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7.無課金、実践す



 無心で走る。


 崩れかけの路地。


 ひび割れた石畳の道を行く。


 しかし足音は全く立たない――


 なぜなら俺は『空』を駆けているッ!


「ははッ……こりゃ癖になるな!」


 思わずハイになって叫ぶ。



 ――『朽ち果てた都』深層Ⅰ――



 俺は廃墟の街を、一陣の風のように『飛んで』いた。


 ☆5付喪神【イダテンの羽草履】の力だ。特殊効果【浮遊】により、俺の霊力をわずかに消費することで、地面を蹴る感覚で空中を移動できる。


 ノリとしては、自分が思うがまま空中に道を創り出し、ローラーブレードやらスケートやらで滑る感じだろうか? それも、地面の凹凸の影響を全く受けない、凄まじく滑らかな道を。


「昔ローラーブレードやっててよかった!」


 プロじゃないのであまりアクロバティックな動きは無理だが、そこそこ滑れる。熟達すれば重力にとらわれず、上下逆さまに動いたりもできるはずだ。


 自由度が違うね! とにかく滅茶苦茶楽しい!


 最初は、ひ弱な陰陽師だから慎重に立ち回らなきゃ……と思っていたが、周囲の敵はあらかた殲滅したし、生命力のおかげで思ったより自分が頑丈になっていて、ついつい動き回ってしまう。


 それに、『万が一』の備えはあるからな――


「ヒューッ!」


 某宇宙海賊のような声を上げながら、地面や壁スレスレを飛んでいく。


 入り組んだ廃墟をジェットコースターのような速度でかっ飛ばすのだ。アドレナリンがドバドバ出てるのが自分でもわかる。大通りを突っ切り、スリルを求めて、わざと狭い路地に飛び込んだ。


 すると、前方に人影。


 人ではない、モンスターだ。まだ生き残りがいたか。


【足軽食人鬼(グール)】――オンボロな胴鎧と錆びた槍を装備している。灰色の肌に、口の端から突き出た牙。黄色く濁った瞳と視線がぶつかりあった。


「ギシャァアァッ!」


 ヨダレを撒き散らしながら吠え、戦闘態勢を取る足軽グール。高位の不死者(アンデッド)、【吸血鬼(ヴァンパイア)】なんかに比べると、品位の欠片もない獣のような魔物だ。


「召喚、【火の精】」


 俺は式神を喚び出す。


 ボオォゥッ、と霊力が渦を巻いて燃え上がり、火をぬいぐるみの形に押し固めたような、可愛らしい精霊が姿を現す。


 ☆1式神【火の精】――種族は【精霊】で、召喚されると己の存在の維持に霊力を消費し続けるので、『出番』が来るまでは待機状態にしておいた方がいい。


 レアリティは最低の☆1(コモン)だが、雑魚式神と侮るなかれ。最大強化された火の精(コイツ)は、陰陽師の手にかかればたちまち凶器と化す。


「行けッ!」


 俺が九字を切ると、陰陽師の職業ボーナスによりさらに強化された火の精が、火の粉を散らしながらミサイルのように突っ込んでいく。


 いや、ミサイルのように、ではないな。


 まさに鉄砲玉(ミサイル)そのものだ。


「ギシェエェッ!?」


 なんやこいつ!? とばかりに足軽グールが慌てて槍を突き出すが、火の精は踊るように、ひらりと穂先を回避。


 そのままグールの口に吸い込まれるようにして飛び込み――


 霊力を解放。


 ボギュンッ、と内側からめくれ上がるようにして、足軽グールが爆発四散した。


「うおっ汚え!」


 が、その勢いで肉片が俺の方にまで飛んでくる。


「【一足飛び】!」


 反射的に【イダテンの羽草履】の技能を発動。ぐんっと体が引っ張られる感覚。世界が後方へ流れ去っていく。


 一種の短距離ワープだ。俺は緑色の燐光と化して、十メートルほどの距離を文字通り『一足飛び』に超えた。


「あぶねー……召喚、【火の精】」


 先ほどの【火の精】はCD(クールダウン)――待機時間に入っているので、もう1枠のヤツを召喚。式神は撃破されたり送還したりすると、CDに入ってしばらく召喚できなくなるが、【火の精】のような低コスト式神はCDが5秒程度と短い。複数契約枠(スロット)にセットしておけば、間断なく喚び出せるのだ。


「はい、死体燃やしてねー」


 くるんっと空中で楽しそうに踊った【火の精】が、地面に残った肉の塊――多分グールの胴体――に突撃して、焼き尽くす。相変わらずひどい匂いだが慣れてしまった。あるいはもう鼻がもげたか。


「へっへっへ、お前の命は俺が有効活用してやるぜ……おっ、神魔結晶みっけ!」


 灰の山から虹色の欠片を拾い上げる。こいつぁ幸先がいいや!


「わーい、やったー! きゃっきゃっ」

「……その様子じゃ、どっちが死肉漁り(グール)かわからないわねぇ」


 神魔結晶を手に俺がはしゃいでいると、頭上から呆れたような声。どこか悩ましげな、ねっとりと脳髄に染み込んでくるような、艶のある声だ……


「別に肉を食っちゃいないだろ」


 振り仰げば、ゴスロリ衣装の美少女。宙に浮かぶ髑髏モチーフのステッキに腰掛けて、脚をぷらぷらさせている。


 ガーターベルトつきの太ももが眩しいぜ。仰げば尊しとはよく言ったもんだ……


 彼女は【魔王少女ガリルオ・ディディ】。


 同名アニメのコラボで、期間限定ガチャに実装された☆5(ウルトラレア)式神だ。


 魔界の王の一人娘ガリルオ・ディディが人間界へ遊びにきて、その強大な魔力に物言わせ気に食わない相手を弄んでいたら、いつの間にか人間界の王として君臨していたという災害系アニメ。


 一部界隈では『最初から悪堕ちしてる魔法少女』とも呼ばれ、根強い人気を博している。かくいう俺もファンの一人だ。


 まさか本物のディディちゃんを、この目で拝める日が来るとはなぁ……


「なぁに、だらしない顔しちゃって」


 俺がデヘデヘ鼻の下を伸ばしていると、ディディがすぅっと目を細めた。


「そんなに此方(こなた)()()が気になるのぉ?」


 スカートの裾をつまんで、クスクスと笑う。


 あーっ、お客様!


 いけません、困ります!


 そんなに大胆におみ足を晒されては!


 っつーか魔法少女に網タイツとか穿かせちゃアカンやろぉ!!


 脚フェチというほどではないが三度の飯より脚が好きな俺は、思わずディディの脚線美に見惚れてしまう。


「ふふっ……」


 ぺろっと舌なめずりしたディディが、腰掛けていた髑髏のステッキを指先でツンとつついた。


 途端、糸が切れたかのように、ステッキが重力に引かれて落ちる。


 ふわりと地上に舞い降りるディディ。


 白魚のような指でステッキを弄びながら、かつん、かつんとヒールを鳴らして、ゆっくりと歩み寄ってくる。まるで獲物を捉えた蛇のように……


「どうしたの、ぼうや。顔が赤いわよぉ?」


 ヒールを履いているせいもあるが、ディディは背が高い。ゆらゆらとステッキを揺らしながら、青い瞳が愉しげに俺を見下ろす。


「べ、別に赤くなってないもん……」


 そう言って俺は顔を背けようとしたが、不意に、ディディのステッキが俺の喉元に突きつけられた。


 そのまま、優しく、クイッと顔を上に向かせられる。ふぇぇ、こわいよぅ……


「嘘はいけないわぁ、ぼうや」

「ふぇぇ……」

「さっきから、此方(こなた)にいやらしい目を向けていたでしょう……?」


 ぬらりと顔を寄せたディディが、ささやく。


「いけない子ねぇ……」


 頭の奥がジンと痺れるような、蠱惑的な香り。


 耳から毒を注ぎ込まれてるみたいだ……


 甘く、優しく、蛇のように絡みついて、逃げられない。


 やべ、ガチで心拍数上がってきた。


「うふふ。かわいいわね、こんなに照れちゃって……」

「いや、その……」

「ぼうや。あなたはどうしたいの?」


 白い指が俺の頬をくすぐり、耳元にふぅっと息を吹きかけられる。ふひょぉ。


「困ったわぁ。ぼうやが、あんまりかわいいから……此方までヘンな気持ちになってきちゃった……」


 含み笑いをもらしながら、ディディの肢体が俺を絡め取る。


 あっ、近っ。


 胸、でかっ。


 圧倒的なボリューム感……!


 全身凶器か……ッ! こいつ……ッッ!!


「ぼうやの気持ちも聞かせて……ねぇ、いいでしょう?」


 間近に、潤んだ青い瞳がこちらを覗き込み――なんて深い色なんだ――愉悦とも恐怖とも知れぬ、ゾクゾクとした感覚が背筋を這い上がった。


「いい、わよね?」


 つややかな唇が――迫る。


 ヤバい。


 食われる……っ!





「ふンぬァ――ッッ!」





 突如、隣家の石壁が爆散した。


 ズガァンッという轟音とともに破片を撒き散らし、黒い影が飛び出してくる。


 バッサァと広がる漆黒の翼。


 言うまでもない。


 ジュリアだ。


 壁をぶち抜いても勢いは衰えず、俺たちの真横の塀に大剣を叩きつける。


 めり込む、白刃。


 ズンッと地面が揺れ、ぱらぱらと石の欠片が落ちてきた。


「……主様、みてみてー」


 あどけなく笑いながら、ジュリアがズロッと大剣を引き抜き、掲げる。


 刀身にはグロい肉塊――もとい、ゾンビの頭が三つ、並んで貫かれていた。


 ちょうど側頭部をブチ抜き、串刺しにされた形。


「だ○ご3兄弟!」

「ええ……」


 笑顔でなにいってんだこいつ……


 俺にどんなリアクション求めてんだよ……


「腐れ団子ね……ふふっ」


 琴線に触れるものがあったのか、ディディが俺にひっついたままクスクス笑う。


 マジかよ。ギャグセンス魔王か。


「で、だん○3兄弟はさておき、お二人とも! こんなところでイチャイチャとは感心できません!」


 ブンッ、と大剣を振るってゾンビ頭を飛ばしながら、ジュリアが真面目くさって説教し始める。


「わたしをのけものにしておいて、うらやまけしから……ゲフンゲフン。油断大敵です、あらかた掃討し終わったとはいえ、いつどこから何が出てくるか、わかんないんですよ!」

「お前が言うか」

「だって、仕方ないじゃない。ぼうやがあんまりにも可愛いんですもの」

「それはわかる」


 ディディの言葉に、うんうんと頷くジュリア。


「ですが、だからこそ節操を保つべきです。イチャイチャするなら、もっと安全な場所でねっとりしっぽりしましょう」

「安全な場所ぉ……?」

「はい、例えばボス部屋とか。ボス撃破後なら絶対的な安全地帯です」


 首を傾げるディディに、ピシッとジュリアが指を立てて見せる。確かに、中ボス・ラスボス問わず、ボス部屋には外のモンスターも入ってこないし、ボス撃破後はモンスターが湧き出てくることもない。


「ボス部屋ならわたしも警戒する必要がないのでイチャイチャに仲間入りでき……ゲフンゲフン」

「なるほど……なら、話は早いわねぇ」


 紅い瞳を爛々と輝かせるジュリアと、舌なめずりするディディが俺を見る。


「主様? さっきあっちの方に『門』を見かけました、ボス部屋は近いですよ?」

「ぼうや、もうちょっと頑張りましょうねぇ」


 ガシッと両脇を掴まれ、俺は二人に引きずられていく。


「ふえぇ……」


 怖いお姉ちゃんたちに食べられちゃうよぅ……


 まあ、ジュリアとディディだけでも、ここの中ボス程度なら余裕だろう。


 問題はその後、俺がどうなるか、だ……!!




 そうして俺はダンジョンの次なる階層への入口。




 すなわち、ボス部屋へと突入した。



カルマ・ドーンは、雰囲気としてはゼ○ダの伝説 ブ○ス オブ ザ ワ○ルドをイメージしてます。


あんなノリのアクションで、生命力がハート、霊力ががんばりって感じです。

走ったり壁を登ったりするのに霊力使うんか? という話ですが、使います。

人間としてありえねえ速度でダッシュしたり、人間としてありえねえ絶壁を登るときに消費します。


なおパワータイプの職業はベースの腕力が違うので、術者系より霊力の消費を抑えつつ、より大きく&速く動けます。術者系の方が霊力は多くても、トータルで見ると身体能力はやっぱりパワー系職業の方が上です。


あとご飯や、武器や防具のシステムもゼル○に似た感じです。一部の特殊な装備を除いて、依り代の武器も使いすぎたら壊れます。


ぴぅぃぴぅぃって口笛吹いたらジュリアが飛んできます。

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