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魔法なんてどこにもないのよ

秋保には密かに憧れている同級生2人いた。

恋愛対象として憧れている、というより「ああなりたいな」と思う女子が。

一人目は武藤 葵。

エロ格好良い系歌姫を彷彿とさせる大人っぽい少女でかなり明るくカラーリングした髪をボリューム一杯にアレンジしアイメイクがっつりのギャル系美少女だ。

秋保がでた雑誌よりももっと盛ったギャル系雑誌の読者モデルをしておりたまに他校の学生が彼女目当てでうろついているプチ有名人だ。

そして彼女と人気を二分する生徒。

朝日 実希。

小柄でグラマー、そして大きな瞳が印象的なベビーフェイスはグラビアアイドルのようでクラスはもとより他のクラスの男子たちからも人気があった。

性格も明るくて優しくて元気。

武藤 葵のようにプチ有名人ではないがその親しみやすいキャラクターでかなり男子生徒からも女子生徒からも人気がある。

取り巻きのようにギャル男まがいな男どもを侍らしている武藤 葵とは異なり朝日 実希は彼氏と思しき大学生風の男と一緒にいるところをよく目撃されている。

二人とも綺麗で可愛くて男の子にちやほやされて・・・同性の友達も多くて・・・毎日が楽しそうに見える。

悩みなんてなさそうに見える。

何で私は同じ女なのにああなれないの?

今なら綺麗になったから・・・あの二人みたいに学生生活を楽しんでいけるの?


昨日遊んだ西高の男子生徒たちとは取り敢えずID交換をし、トークのやりとりが続いていた。

「彼氏いるの?」

「今度二人で遊ぼうよ」

そんな下心がちらちら見えるコメントをもらっても何だか虚しく感じた。

でも何で?

何か盛り上がらない。

向こう3人とも結構格好良かったし地味だった頃だったら絶対に一緒にはいることがないであろう「上位」な人たち。

でも何故か・・・・いまいち楽しめない。

何で?

どうして私は満たされないの?


学校一のイケメンと言われる隣クラスの中野くんに突然声をかけられた。

「塚田さん。おはよ。

 今度、遊びに行かない?

 あのさ、ID教えてよ」

正直、嬉しかった。

西高の男子生徒たちに誘われた時とは段違いに嬉しかった。

今まで、廊下ですれ違った時などに「格好良いなぁ」とほのかに憧れていた。

同級生の中でもダントツにオトナっぽくて細身長身で盛りヘアが何だか少し夜の男っぽい。

同校他校問わずいつもとびきり可愛いコしか連れていないと有名でそんな彼に声を掛けられたというだけで秋保は舞い上がりすぐにスマホのIDを教えた。

その夜、中野からLINEが届き「今度遊びに行こうよ、土曜日空いてる?」と誘われた。

「オトナっぽい格好してきて」

そう中野くんに言われたからちょっと頑張ってお姉系のワンピにゆる巻きでお姉系メークにした。

まだ慣れないメークにいつも以上時間をかけてあの猫型悪魔に言われた通りに丁寧に色を乗せては何度も3面鏡であらゆる角度をチェックした。

チェーン店だけれど雰囲気の良いお店でお食事して・・・・お店を出る頃にはふらふらした。

気付いたらホテルの大きなベッドの上にいた。

「初めてだったんだね」

彼はこともなげに言ってそして普通にホテルの前で「じゃ、また学校で」と別れた。

次の月曜日、学校ですれ違った時、中野は別の女の子を連れていた。

一つ上の美人で評判の先輩。

何?私はなに?

これがよく言う「遊ばれた」ってやつなの?

私が欲しかった『綺麗の特権』ってこれなの?

泣きたいような諦めたいような心境での下校途中に朝日 実希とその彼氏と思われる男をみかけた。

(ふぅん。格好良いじゃない)

朝日よりも20センチほど身長の高い彼は優しそうな眼差しを朝日に向けていた。中野のようにチャラい印象はなく真面目そうな優男に見えた。朝日も学校で見かける時よりも数倍可愛い顔で手にしているシェークを彼に差し出し「うわっやっぱり甘い」と少し顔をしかめる彼氏を見て楽しそうに笑っていた。

手をつないでるでもくっついてるでもないのに甘い二人だけの空間だった。

何で私は出来ないの?

何で中野くんは他のヒトと一緒なの?

そうよ、魔法なんてどこにもないのよ。

やっぱりちょっと位外見が変わったところで本質的なところは・・・・元々の美人みたいな恵まれた日常は手に入らないのよ・・・・。

「もう・・・いっか・・・」

何だか色々疲れてしまった。

中野の事は自分でも驚くほどに諦めがついていた。

一緒にいた1コ上の綺麗な先輩を恨むこともない。

中野への未練もない。

でも泣き寝入りは何だか悔しい。

猫型悪魔・・・・・・

秋保の脳裏に猫型悪魔の言葉がよぎった。

(あと一回。まだ魔法はあるわ・・・)

最後にヒト泡くらい吹かせてもいいよね?

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