4 駆け落ち相手選び
「ロマンヌ! レアとかけおちしてくだしゃいっ!」
どたどたばたとなかなかにすごい音をさせて走って来たかと思ったらドヤ顔&ド直球でせまられて、ロマンヌはたじたじ。
「えっ……? レア。なにかあったの? 家を出たいとか?」
「しょの通りでしゅ~」
「それじゃわざわざかけおちにしなくても、家出でいいんじゃ…」
「わかってましぇんわねー。『家出』は子どものするモノでしゅが、『かけおち』は大人のするモンでしゅ~」
「確かに……そうだけど……」
うーんとロマンヌは考え込んでしまいました。
「でもかけおちって確か、男の人とするものなんじゃ……」
「え!!! そーでしゅの!?(―_―)!!」
「でもうん。いいよ」
ロマンヌはにっこり笑って快諾しました。
こう付け加えて。
「5時までなら」
…話になんないでしゅ<(`^´)>。
ぶーたれながらレアは先頃ロマンヌと会話した2階廊下を通り、階段を下りてレストラン“スピルト”のダイニングにやってきました。
ちょうど問題のパパは食品の仕入れかなにかでお留守のようです。
レアはちょこんとあるテーブルのある椅子に腰掛けました。
「うーん、男の人、かぁ……。アルベールおじしゃんはイマイチ頼りないし、エルネしゅトしぇんしぇーは、ロマンヌが家を出たくなったときにとっとくべきだし」
そんなことをひとりきりで呟いていると、
「おいおいレア、男を女の子が使うための馬かなんかと勘違いしてないか?」
苦笑気味にそう声をかけてきた人がいました。
やたら高いその身長。さわやかなその声と言えば。
「あれれ、ジョエル兄しゃん」
パパのお友達のその人がレアの背もたれに片手をかけてこっちを見ています。
「違うんでしゅか?」
「え、まさかレア。ほんっとうに思ってたのかい?男を女性の馬だって」
ちなみにその会話を調理台で聞いていたパエリエがあら違うのかしらとこのとき首を傾げたのは、ここだけのお話です。
コホン、とジョエルは咳払いすると、
「いいかいレア。男ってのは確かに女の人の馬的存在でもある。けどな、それだけじゃねぇ。いざってときは表に立って女性を助ける! ナイトなんだぜっ」
そして調子づいたジョエルは、レアの座っている椅子を前に膝まづくと、
「さぁレア姫。この騎士ジョエルとともに、永遠の旅へと出ようではないか」
「……え? ほんとうにレアを旅に連れてってくれりゅでしゅかッ!」
てっきりあっさりフラれるものだと思っていたジョエルは、乗り気なレアを見て戸惑ってしまいます。
「……そ、そりゃなぁ、世界一周はムリだけどぉ……んとねぇ」
急に歯切れが悪くなった騎士を急かすレア。
「はっきりしゅるでしゅよ~」
「そうだな。んじゃ、ラロシェル一周くらいなら」
「決まりでしゅっ」
こうしてレアは半ば強引に(?)かけおちの相手を手に入れたのでした。
駆け落ちの相手は彼でした!
でっかい騎士とちいさい姫のプチ逃避行の始まり~。