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ピンクドラゴン、東へ飛ぶ    作者: らまくな
1/8

ピンクドラゴン、悪役令嬢をはね殺す。

みなさま、こんにちは。

この作品はなにも考えてません。

作者、頭でなく、指で話をこしらえてます。

伏線なんか一切ありません。感動話もないんです。

二時間内で一話あげる訓練で、この話をつくりました。

誤字脱字あってあたりまえ。

そんな開き直った作品ですが、よかったら見てやってください。



〝きゃあっ!!あぶない!!〟


心の中で悲鳴をあげたときには、もう遅かった。


速度が出過ぎていた。

ブレーキは間に合わなかった。

ここは陸ではない。空なのだ。地面の摩擦力は助けてくれない。

ぞっとする激突音。


ぼこんぼこんぼこんっと、何度も石畳に叩きつけられる肉の音。

ぬっとりした血の感触と温かみが肌に伝わる。

目の前がまっしろになった。


・・・・え~、異世界転生にありがちな、トラックにはねられる導入部ではありません。


それだったら、どんなによかったことかしら。


私は深いため息をついた。

やっちゃったよ・・・・・

人間、殺しちゃった・・・・・

しかも、これ、よりにもよって領主の姫だよね・・・・・


私はおそるおそる手を伸ばし、足元でぐったりしている綺麗なドレスの女の子を、そっと爪でつまみあげた。

人間の身体って私の爪くらいの大きさしかないので、物凄く気をつかう。

ひどく怖がりですぐパニックになるのに、むちゃくちゃ脆いんだもの。

暴れて落ちるのを助けても、迂闊につまんだら、ぽろっと首がもげちゃいそう。


でも、そんな心配は必要なかった。

女の子は人形みたいにおとなしかった。

手足はぷらぷら揺れるがまま、首が変な方向に曲がっている。

目の高さまで持ち上げておそるおそる顔をのぞきこんでみる。

思わず悲鳴をあげて、天守からずり落ちそうになった。


だって潰れたトマトみたいに顔が・・・・うん、もう説明はやめとこう。

これ、ダメじゃん!! 死んでるじゃん!!

絶叫した私はバランスを崩しかけた。

あぶない、あぶない。


ただでさえ、私のサイズでは天守の屋上には大きすぎる。

両脚をそろえ、尾を壁面に垂らしてバランスをとり、なんとか転倒をこらえている状態だ。


あ~、天守って知らない?

お城で一番高くて、大きな建物。


中には大広間があるんだ。

人間達はそこで、領主も家来も、みんな一緒に食事したりしてる。

頭のいい友達は、この国では、まだホールが城の生活形態の中心の段階で、だから領主階級と家来階級が一緒に食事をしてるって教えてくれた。私、半分寝ながら聞き流してたけどね。


私、今、わけあってそこの屋上に立っているんだ。

というか、半分身体突っ込んじゃってる。

瓦礫が埃みたいに私の鱗のあちこちにひっかかってる。


そして城の中庭のいたるところに転がっている、この城の騎士や家来たち。

横の居館の屋根に引っ掛かって、ずれ落ちそうな人間もいる。

だいじょうぶだよね。死んでないよね。

私の羽ばたきの風で気絶しているだけだよね?


そうそう、私の自己紹介が遅れたね。

私、リリアン。

背丈は二十メートル。だいたい、この天守の高さと同じくらいかな。

広げた翼長は四十メートルくらい。

ちょっと翼には自信あるんだ。

そして、私のいっとうの自慢は、二本の尻尾。

ツインテールのリリアンて言ったら、ドラゴン界隈じゃ、ちょっと有名なんだから。


あれ、まだ言ってなかったけ?

私、ドラゴン!!

鱗の色はピンク!!すてきでしょ?

まだ三百歳の子供だけど、でも、私はお姉さまがたみたいに、これからもっと綺麗になるんだ。

そして、たくさんたくさん、素敵な恋もしてみたい!!


でもね・・・・・私、普通のドラゴンと違うみたいなの。


雄ドラゴン達ってなにかにつけては、すぐ力自慢ばっかり。

雌ドラゴンも、うっとりとそれを眺めるの。


でもさ、それって、おかしくない?

恋って、もっとすてきな魔法みたいなものだと思うのよ!

破壊活動ばっかりの恋なんて、私はまっぴら。

そこにいくと、人間達の恋っていろいろ華やかでときめくよね。

夜通しかけた愛の語らい。踊りや、楽器や、いろんな仕草で、好きな人に愛を伝えるの。

憧れるなあ・・・・・・


でも、他のドラゴンに言わせれば、私こそが異端児らしい。


そんな妙な考えをもつ雌ドラゴンなんか、二千年生きた長老クラスでもないと知らないだろうってさ。

おちこむなあ。

私の思ってることって、そんな変なことなのかなあ・・・・・・


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ドラゴン達の求愛行為は力自慢だ。


愛を語る季節が巡ってくると、オスのドラゴンは意中のメスのドラゴンのもとに集い、いかに自分が強く雄々しいかを見せつけ、心を射止めることに必死になる。


具体的にいうと、雌の目の前で、山々を焼き尽くしてみたり、大木を尾でなぎ倒したり、大岩を爪で木端微塵にしたりする。


ドラゴンの絶対的な価値観は強さだからだ。

雌もより強い雄を選び、その仔を残そうとする、それがドラゴンの常識だ。


美しいピンク色の鱗に覆われたリリアンは、そういう意味では変わりものの雌ドラゴンだった。


彼女は、雄ドラゴン達の力自慢が大嫌いだった。


彼女は人間の求愛行動が気にいっていた。


人間は、愛の唄を歌い、悩みながら文をしたため、心をこめて贈物をし、ありとあらゆる手段で、意中の相手に好きになってもらおうと努力する。その努力が好ましかった。なにかを生み出そうとする行為がとても尊く思えた。


それに比べ、壊すことでしか愛を語れない雄ドラゴンのやりかたは、ちっとも彼女の胸にときめきをもたらさないのだった。


もっとも、リリアンの思惑をよそに、300歳(人間年齢で十五歳くらい)の年頃を迎えた彼女には、いろいろなオスのラブコールが殺到した。


まだ艶美さにはほど遠い若い個体だが、宝石のような鱗の輝きに深緑の瞳、若々しいしなやかな身体は、将来性を予感させるに十分だった。


そして、とても珍しい二本の形のいい尾は、オスたちの懊悩をかきたててやまなかった。

ふっくらとした身長ほどもある尾・・・・しかも二本というのは、ドラゴン基準でいえば、それだけで最大級のラブ的な破壊力をもつ代物だったのである。


そのうえ背中にたたまれた翼は、広げると身長の倍ほどの翼長になった。


これも雄ドラゴン達には垂涎の的だった。


すぐれた尾と翼の雌は、雄達を制す。


これがドラゴン界の恋愛の掟である。


ようするにリリアンは、多少容姿は幼くても、たいていのオスが番として周囲に見せつけることを望む、魅力にあふれたメスだったのである。人間基準でいえば、百人中百人が認める美少女だ。当然、雄ドラゴンたちは、他の雄を出し抜こうと必死になる。


特に熱心に通い詰めているのは、幼馴染のウングラとカウダである。

立派な爪と立派な尻尾がそれぞれの自慢の、将来を嘱望される若者達である。

その背丈と大きさはリリアンのふたまわりほどもある。


たまたま同時にリリアンに求愛行動に来て、二匹はばったりと顔をあわせた。

そして燃え上がるライバル心のおもむくままに、いつもにもまして破壊活動に熱中した。

森が焼け焦げ、雲がふきとび、湖が煮え、大地が鳴動した。

美しい声でうたう小鳥も、かわいらしいリスたちも、悲鳴をあげて逃げ去った。


本人達はライバルに負けまいと、肩をぶつけあいながら必死にリリアンへ雄度のアピールに励んだのだが、これは完全に逆効果だった。このあたりの丘はリリアンのお気に入りの花の群生地だったのだ。


荒らされた丘を見て、リリアンは激怒した。


「あんた達なんか、大嫌い!! 私、しばらく〝竜の国〟に帰らないから!!」


あわてて追随しようとするウングラとカウダを睨みつけ、


「もし追ってきたりしたら、一生絶交してやるんだから!!」


それだけで猛き若ドラゴン達は、しゅんと萎縮してすごすごと引き下がった。

いくら強さが絶対基準のドラゴンといえど、惚れた女に男が頭が上がらないところは、人間界とまったく同じなのだった。まして目に涙まで浮かべられたらなおさらだ。


リリアンはピンクの翼をはためかせると、青空向けて上昇した。

みるみるうちに点になり、東の空の彼方に消え去ってしまう。

見事な翼をもつリリアンは、飛行速度においては、成獣の雄さえ凌駕するのだ。


取り残されたウングラとカウダは、眩しそうにリリアンが消えたあたりを暫く眺めていたが、やがて連れだってとぼとぼ家路についた。こうなったリリアンは爆弾娘であり、怒りが解けるまではなにをいっても無駄なことを経験上よく理解しているのだった。

そして理解者同士、これから酒をのんで愚痴る予定なのである。


「……俺達、どこがいけなかったんだろ……」


「……わからん……せいいっぱい求婚活動したんだけど」


喧嘩はすれどもなんだかんだでこの2匹は仲が良いのだ。


しかし、そんな2匹も、まさかリリアンが気晴らしに飛んで行った先が人間界であり、しかもとんでもない事態に巻き込まれ、ずっと〝竜の国〟を留守にすることになるとは、予想もしていなかったのだった。



お読みいただきありがとうございました!

なるべく短くたたみます。

どなたもご覧にならないでしょうし、気楽に更新していきます。

めざせ!一日のPV100以上!

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