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悪夢を知る男と肩を落とす男

お久しぶりです

秋保はスマホのアドレス帳から猫型悪魔のメアドを呼び出した。

(悪魔に頼めば・・・・)

どうせ自分が消えちゃっても世の中は変わらない。

傷付けた男に復讐するのも古典だけれど悪くない・・よね?

『お願いが決まったわ』

悩んだ挙げ句その一文だけのメールを送った・・・・

一息着き、少しの後悔を覚えた途端、あの猫型悪魔が目の前にいた。

見た目は普通の子猫。

毛並みの綺麗な可愛い子猫。

ここは秋保の自室。

窓はあるが締まっておりどこから入っていたのか全く持って謎だった。

「ど・・・どこから?」

「なんや。そんな質問が願いなんか?」

猫型悪魔は相変わらず不思議な方言で小憎たらしい発言をした。

この猫が秋保に「魔法」をかけてくれたのだ。

自分とは思えないほどに綺麗に着飾って合コンに行って・・・・偽物だったかもしれないけれど憧れていた男子とデートまでしたのだ。

「ち・・・・違う・・・・私は・・・」

初対面の時同様、うまく口が動かなかった。

何とか、かいつまんで中野の事を説明した。

話しているウチに自分がどんなに軽率で軽薄だったかを知り少し胸が苦しくなった。

逆恨みして復讐?

でも傷は確かにつけられたので逆恨みとは言い切れないと思った。

「・・・ほぅ。んじゃねーちゃん。

 その何とかってオトコを殺したいんか?」

何と物騒なコトを!

思いも寄らない発言に秋保はぎょっとなって「怖いコト言わないで」と言い返した。

傷付けたいなんて思わない。

だって少しだけど一緒にいた時間は幸せだったもの。

でも・・・少しだけ復讐はしたい、

この感情をうまく説明出来ないのが非常にもどかしかった。

「彼の弱点は知ってるの・・・」

デートの時に世間話で知ったのだ。

あのクールな彼がまさか「アレ」が怖いなんて・・・。

「ほぅ・・・でもいいんか?

 その程度の呪いで対価を払って・・・・・

 願いが小さいからって分割払いは出来へんで?」

「・・・そうね・・・もう・・・いいわ」

秋保は年齢にそぐわない程、くすんだ微笑を浮かべて答えた。

「お願い・・・・」

「こっちは楽に契約が果たせるから願ったりかなったりやけどな」

猫は可愛い前足で顔を洗った。

その途端、ぽわ・・・と柔らかい明りが猫の周囲と秋保の周囲を取り囲み5秒ほどで消えた。

「・・・契約締結や。

 あとは願いが執行された後、対価をもらうで」

もう後には引けない。

「・・・ええ・・・」

悪魔との正式契約が終了しあとは執行を待つのみとなった。


中野 光太郎はいわゆるイケメンだ。

178センチの長身にすらりとしたモデル体型。

そしてアーティストだか芸人だか境界が曖昧な元大物政治家の天然孫にも似た端正で甘いルックスにより非常に人間関係とくに女性関係に恵まれていた。

女は寄ってくるし声を掛ければ大抵の女は付いてくる。

そして中野はそれら女性を口説き落とすためのマメさも持ち合わせていた。

そんな彼が何人かいる親しい女性のウチの1人である春香(一人暮らし・美人女子大生)の部屋のベッドで全裸のまま同じく全裸の部屋主と寝ていると変な夢を見た。

「のぅ。少年。

 ワシはな、お前さんには別に恨みはない」

よりによって声の主は中野の大嫌いなアレだった。

「ある人からのお願いでな。しばしそに身体、借りるぞよ」

アレは中野の腰ぐらいまでの高さがある。

(こんな大きなヤツ・・・・マジ勘弁)

イヤな後味を残し夢から覚めるとそこには予想した通りに肢体を惜しげもなくさらす春香が「ん〜・・」と寝こけていた。

「変な夢・・・・」

中野はまだ寝ている春香の寝顔にキスをし「何かのも」とベッドから起きあがった。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

中野の断末魔の悲鳴ってか叫びが当たりにとどろいたのはその5秒後だった。


まだ週始めである火曜日の居酒屋はさほど混んではなく男二人がマイペースで飲んでいても店員も嫌な顔は見せない程度だった。

3杯目になるスダチサワーを飲み干した純一は「えっと・・・にごり酒冷やってのください」と注文し京介に向き直った。

純一と同じ種族・・・・吸血鬼でありその一族の長である京介は純一と同じ大学の学生だ。

「で、彼女に何て言われたの?」

いつも淡々としている純一が荒れているなんてどうせ例の実希ちゃんに何か言われたのだろうなぁとアタリを付け京介は聞いた。

「まだ彼女じゃないんだよ・・・」

純一は肩を落とし心底寂しそうな声で言った。

「あっと・・えっと・・・三人称の『彼女』ね。

 実希ちゃんに何て言われたの?」

落ち込んでる男は扱いにくいな、なんてちょっと内心苦笑しながら京介は弁解した。

「私は餌じゃないって・・・・・はぁ

 俺・・・そんな扱いしたのかなぁ?」

純一はうなだれて大きく溜息をついた。

「そうだねぇ・・そんなコトしてなくても種族だけで疑われるからねぇ。

 えっとさ、実希さんに噛み付こうとしたことは?」

「今まで2回・・・・一回は知り合ったばかりの頃でもう一回はふざけて・・・・

 でも笑いながら何バカしてるの?って・・・

 あれを気にしてるのかなぁ・・・?}

見ているこっちも一緒に肩を落としたくなるほどに純一は凹んでいた。

そんな姿を不謹慎ながら京介は可愛いなと思った。

この落ち込みこそ純一にとって実希が「吸血だけの対象」じゃないことを意味している。京介にとってそれが嬉しかった。

「実希ちゃんにも伝わるよ」

京介はカチンともう一度、純一と乾杯し風味の薄い日本酒を口に運んだ。

早く誤解が解けるといいな、と小さな声で応援した。

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