表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

Cherry Girl

雑誌でたらプチ有名人?

土曜日の夕方に繁華街をぶらぶら歩く。

そんな行為は以前に秋保ならば決してしなかった。

(欲目だとは思うけれど私、結構・・・イケてるはず)

電車でも街中でもすれ違いざまにちらりと投げてくる視線は決して不快なものではなく「可愛いじゃん」と好意的な好奇の視線だとわかった。

それは今まで自信なく下を向いて歩いてきた秋保にとってはかなり快感を伴うものだった。

生まれて初めてナンパもされた。

もちろん付いていく気は全くなく無視を決め込んだが顔が笑ってしまうのを抑えるのが難しかった。

ヨーヨー劇場前の広場。

ここが猫型悪魔の言っていた場所。

さっき300円ショップで買ったラインストーンでゴテゴテとデコレーションしたピンク色の鏡を取り出し髪の状態をチェックした

(よし、髪も崩れていない)

しっかりと入れたアイラインもにじんでないしこってりとつけたマスカラもしっかりキープされており、長いまつげをくるんと上向きに押し上げてくれている。

スカートたけもパンツが見えない程度のミニ丈ですらりと伸びた足はプレイボーイのマークが入ったハイソックスが非常に似合っている。

「ねぇ。君、高校生?」

(来た!!)


「ねぇ塚田さん。もしかして今月号のCherryGirlに出てなかった?」

朝、登校したら今まで挨拶すらしなかったクラスの中でも中心的存在のクラスメートに話しかけられた。

猫型悪魔と会ってから約半月。

あの日、家に帰った秋保を見た両親は最初は驚いたが「年頃の女の子がオシャレに興味持つのは普通のことよね」とおおらかに受け入れてくれた。

多少のメイクはしてスカート丈が短くはなったが髪の色を変えるでもなくピアスを開けたでもないのでグロスを落としてさえいれば両親にとっては許容範囲であったらしい。

しかし、秋保が変身を遂げた翌週から家庭以外の周囲少しずつ変わってきた。

まずクラスメートから話しかけられる回数が増えてきた。

お昼一緒しない?と隣のクラスの男子から誘われたが付き合ってもいない男子と二人でお昼なんて居心地悪いので丁重にお断りした。

そしたらそんな姿を周囲はクールビューティーと勝手にイメージしてくれた。

「え?・・・CherryGirl・・・?この前、新宿で声をかけてきたヒトが・・・

 そんな雑誌のヒトだったかな?」

こともなげに答えたが内心ではガッツポーズをとりたい気分だった。

クラスカースト1位の女子が朝イチで私に話しかけてくれた!と。

CherryGirl最新号は昨夜コンビニでしっかり購入し自分の写っているページをチェックした。

1ページに8人ほど写っている読者モデルのコーナーで秋保は一人でほぼページ1/4を独占し他の女の子たちとは違い合計4カットも写真が使われていた。

アップに横顔。全身写真が2枚。

特にアップの写真は非常によく撮れていて自分でも「このヒト綺麗」と思えるほど美人に見えた。

「すごいじゃん。超可愛かったよ。もう友達に自慢しちゃった。

 あのさ、こんど西高とアソぶんだけど一緒行かない?」

雑誌にでる有名なコとお友達というのはステータスなのだろうか?

クラスメートはすごい勢いでまくし立て、半ば強引に秋保のスマホのLINE IDを自分のスマホに登録し秋保の連絡先も入手した。

「じゃ、明後日ね。よろしくね」

今度、とは明後日のことなのか。

と秋保は苦笑しながらクラスメートの変わりぷりを観察した。

今までは・・・・地味だったころは挨拶すらしなかった。

もし、挨拶しても「あー、うん」とか返事も適当であっただろう。

しかし外見が華やかになっただけで向こうから寄ってくるし挨拶だって普通に出来るようになった。

そして雑誌に出た途端に友達扱いだ。

悪い気はしないがしっくりくるものではない。

そんな変化を楽しむ余裕が秋保にはまだあった。

可愛い女友達と遊んでイケメンと腕組んで歩いて・・・・叶えたいことはまだまだある。

これはまだ始まり。

今までぱっとしなかった分、良い目みたっていいじゃない?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ