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10.無課金、さらに進撃す



 ボス倒したら恩寵の検証をする、と言ったな。


「あれは嘘だ!!」


「イ――ッ!」とか鳴きながら襲いかかってきた【下忍ゾンビー】を【火の精】で爆殺し、俺は叫んだ。



 ――『朽ち果てた都』深層Ⅲ――



 なんだかんだ言って、俺たちはさらにダンジョン攻略を続けていた。


「ふっふっふ……このジュリア、わかっておりましたとも。主様が『あと1個で石が40個になる』という状況でじっとしていられるはずがない、と……!」


 バシーンバシーンと剣の腹でゾンビの頭を叩き潰しながら、ジュリアがしたり顔で言う。


「あたぼうよ!」


 耐えられるはずないだろ! そんなの!


 這ってでも石取りに行くわ!!!


「ぼうやったら、せっかちさんねぇ」


 クスクスと笑うディディが、髑髏のステッキから無造作に魔力弾(通常攻撃)を放ち、周囲を飛び回る【辻刺し蝙蝠(スティングバット)】を叩き落とす。


辻刺し蝙蝠(スティングバット)】は、尻尾に鋭い針を持つ吸血コウモリだ。火力は大したことがないが集団で襲い掛かってきて、獲物を針で刺しまくり出血させまくり、寄ってたかって血をすするという割とエグい戦術を取る。


 さっき油断して肩を刺されたんだがクッソ痛かった。先が鋭い五寸釘みたいなのをドスッとやられたんだよな。


 でも即座に【血の祝福(リスカ)】が飛んできて、ジュリアが【罵倒】しディディが魔力弾で叩き落とし、下手人バットは般若みたいな顔をした二人に徹底的に粉砕された。


 もう、死体蹴りとかいう次元じゃなかった。原型を留めなくなるまで、執拗かつ物理的なすり潰し。主人を害した敵に対する怒りっぷりが尋常じゃなく、ちょっと引くレベルだった。


 味方としては、まあ頼もしい限りなんだが……気をつけなければならないな、と思ったのは俺の仮想敵。


 すなわち、式神を使役する中級貴族のクソ野郎だ。


 アイツは、少なくとも2柱は☆5(ウルトラレア)の神を従えていたはずだ。心して戦う必要がある――


「……いかがなさいましたか? 主様」


 無意識のうちにジュリアとディディを眺めていると、ジュリアが首を傾げた。


「いや、クソ貴族と戦うときのことを考えてた」

「ああ! そのときは、わたしも是非!」

此方(こなた)もねぇ」

「二人とも、頼りにしてるぜ」


 ジュリアとディディには引き続き援護を頼むつもりだ。


 問題は、どんな構成(ビルド)であのクソ貴族に挑むか――ディディの【サドンデスカノン】が想像以上の火力だったので、居場所を特定して接近できれば暗殺は難しくないだろう。


 だが、復讐はもちろん最優先だが、あいつが持ってる石も奪いたい。


 そのためには、捕まえて無力化して『お願い』しなきゃいけないわけだ、あの手この手でなァ……。


一対一(タイマン)なら、どうとでもなるんだが」


 部下の下級貴族、騎士や侍たちが鬱陶しい。少なくとも十人はいるだろう。それに加えて市民階級の雑兵と、それぞれの式神と。


 ディディの【サドンデスカノン】は切り札だ。連発はできないし、射程もそんなに長くない。そして、いかに装備を整えても数の暴力には抗し難い。


 雑魚どもを各個撃破してから最後にあのクソ野郎、って流れが理想だな。


 ――と、ここまで考えてから、俺は自分が真剣かつ極めて冷静に、人を殺す算段を立てていることに気づいた。


「…………」


 ……けど、別に何とも思わねえ……『僕』の影響もあるが単純に貴族どもがクソすぎて罪悪感が欠片も湧かねえ……


 向こうがこっちのことを人と思ってないんだから、こっちが向こうを人扱いする必要もないわな。


「よっしゃ、狩るぞ~!」

「ガンガン討伐しましょーっ!」

「うふふ。ぼうやの仇はみぃんな、此方が滅ぼしてあげる……」


 笑顔の絶えない明るい職場です!


 そんなノリで深層Ⅲを蹂躙した俺たちは、早くもボス部屋を発見した。ダンジョン内は入るたびにランダム生成、ボス部屋の場所も毎度変わるから、探すのがなかなか手間だ。


「さぁて次は何が出るか」

「【デュラハン】以外がいいですね~!」

「倒しやすいから、この際【デュラハン】でもいいけどな」


 どうせ石目的だし。


 基本的にボスもランダムだ。『朽ち果てた都』に出現するモンスターの中から選ばれ、ボス相応にステータスが強化される。なのでごく低確率で雑魚モンスターが出てくることもあるわけだが――


「……げぇっお前か!」


 思わず奇声を発する俺。


 虹色の『門』を抜け、円形闘技場の真ん中で俺たちを待ち受けていたのは。


【スティングバット】だった。


 ボスなので単体だ。薄い膜の張った翼をパタパタさせている。


 奴が視界に入った瞬間、俺は即座にメニューを開いて【火の精】を契約枠(スロット)から外し、無理やり2枠をこじ開けた。間に合うか――?


「あっ、【スティングバ――」


 続いて入ってきたジュリアが言葉を終えるより先に、ボスが動く。


 ドバンッ、という炸裂音とともに、その姿がかき消えた。



 ――いや違う、上だ。



 急激な加速に伴う水蒸気爆発の尾を引き、スティングバットが闘技場の天井ギリギリまで舞い上がる。


 そしてゆるやかに弧を描き、生きた砲弾と化してこちらに突っ込んできた。


 速い!!


「来い、【雷の精】!」


 それを迎え撃ったのは、俺が喚び出した☆1式神【雷の精】だ。【火の精】と入れ替えて2枠で採用。


 一条の稲妻と化した雷の精が、スティングバットを打ち据える。バチバチィッ、と煙を吹き上げ麻痺したスティングバットが、突進の勢いのまま石畳に激突した。


「ピギャァァッ!」


 さすがボスだけあって、一秒とせずに麻痺から復帰。バタバタと暴れながらも、高生命力の恩恵か、大した傷もなく再び飛び上がろうとする。


「ジュリアぁ!」

「【このカトンボがッ!】」


 間髪入れずにジュリアが【罵倒】で動きを止め、大剣を振り下ろす。俺は印を切りながら【紅鴉】を送還、CDの残り時間を気にしながら駆け寄り、聖属性を付与した【雷の精】至近距離から放つ。


「行けェッ!」

「ふンぬッ!」

「食らェッ!」

「ふンぬッ!」


 石畳の上で暴れるスティングバットを、俺とジュリアが交互に、餅つきのように息を合わせて攻撃し続ける。紅鴉のCDが終わり次第、空いた枠にさらなる【雷の精】を詰め込み、回転率を上げてひたすら稲妻をぶっ放す。


「ディディ! 【おねだり】をいつでも打てるようにッ! 万が一コイツが逃げたらすぐに落とせッ! 絶対に仲間をッ! 呼ばせるなッ!」

「はぁい」


 ロクに指示を飛ばす余裕もない。ディディはステッキをくるくると回しながら、しかし一切油断のない目でスティングバットを注視している。


 そのまま殴り続けること数分、スティングバットは完全に動きを停止。その傷が再生せず、クリアボーナスの神魔石がボトッと体から出てきたのを見届けて、俺はようやく安堵のため息をついた。


「はぁ~っ……あっぶね~」

「何とかなりましたね、主様」


 俺の隣で、ジュリアも額の汗を拭っている。


 スティングバットはクソ雑魚だが、ボスとして出てくるとなると話が違う。


 当然だがステータスが『ボス相応』に強化されるのだ。機動力が桁違いで回避に優れ、自動追尾(ホーミング)系の攻撃以外ほとんど当たらなくなる。高生命力で非常に打たれ強く、攻撃力もえげつない。


 無論、【サドンデスカノン】目当ての自傷なんざ自殺行為だ。


 そして何よりもヤバイのが【仲間を呼ぶ】という技能。普通のスティングバットなら雑魚が1体増えるだけだが、ボスが使うと、ボスと『同レベル』のヤツがもう1体出現する。


 そう、ボスとして超強化された個体が、だ。


 何かの間違いでさらに仲間を呼ばれたら大惨事。全ボスの中でも五指に入る機動力の小型モンスターが、複数で襲いかかってくる。


 ちょっと対応しきれない。万が一が重なると普通に殺られてしまう。


「ゲームなら事故死で笑って済ませられるけど、現実だとなぁ」


 神魔石を割ってコンティニューもできないし。……できないよな?


「ただ、現実だと動きも止めやすいですよね」


 つんつんと大剣の先でスティングバットの死体――というか肉片をつっつきながらジュリアが言った。


「そうだな。ダウン無敵もないし、状態異常も効きやすいみたいだ。逆に自分も気をつけなきゃだが」


 ゲームだと、転んだり吹っ飛ばされたりしたら、起き上がる一瞬は無敵時間になって攻撃を食らわない。スティングバットもその隙に仲間を呼ぶことがあった。


 ただ、『この世界』には無敵時間は実装されていないらしい。ゲームに比べると圧倒的な先手必勝ゲー。


「……ま、何はともあれ」


 俺はスティングバットの死体の傍ら、虹色の石を拾い上げる。


「神魔石、取ったどオォォォァァッッ!」

「おめでとうございます、主様!」

「ぼうや、頑張ったわねぇ」


 パチパチと拍手するジュリア、ディディがよしよしと俺の頭を撫でてくれる。


 ついでに、メニューを開いて確認。


「レベルも上がったどオォォォァァッッ!」


 陰陽師Lv51の表示がそこに!!


「わー! やりましたね! 主様すてき!」

「ぼうや、本当に良かったわねぇ」

「これで……ようやくッ! ガチャを回せるッッ!」


 間違いない。これで神魔石が40個だ!


 そしてレベルアップボーナスガチャも届いた! プレゼントボックスにチケットが届いてる! 送り主は……書いてねえ。不気味だ。まあいいか!


「よっし……」


 ここはボス討伐後のボス部屋。


 完全な安全地帯だ。


「回すしかねえ……」


 深呼吸で精神を統一。


 俺はおもむろに、クラウチングスタートの姿勢を取った。




 突然だが。




 俺にはジンクスがある――。




「行くぞオラァッ!」


 疾走ッ!


 全力で疾走ッッ!!


『メニュー』→『ガチャ』→『ガチャを回す』ッッ!!


 流れるように選択ッッ!


 酷似!


 ゲームと酷似!


 違和感が皆無!!


「うおおッオオオッ出ろおおおォォッ!」


 神魔石、投入!!


 狙うはもちろん、☆5(ウルトラレア)!!


 そして――俺は眼前のメニュー画面。



「【グルメ妖怪のごちそう絨毯】来いやああぁぁッッ!!」



『ガチャを回す』ボタンに拳を叩きつけた。




コメント・ご感想・ご評価いただきありがとうございます! 嬉しいです!

また、ナタラージャ様よりステキなレビューをいただきました。ありがたや……!

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