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その方が楽しいじゃない?

このシーンはワタクシの作品、優しい時間の少し前のお話になります。

お時間ありましたら合わせて読んで下さいなっ

猫型悪魔は人間界の「猫」とやらを見てみようと観光気分で町中を歩いた。

辺りは新興住宅地で可愛らしい家々が小さな庭の中に箱庭よろしくちょこんと建っている。

そんな風景は悪魔的には珍しかった。

「おお、なんや。何か個性ってもんはないんやな」

誰に言うでもなくのんきにヒトリゴトを言っていた。

しかしそんな彼を頭上から見てる影が・・・・4つ。

彼はしならなかった。

人間界の鴉にとって子猫は格好の獲物となることを・・・。

「なんや。あんたら。

 こら、やめいっ」

グアーグアー。

今日の晩餐を見つけた鴉たちは、そんな言葉聞くわけもなく猫型悪魔に向かい鋭いくちばしを容赦無く向け、その爪でふわふわの毛を掴み取ろうとした。

「やめんか、鳥ども。

 見とれ・・・おんしゃぁ・・・・」

猫型悪魔が意識を集中し集まった4羽の鴉に悪魔の雷を落とそうとした瞬間、

「こらっ弱い者いじめしちゃだめでしょ!」

年頃13〜15歳ほどの少女が学校指定と思しき革鞄を振り回し鴉の群に勢いよく突進してきた。

「猫ちゃんは食べ物じゃありませんっ!!」

少女の強襲には流石の鴉たちも一斉に逃げ、猫型悪魔は雷を落とすのも忘れて呆然としてしまった。

「大丈夫?にゃんこちゃん」

肩で髪を切りそろえた少女は左頬にえくぼを作りながら優しい声で猫型悪魔をそっと抱きかかえた。

「おおきに。お嬢ちゃん見かけに寄らず強行派やな」

「え?何で子猫ちゃんなのにオジサンみたいな声なの!?」

「そこかい!気になるポイントは」

「えっと、関西弁なのも気になるよ?」

少女は猫型悪魔を物珍しげに光にかざし「誰か入ってるの?」と首を傾げて見せた。

「大ボケなねえちゃんやな。

 これは関西弁違うで。

 グロアニア弁やって・・・・・。

 わいは悪魔や。ありがと、助けてくれて」

「え?どうして猫が喋ってるの?」

やっとそこに疑問を持ったか。

この大ボケ娘が。

猫型悪魔は内心苦笑しながら自分を愛おしげに抱きかかえてくれる少女を見上げた。ふと人間を・・・この善良そうな少女を試してみたくなった。

「嬢ちゃん。

 助けてくれたお礼にコレ、受け取ってな」

どこからともなく星形のチャームを取りだし、それを器用にくるんくるんと回した。

「あ、これが取り扱い説明書ね。この星はな、魔法の星や。

 ほれ、その鞄にでも付けたら似合うやろ?

 これな、願いごとがなーんでも叶うんや。

 どうや?嬢ちゃんは何を願う?」

きょとんと少しタレ目気味な大きい瞳をぱちくりさせて少女はまじまじと猫を見つめ

「もしかして・・・・・雑貨屋さんなの?」

と大真面目に聞いてきた。

(なんや・・・・最近の若いモンはゲームやらマンガやらの影響で猫が話していても気にならんのかい・・・)

・・・こっそり思うのは、そゆ問題じゃなくお嬢ちゃんが相当な大ボケさんなんだと思うけれどね?

「雑貨屋ちゃう。悪魔や。あ・く・ま。

 嬢ちゃん。猫が喋るのも悪魔なのもおどろかんのかい?」

悪魔だと名乗っても少女は相変わらず猫型悪魔を優しく抱き上げたままだ。

「驚いてるよ〜。

 でもね、猫さん。オハナシ出来たら驚くよりも嬉しいんじゃないかな?

 言葉がなくても通じることって沢山あるかもしれないけれどね。

 やっぱりお話出来た方がもっと相互理解出来るんじゃないかしら」

ね?と少女はにっこりと笑った。

その笑顔をみつめながら猫はぼんやりと物思いに耽った。

「嬢ちゃんみたいはヒトが・・・・ならいいな・・・・」

「ん?」

「いいんや。なんでもないわ。

 あ、じゃあお礼のチャーム受け取ってな。

 使用方法は取り扱い説明書に書いてあるから。

 使用期限は今日から7日間。

 その間に使ってな。

 なーに願ってもいいんや。

 世界を望んでもええし不老不死を願ってもええ。

 憎いヤツがいたらそいつを取り殺すこともできるで」

「そうなんだぁ・・・・・すごいね」

「嬢ちゃんは何を願うんや?」

「え?私?えっと・・・うーんと・・・・うーん・・・・・」

何故か少女は悩みながらもみもみと猫型悪魔の頬を揉み始めた。

「うわわわっくすぐったいわ!このボケ娘がっ!やめてぇな」

「あっごめんね。猫ちゃん。

 そしてありがとね。魔法の星、大事に使わせてもらうね」

「そうや。じっくり考えて使ってな」

少女の腕からひょいっと抜け出した猫はそのまま忽然と煙になり姿を消してしまった。


猫・・・消えちゃった

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