひらと一枚のビラが舞い降りてきた。
それは本物のリリアン姫が書かせた、例の美形化度百倍の嘘八百の似顔絵だった。
〝やった!!この似顔絵の通りにリリアン姫に変身すればいいんだ!!神様、ありがとう!!ついでに街で子供達が姫をたたえていた歌の通りに、身体を調整しなきゃ・・・・・〟
踊りあがって喜び、リリアンは体内の竜気をぎゅうっと圧縮した。
ばちばちとリリアンの全身から電光が迸り、背広がまっさおに輝く。
〝・・・・・あっ、忘れてた。ごめんね。リリアン姫が二人いたら具合が悪いでしょう。悪く思わないでね〟
ドラゴンのリリアンは心の中で謝ると、大きく口を開け、リリアン姫をのみこみ、証拠隠滅した。
塔に引っかかっていたエルモア城の旗を爪でひっかける。
リリアンの巨体が光り輝き、小さく縮んでいく。立派なドラゴンの形の輝きが、やがて女性のたおやかな形に変わる。
落ちてきたエルモア城の旗がばさりと地面に広がった。
その旗がごそごそと動き、一糸まとわぬ少女が這いだしてきて、おぼつかない足どりで立ち上がった。
「・・・・・うまく変身出来たのかな。それにしても人間の身体って、ドラゴンとだいぶ勝手が違うのね。慣れるまで時間がかかりそう」
すばらしいブロンドの髪を揺らし、ため息をつく。
長い髪はビーナスの誕生のように彼女の裸身を隠していた。
緑のかわいらしい瞳が二度、三度眩しそうにまばたきする。
「それに、すぐ目がちかちかする。お日様をじっと見ることも出来ないなんて信じられない。しかも、いつも服を着なきゃいけないなんて・・・・・」
不満を言いながら足元の旗を掴みあげ、苦労して身体に巻きつけ、即席の服にする。
包帯のようにぴったり密着しているため、美しい肢体の形がくっきりとわかった。
白魚のような指先を目の前にかざし、目を細めてあたりの様子をうかがう。
まだ人間の目に慣れていないのだ。高性能のドラゴンの眼と比べると、濃霧の中に目隠しして突っ込んだぐらい不自由だ。
言うまでもなく、ドラゴンのリリアンが、リリアン姫に化けた姿だった。
しかも、あのにせのリリアン姫の美化似顔絵と、嘘だらけの讃美歌を、大真面目に再現したものだった。ようするに、本物のくそったれの姫とは似ても似つかぬ、とんでもない美少女がそこに立っていたのだった。
「ごめんね。リリアン姫。私、すばらしい貴女の評判を落とさないよう、精一杯あなたの真似をがんばるから」
小鳥のさえずりを思わす声で、そうお腹の中の本物のリリアン姫に誓うのだが、すでに第一歩から蹴つまづいていることにリリアンは気づかないのだった。
決意に燃えてぴーんと伸びた二本の尾も含めてだ。
そしてさらに悪いことに、彼女は困っている人達を見てほっておけないタイプだった。
塔や壁にかろうじて引っかかっていた家来達が、失神から少しづつ覚め、身じろぎすることで、ずれ落ちていこうとしている。
慌ててあたりを見渡すリリアンの目に、あちこち崩れ、めくれあがり、黒煙と炎をふいているエルモア城がとびこんできた。このままでは城が炎につつまれる。それが自分がドラゴンのパワーで巻き起こした惨劇と気づき、リリアンは蒼白になった。
「・・・・・たいへん!!私のせいだわ!!急いでなんとかしなきゃ。それに本物のリリアン姫なら、これぐらいの事態、なんなくおさめたはずよ」
童子達の唄っていた、リリアン姫は精霊魔法の達人というフレーズが耳によみがえる。
もちろん大嘘・・・・・リリアン姫は初歩魔法さえ使えない。
精霊魔法は使えないが、リリアンは、炎、雷、氷、風、光の五属性のブレスの持ち主だ。
二本の尾もちだから、これだけ多彩なプレスを使い分けられるのだった。
リリアンは大きく息を吸い込み、口笛を吹くように二本の指を唇にあてた。
可憐な唇から、すべてを凍らす氷のブレスが迸った。
読んでいただき感謝です!!
もっと早くうちこめるようになりたいですなー。




